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信頼とまごころの医療 からだにやさしい医療をめざして

整形外科 外科 リハビリテーション科

 注意:腰椎分離症(疲労骨折)の診断・治療に関してここ最近、かなり変わってきています。特に診断はMRIで早期に行い、経過もMRIで早期復帰をめざす流れになりつつあります。(CTによる診断では復帰が遅くなるとの考え方)ただし、全体としてコンセンサスが得られたものではありません。今後、おそらくMRIによる早期診断、早期治療が中心となっていくと考えます。
腰椎分離症→腰堆分離すべり症 Spondylolysis →spondylolisthesis

 かつて腰椎分離症は生まれつきのものと思われてきましたが、最近では10-15歳のクラブ活動などの運動で起こる疲労骨折であることが分かってきました。その傍証としては新生児には見られないこと、歩行しない脳性麻痺の患者には見られないとがあげられています。15歳以降の発症(新しく起こるという意味)は少ないとされています。

 本邦の発生頻度は5−7%でそのうち10−20%にすべりが起こります。第4腰椎に10%、第5腰椎に90%が起こります。終末期(偽関節)になるまでにコルセット(硬性体幹装具)と局所の安静を行うことにより治すことができます。ただこの腰痛はやっかいで激痛が起こる場合もあれば、なんとなく腰が痛い、しかも比較的大人しくしていると1週間ぐらいで症状が改善してしまうので受診する機会がなかなかなく、分離が完成(終末期、偽関節)してから見つかることが多いのです。

 初期にはレントゲンでは所見がありません。運動歴などを元に疑わしい場合はMRIもしくはCTを撮影します。(最近ではスクリーニングに最も適したMRIが優先されます。stageの分類や治療経過はCTで行います。)

 MRIで疲労骨折のアクティブな所見(初期、進行期、椎弓根部にT2強調で高信号)があれば、運動を控えコルセット(硬性体幹装具)を装着します。陳旧性(終末期)の場合は保存的には分離が治りませんので対症療法(スポーツ用のライトブレースを装着。痛み止めなど)で運動を出来る範囲で継続します。

 完成された分離症は将来、一部がすべり症(分離症のうち10−20%)へと進展しますが、これは骨年令によりまったく異なります。(下欄参照)

 10-15歳前後で運動を伴ったクラブ活動をしており、腰痛が続く場合は早めに整形外科で診察を受けるようにしてください。
  
 
 子供の腰痛(腰椎分離症)

 酒巻らによるとMRIを用いた疫学調査において小中学生の二週間以上続く腰痛のうち45%が分離症であったと報告しています。
このように子供の腰痛のうちかなり高率に腰痛分離症が含まれており、放置するとすべり症を合併することもあるので注意が必要です。

 元来、分離症は先天性のものと考えられてきましたが、現在ではそのほとんどがスポーツによる疲労骨折が原因と言われています。(小学校低学年の分離症は遺伝性のものもあります。)疲労骨折ですので、早期に見つけた場合は、十分治癒する可能性もあります。早期発見には、腰痛を放置しないことと早期にMRIを行うことです。疲労骨折の変化は初期にはレントゲン撮影では十分描出されませんが、MRIでははっきりと映し出すことが出来ます。またCTによる検査も有効です。

 MRIにおける初期の変化は、pedicle(椎弓根部)の輝度変化が重要で、骨髄浮腫を起こしてくるのでT2強調、脂肪抑制T2強調で高信号が現れます。ごく初期はpedicleの腹側・尾側から生じます。

 大人とは異なり、レントゲンで明らかな分離症を認めてもMRIで輝度変化があれば、必ずしも終末期とか限らずMRIを行って治癒する可能性があるか調べるようにします。MRIで輝度変化があれば、CTによる精査を更に行います。これは早期診断にはMRIが必要ですが、分離部の進行度(初期、進行期、終末期)、骨癒合判定はCTで行います。

 治療ですが、初期・進行期はスポーツの中止、硬性体幹装具を装着します。治療期間は初期もので平均癒合期間が3ヶ月(癒合率94%)、進行期6ヶ月(癒合率64%)とされています。
低信号(終末期)の場合は、痛み止めを使いながらスポーツ用の装具を装着してスポーツ復帰します。L4よりL5の方が治りにくく、また片側より両側の方が治りにくいとされています。
 
 
子供の腰痛2 すべり症

 子供の分離症のうち一部がすべり症を起こしてきます。(分離すべり症) すべり症を起こすか起こさないかは、骨年令によって異なります。


 腰椎分離症 骨癒合を目指す装具療法

 
スポーツの休止期間:分離初期で3ヶ月、進行期で半年程度、体幹硬性装具。腰椎伸展制限と回旋予防を行う。(胸郭と骨盤をしっかり把持できる長さが必要。)→CTで骨癒合が確認できるまで着用する。硬性装具後→スポーツ復帰用軟性装具(ライトブレーズRS、アルケア社)を2-3ヶ月装着する。

 進行期のうち骨癒合の可能性が低いType、骨融合の可能性が無い終末期では、骨癒合は目指さず、痛みが無い分離症の状態を目指します。伸展制限ができるスポーツ復帰用軟性装具(ライトブレーズRS、アルケア社)を装着する。

腰椎の骨年令とすべり症の関係 
 Cartilaginous stage (C stage)   椎体と椎間板の間にある二次骨化核が骨化する前 ほぼ小学生 5mm以上のすべり症に移行80%   分離症のstage関わらず硬性体幹装具
 Apophyseal stage (A stage)  成長軟骨が残存   ほぼ中学生  すべり症に移行10%  骨癒合をめざす 硬性装具の適応
 Epiphyseal stage (E stage)」
 椎体と癒合して成長が終了  ほぼ高校生  すべり症への移行0%  スポーツ用のライトブレース
 大人はすべて終末期(トップアスリートを除く)

 
 
 腰椎分離症の症状〜急性期と慢性期(亜急性期)の違い

<急性期の症状>
 腰椎分離症の急性期とは疲労骨折が起こった直後なので骨折の痛みが生じます。急性期の特徴として運動時の瞬間的腰痛、腰椎伸展時の腰痛とされています。このような症状を好発年齢である10-15歳のスポーツ選手が訴えているときは分離症を強く疑う必要があります。すなわち運動時の腰痛は強いが立位や座位は長時間でも腰痛の増強は少なく、鋭い痛みであり、範囲も狭く、中央から離れた部位に、片側性であることが多いとされています。(両側もあり)

 診察時の所見として棘突起の圧痛と腰椎伸展時の腰痛の誘発が言われてきましたが、伸展時の腰痛は認めないことも多く、他の疾患でもみられることから特徴的とすることはできません。原則としては伸展時痛≧屈曲時痛となります。これまで信頼性が高いとされてきたOne-Leg Standing Lumbar Extension Test も信頼性が低いことが分かってきました。 

<慢性期(亜急性期)の症状>

 急性期の症状は疲労骨折が原因ですので比較的早く痛みが消失します。治癒せずに慢性期に入るとさまざまな症状を起こします。当初は当該椎間板の変性、その後は分離部の滑膜炎、反対側が引き続き分離することにより腰痛を引き起こします。分離に伴う椎間板変性が起こると椎間板変性による腰痛よりも広い範囲で鈍痛を感じるようになります。(いずれも椎間板変性による痛みは運動時よりも長時間座位時の方が強いと言われています。)さらに腰椎すべり症へ移行し神経症状を起こすことがあります。分離部で増生した骨性組織や線維軟骨性組織が圧迫して神経根症状を呈することがあります。
 
腰椎分離症の治療〜急性期と慢性期(亜急性期)の違い

 急性期:疲労骨折であるので、レントゲンで所見に乏しく、CTで軽度の亀裂、MRI T2強調で高信号がみられる初期分離症では治癒を期待できるので硬性体幹装具を3ヶ月を目処に装着します。(骨癒合率90%)装具装着により痛みは約3週間ほどで改善しますが、骨は癒合していないので運動復帰はCTで骨癒合(3ヶ月後)を確認するか、MRIで脂肪抑制T2強調像で高信号が消える(2ヶ月後)のを確認した後に行うようにします。

 *早期の急性期では3ヶ月後にCTを行い骨癒合を確認後にスポーツ再開とする方法とMRIで2ヶ月後に骨癒合(MRIで脂肪抑制T2強調像で高信号が消える)を確認する方法(考え方)があります。(CTが一般的)

 慢性期:レントゲンでははっきりしないがCTで完全な亀裂のあるものでは3-6ヶ月の装具装着を行います。MRI脂肪抑制T2強調像で高信号(骨髄浮腫)を認めるものでは60%、認めないもので30%の骨癒合を得られます。


 終末期(偽関節):骨癒合をめざす治療は選択されず、痛みをコントロールする治療を行い早期復帰をめざします。症状に応じて軟性コルセットや腰椎ベルトを使用します。 

 *装具には硬性装具、軟性装具があり急性期〜慢性期で治る見込みがある場合は硬性装具(急性期で治癒率90%)を優先して装着します。個人個人の状況で硬性装具の同意が得られない場合は治りは硬性装具より劣るがが装着しやすい軟性装具(急性期で治癒率60%)を使います。そのほか、固定力が劣る腰痛ベルト(サクロスポーツライト:アルケア社、初期分離で14例中12例、進行期分離で9例中6例で骨癒合したとの報告あり)や伸展防止タイプ(マックスベルトS3:日本シグマックス社)
 
 腰椎分離症のスポーツ復帰〜急性期と慢性期(亜急性期)の違い

   急性期〜亜急性期の骨癒合をめざす場合のスポーツ復帰はCTで骨癒合が確認されてから行います。(治療開始後3-6ヶ月)治療経過中は体力維持、体幹、四肢のストレッチを痛まない範囲で行うようにします。特にハムストリングの柔軟性は分離症に与える影響が大きいとされており念入りに行うようにします。

 大場らは初期分離症を治療開始二か月後にMRIを行い、椎弓根の脂肪抑制T2強調像で高信号が消失したのを確認し、その後スポーツ復帰を行い、全例で骨癒合を得たと報告しています。青木らはこれらの結果を踏まえて、早期復帰の希望が強ければ治療開始2か月後にMRIで高信号の消失を確認したうえで運動を再開、一方、確実な治癒をめざす場合は2-3ヶ月以降でCTによる骨癒合を確認してから再開するのが適切としています。治療経過中のCTやMRIは初回は2-3ヶ月目に行い、その後、骨癒合(CT)、高信号の改善(MRI)がなければ、1-3ヶ月毎に再評価します。復帰当初は軟性コルセットや腰痛ベルトを装着します。ハムストリングを中心としたストレッチを継続します。経過中、強い腰痛を起こす場合は、再骨折の可能性もあり再評価します。

 終末期は骨癒合を保存的に治療することは出来ませんので、痛みに応じた対症療法を行います。痛みに対して消炎鎮痛剤、コルセット(伸展制限目的)、温熱治療などを行います。柔軟性を維持、改善する目的でストレッチは継続します。症状が改善してスポーツ復帰が可能となれば徐々に運動を行うようにします。 

 手術療法:急性期分離症で6ヶ月程度保存療法を行ったにもかかわらず、骨癒合が得られず症状が改善しない場合は手術を考慮しますが、骨癒合が得られなくとも症状は改善しスポーツ復帰することも多いので必ずしも手術が必要とはなりません。手術法は、すべり症が無ければ分離修復術を行います。分離部に骨移植をしスクリューもしくはワイヤーで固定します。最近では、経皮的に骨移植を行わずにスクリュー固定する施設もあります。
 
参考:関節外科 vol35 No.5 2016

成長期スポーツ選手の腰椎疲労骨折の治療

 腰椎疲労骨折の早期診断にはMRIが必要。2週間以上続く腰痛と理学所見があればMRI。「まずMRI、そしてCT。」CTで改善を待つのでは無く1ヶ月毎にMRIの検査を行い、症状の消失とMRIでの所見が改善すれば、アジリティトレーニングを開始し復帰する。 

参考: 成長期スポーツ選手の腰椎疲労骨折の治療 大場俊二  災害・整形外科 第59巻第6号5月臨時増刊号

  
腰堆分離すべり症

 分離すべり症は変性すべり症とはその成因からも異なったものです。腰椎分離症のうち、終末期分離症が2次骨化核が現れるまでに完成したものは80%ですべり症を発症します。2次骨化核が出現してからは10%と著しく減少します。2次骨化核がでるApophyseal stage (10-17歳)より若い年齢、すなわち2次骨化核が出現していない時期、Cartilaginous stage (4-12歳)に終末期分離症が完成するとすべり症が極めて発症しやすいといえます。

 このすべり症は変性すべり症と異なり、椎間板では無く成長軟骨でおこる骨端軟骨障害として治療を考慮する必要があります。分離すべり症の予防はエビデンスのある報告はありませんが、ダーメンコルセットで仙骨前方部分のリモールディングが起こり、すべり率が改善する例があると報告されています。

 分離部由来の腰痛は分離部での滑膜様組織の増殖があることから滑膜炎により物理的、化学的な刺激によるものではないかとされています。また偽関節となった分離部は、萎縮性変化や骨増殖性変化がみられます。これら増殖した骨や線維軟骨性組織が神経根を圧迫することにより坐骨神経痛が生じることがあります。 
   
 
本日のコラム271 腰椎分離症でのMRIT2強調像が陰性でCTで所見を認める例

 腰椎分離症とはスポーツ障害により、椎弓部分に疲労骨折を起こすことによって腰痛を発症します。この腰痛は一過性のことも多く一週間程度運動を休止すると痛みが改善し、治す機会を失うことがあります。

 中高生で部活などで運動を行っている場合、一過性の腰痛であっても注意が必要です。レントゲン、MRI、CT を組み合わせて、精査することも大切です。

 表題に書いたように、CT では所見があるにもかかわらず、 MRI で陽性所見を認め無い例を集めて解析した文献によるとMRIで信号の増強(T2強調像)なくCTで所見があるのは、時間が経過してほとんど治っている場合と偽関節になっている場合とに分かれるそうです。

 MRIとCTを組み合わせて治療を行うのが良いとされていますが、基本的に発見にはレントゲンとMRIを行い、治癒の確認にはCTを組み合わせるのがベストと考えられます。もちろん、地域によってはこれらの検査が十分行えないといったこともあります。
 
  
本日のコラム272 スポーツ関連腰痛に対する保存療法 腰椎分離症

 L5に多いが運動強度が強いと L2〜4からの上位腰椎の分離も合併することがあります。

1.高校生以下の発育期腰椎分離症の治療方針

 小学生:終末期を除いて原則として骨癒合を目指す。(終末期に至った場合、すべり症に移行する確率が高いため) 

 中学生:骨癒合を目指す方向で調整するが、目標とする大会やトレーニング時期を考慮して判断します。

 中学3年生の進行期分類では、希望により、直近の大会をスポーツ用軟性装具で体会終了後に骨融合目指す。

 高校生:高校二年生以降では、進行期分類あっても終末期分離に準じた対応を行い、対症療法のうえ早期に復帰を目指す。

 *骨癒合を目指す場合は硬性コルセットを使用し、運動は体育の授業も含めて完全に休止します。
運動休止とコルセットの固定がとても重要であることを理解してもらう。

本人のみならず家族、指導者の理解を得ることが大切です。

硬性コルセットで固定した後は、他の部位の柔軟性を高めるためのストレッチをしっかり行います。また体幹機能を向上させるためにハンド・ニーやバックブリッジなどを行います。
 
 
本日のコラム274 スポーツ関連腰痛に対する保存療法 腰椎分離症 2 大学生以降

  大学生以降は腰椎分離症はほとんどが偽関節となった終末期分離症になっているので、対症療法を中心としてスポーツを継続するようにします。無症状であることが多いのですが、慢性腰痛や偽関節となった分離部での滑膜炎や骨棘により神経根部を圧迫して殿部・下肢痛を生じることもあります。

 また椎間板変性や分離すべり症の合併率が高いとされています。

 治療は、分離部ブロック、下肢症状を伴う場合は神経根ブロック、体幹機能を安定させる運動、タイトハムストリングなどを改善させるために下肢の柔軟性を高める運動を行います。
 
  
本日のコラム276 スポーツ関連腰痛に対する保存療法 腰椎分離症 3 成人以降の新鮮例

 ハイレベルな運動選手の場合、成人になっても新鮮腰椎分離症を起こすことが報告されています。レントゲンやCTでは診断が出来ないので、MRIのSTIR画像を行う必要があります。治療は発育期と同様ですが、実際には、疼痛管理を行いながら早期復帰を目指すことが多いとされています。