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整形外科 外科 リハビリテーション科

リウマチ性多発筋痛症 Polymyalgia rheumatica PMR 

 原因はよく分かっていませんが、頚部、肩や腰周辺に強い痛みが出る病気です。誘因不明でかなり激しい痛みを訴える場合はこの病気を想定します。リウマチ名前が付いていますが関節リウマチとは異なる病気で膠原病のひとつとされています。ステロイドに良く反応します。合併症として側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)を起こし時に失明することがありますので治療を早期に行うようにします。高齢発症の関節リウマチとの鑑別は時として困難を極めます。知っていないと診断できない病気として有名です。

 50歳以上で起こり、60歳以下は比較的まれで、70歳代がピークです。疼痛の範囲:肩関節周囲(89.4%)、股関節/大腿(74.0%)、頚部(45%)

 リウマチ反応は陰性で、赤沈は亢進します。またCRPが高値を示します。関節は腫れることは少なく、むしろ筋肉痛が中心です。骨格筋の症状はでますが、CK(筋肉にある酵素)は正常です。


 診断基準(リウマチ性多発筋痛症研究会 1985)
1.赤沈値の亢進(40mm/h以上)
2.両側大腿部筋痛
3.食欲減退、体重減少
4.発熱(37度以上)
5.全身倦怠感
6.朝のこわばり
7.両側上腕部痛

1)60歳以上を条件とする
2)上記7項目中3項目以上を満たすものを確実なリウマチ性筋痛症と診断する。


<EULAR/ACR リウマチ性多発筋痛症 暫定的診断(分類)基準案(2012年)>

必要3条件:50歳以上、両側の肩の痛み、CRPまたは赤沈上昇。
さらに下記の点数表で、超音波を用いない場合(6点中)4点以上、超音波を用いる場合(8点中)5点以上でPMRと診断(分類)します。

項目

点数
(超音波なし)

点数
(超音波あり)

朝のこわばり(45分超)

2

2

臀部痛または動きの制限

1

1

リウマトイド因子陰性、抗CCP抗体陰性

2

2

他の関節に症状がない

1

1

1つ以上の肩関節に、三角筋下滑液包炎 もしくは 二頭筋の腱滑膜炎 もしくは 肩甲上腕関節の滑膜炎(後部または腋窩部)
かつ
1つ以上の股関節に 滑膜炎 もしくは 転子部滑液包炎

なし

1

両肩関節に、三角筋下滑液包炎 もしくは 二頭筋の腱滑膜炎 もしくは 肩甲上腕関節の滑膜炎

なし

1

(超音波なし:感度68%、特異度78%。 超音波あり:感度66%、特異度81%)

 暫定基準なので、これだけで診断が出来るわけではありません。

 
*癌によりリウマチ性多発筋痛症様の症状が出ることがあります。
 *感染性心内膜炎などの感染症でも同様の症状を起こすことがあります。
 *50歳以下はほぼ否定できる
 *肩だけ、頚だけ、腰だけの疼痛は、PMR以外の疾患を疑う。

 治療は比較的少量のステロイド内服(プレドニゾロン換算で12.5-25mg/日で開始)で改善します。初回投与後、12時間ほどで症状は劇的によくなることがよくあります。ステロイドの投与期間は、炎症反応や臨床症状をみながら、漸減していきます。初期の減量におけるとりあえずの目安は、「4-8週間以内にプレドニゾロン換算で10mg/日」。10mg以下になると再燃しやすいので、ゆっくりと減量します。一か月に1mgを目安に中止できるまで減量します。

 開始時、初期投与として7.5mg以下、30mg以上は避けます。糖尿病、骨粗鬆症、緑内障がある場合、感染症のリスクがある場合は、少ない量から開始。低容量での開始は再燃しやすく、高容量での開始は感染症などの合併症のリスクが高くなります。 

 *阪大病院免疫アレルギー科では、『PMRにおけるステロイドの投与・減量法の例として、プレドニン(PSL)15mg(2〜4週)、12.5mg(2〜3週)、10mg(4〜6週)、以後1mgずつ4週ごとに減量し安定していれば中止を目指す』としています。

1-2週間ごとに1-2mgずつ減らします。維持量として5mg前後を服用します。


 ステロイドを投与する前に、感染症や癌の有無を調べておきます。側頭動脈炎は失明につながりますので注意が必要です。


症例1 はっきりした誘因がなく、頚の付け根から肩にかけて激痛が生じて動かすのも難儀な状態となり来院。朝のこわばりはなく、血液検査で赤沈の亢進とCRPの上昇を認めました。血清リウマチ反応は陰性でした。ステロイドの内服で症状は軽快しました。

 痛みが激烈で辛抱できないほどだったとのこと。比較的典型例だと考えます。

症例2 しゃがんで用事をした後から、両大腿部前面に痛みが出てきたため来院。当初、筋筋膜炎もしくは大腿神経痛を考えましたが、血液検査で赤沈とCRPが著しく上昇しており、また経時的に、両上肢〜肩関節周辺の痛みも出現してきました。癌や感染症のリスクをチェックしてステロイドの内服で加療。

 いずれの症例も消炎鎮痛剤の効き目は弱いのが印象的です。見た目以上に痛みを訴えられます。診察の所見はあまりないのも特徴です。麻痺や筋力の低下はみられません。