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整形外科 外科 リハビリテーション科

 脊椎高位診断
大後頭孔の症候 〜大後頭孔症候群

 大後頭孔部に、髄内、髄外の腫瘍などの病変が生じて症状を現します。診断が困難な理由として5つを挙げています。
1.病変の大きさの割に症状が少ない
2.症状が動揺、消長する(病初期の痛みはしばしば経過中消失し、進行とともに再発する。り返すことあり)
3.部位特異性のある症状に乏しい
4.病変レベルと一致しない上肢末梢の症候、偽性局在徴候を示す
5.診療各科と画像診断の境界領域であり、診断のpitfallとなる

・原因:髄外腫瘍(良性、悪性)、髄内腫瘍

 症状:初期は後頭部〜頚部の疼痛(通常は患側の一側性)または上下肢の感覚異常(しびれ、温痛覚・触覚の障害、発生機序が不明な下位頚髄〜上位胸髄の前角細胞障害による)で発症し、進行すると上下肢の麻痺、手の巧緻障害が出てくる。
 

上位頚椎部障害の神経症候

<後枝:後頚神経叢>
 第1頚神経:純粋な運動枝:小後頭直筋、大後頭直筋、横突後頭筋、感覚関与なし
 第2頚神経:上頭斜筋、下頭斜筋、板状筋、最長筋
 第3頚神経:最長筋、半棘筋、腸肋筋

 *第2、第3頚神経は後頭部〜後頸部の感覚を伝達(後頚神経叢)

<前枝:頚神経叢>
 表在枝:感覚:第2,第3頚神経
      小後頭神経:耳後部の後頭
      大耳介神経:耳介付け根
      頚皮神経:前頚部
      鎖骨上神経(第3神経が形成)肩周囲
 深枝:筋支配
      1−2頚神経深枝+舌下神経→おとがい舌骨筋、甲状舌骨筋、胸骨甲状筋、胸骨舌骨筋

・末梢神経障害
 同じ神経根でも分岐後、別の経路となるので感覚障害と運動障害が常に同時に存在するとは限らない

・神経根障害
 第1〜第3頚神経根障害では、上肢の神経根徴候が見られない。根障害のレベルの同定は困難
 1.感覚障害
  第1頚神経は感覚を伝達していない
  第2、第3頚神経は後頭部〜後頸部(大部分が第2頚神経)、前頚部〜鎖骨付近(第2、第3が神経叢を経ているので同定不能、いずれか一方の神経根障害のみでも前頚部〜鎖骨周辺の広い範囲で感覚障害)

 2.運動障害
 後頸部、前頚部の筋群は複数の上位頚神経根が神経叢を形成しているために単独の神経根障害では運動障害は自覚されない場合が多い。逆に、運動障害が認められても障害神経根レベルを同定するのは困難。運動障害として、開口動作、頭部前後屈、肩挙上。

 開口障害→上位頚神経の障害

 頭前屈障害→胸鎖乳突筋障害→上位頚髄神経OR副神経の障害

 頭後屈→頭半棘筋・板状筋(脊髄神経の多髄節支配)、僧帽筋(副神経+第3・第4頚神経)、頚半棘筋→上位頚神経のみの障害では明らかな運動障害として捉えにくい。

・第1〜第2頚髄障害

 診断:高位診断+横位診断 どのレベルでどの部位が障害されているかを判断。

1.急性損傷
  骨折や脱臼で急性上位頚髄損傷。完全切断、部分切断。いずれも初期には脊髄ショックとなり、多くの場合、完全運動麻痺+感覚神経麻痺(受傷レベル以下の表在感覚、深部感覚ともに完全消失。)多くの場合で、尿閉、便失禁、便秘。感覚障害部で皮膚温上昇、発汗の停止。脊髄ショック期を過ぎると不完全切断の場合は、足趾のわずかな自動運動を観察することが多い。

 第1〜第2頚髄の完全断裂:多くは休息な死。免れたら両上下肢の完全弛緩性麻痺・完全な知覚消失となる。心拍数上昇、血圧低下、横隔神経麻痺による呼吸停止。Horner症候群(縮瞳、眼瞼下垂、眼球陥凹)の出現。尿閉、便秘。三叉神経脊髄路が障害され、四肢体幹の感覚障害だけで無く、顔面の感覚障害を生じる。(理由:三叉神経は橋レベルで髄内に入り、上位頚髄まで下降しているため

 不完全断裂:損傷が一側の場合、交代制半側感覚鈍麻が生じる。(同側三叉神経障害による顔面同側の感覚障害+反対側の交叉性の四肢体幹感覚障害)

2.慢性損傷
 慢性的な脊髄圧迫による障害。髄外圧迫と髄内圧迫がある。

 髄外圧迫:髄膜腫、神経鞘腫、悪性リンパ腫の脊柱管内への浸潤などの髄外腫瘍、Chiari奇形による小脳扁桃のヘルニア、環軸椎脱臼、頭蓋底陥入症、椎間板ヘルニア、脊椎カリエスの膿瘍形成。症状の特徴として項部痛と頚部の運動制限が高頻度。加えて上位頚神経支配領域に感覚障害(根症状)。脊髄圧迫で初期には、解離性感覚障害(温痛覚が障害、触覚温存)、進行すると圧迫部以下の全感覚障害となる。第1〜第2頚髄圧迫では三叉神経脊髄路障害による顔面の感覚障害が出ることがある。反射は、四肢で腱反射が亢進。足、膝の間代。病的反射(+)運動障害は四肢の痙性麻痺。呼吸筋麻痺。下位頚髄の静脈潅流障害による手の巧緻障害・手内筋萎縮。膀胱障害は排尿困難・遅延で始まり尿閉。さらに悪化すると自立性の尿失禁。自律神経障害として高度圧迫で四肢体幹の立毛反射消失、発汗消失。大後頭孔より上位が圧迫されると、頭蓋内圧亢進症状や延髄症状(徐脈、体温低下)
 延髄脊髄移行部での圧迫は、四肢麻痺についても上肢に強い症状や一側上肢と対側下肢の麻痺となることがあるので注意。

 髄内圧迫:ALSや多発性硬化症と誤診されることも多い。感覚障害は脊髄空洞症に代表される脊髄中心部の障害の症状(非対称の宙づり型感覚障害、一側性の感覚障害)宙づり型とは、内側の頚髄領域の感覚神経が障害され外側の腰仙髄は正常となること。
第1〜第2頚髄が圧迫されると側頭部〜後頭部の解離性感覚障害が生じる。また広がって三叉神経脊髄路の圧迫で顔面の感覚障害。運動障害は髄外圧迫では早期に痙性麻痺を呈するが、髄内圧迫では痙性麻痺は目立たず、圧迫部の前角細胞障害が目立つ。早期には反射亢進は認めないことも多い。圧迫進行で膀胱障害や自律神経障害。

 *後頸部〜後頭部の感覚障害は、第2頚神経障害に特徴的。
 


C3/4 高位障害の特徴

 頸椎の高位と髄節は1分節ほどずれており、C4/5はC6髄節のほぼ中央、C5/6はC7髄節の中央となり、C3/4はC5髄節のやや頭側寄りにある。

 1.運動障害
 ・筋力低下 C3/4高位で、障害を受けるのはC5髄節のやや頭側。三角筋筋力低下8割。三角筋以下の筋力低下5割程度。手内筋の萎縮や手指のしびれは静脈のうっ滞による変性と考えられている。

 ・巧緻障害
 8割に巧緻運動障害。C2,C3髄節には脊髄固有ニューロンがあり、感覚と運動ニューロンを橋渡ししている。これがC3/4高位で脊髄固有ニューロンの軸索が圧迫されると巧緻障害が出ると考えられている。

 ・歩行障害
 重症度に応じて歩行障害が出る
 2.感覚障害
 手から上腕あるいは肩口まで4割。手から前腕あるいは肘まで5割。手全体に限局1割。全指尖のしびれ感67%。感覚障害は100%
 C6を中心にC5からC8まで広く障害。中下部胸髄レベルの圧迫感、帯状の締め付け感がでることあり。(固有ニューロンの障害)

 3.自律神経症状
 脊髄固有ニューロンは上行枝が小脳へ、下行枝はC6-8運動ニューロンに投射。C3/4脊髄固有ニューロンが障害されるとめまい、ふらつきがでるとされている。(交感神経系刺激によるBarre−Lieou症状とは異なる)

■他覚所見
 1.反射:上腕二頭筋腱反射以下の亢進が高率に起こる。
 2.後索障害:筋固有感覚と識別感覚の乖離が起こることがある
 ・筋固有感覚 親指探し試験、指鼻試験
 ・識別感覚検査 皮膚描画感覚 立体感覚

■徴候

 1.偽性アテトーシス 指を伸展させると位置を保てずゆっくりくねくねと動いてしまう状態

 2.imitation synkinesia  一側の手関節を力強く屈曲伸展させると対側も同様に動く状態。この障害はどのレベルでも起こる


中下位頸椎の症候 神経根症、脊髄症の特徴と高位診断

 <神経根症>
 ほとんどが片側の頚部痛(項部、肩甲上部、肩甲骨上角部、肩甲間部、肩甲骨部)で発症する。頚部痛単独7割、上肢痛あるいは手指のしびれを併発3割、頚部痛が前駆せずに上肢痛あるいは手指のしびれ感で発症した例は無かったとする報告あり。しびれ感は部位が移動せず、日によって異なることがない。移動する場合は、頸椎疾患を除外して良い。しびれはしばしば朝方に改善して午後、夕方に強い。慢性例では頚部痛が無い例もある。初診以降、ほとんどで症状は改善する。手術は悪化例ではなく改善の少ないものとなる。

 *C7神経根症 しばしば狭心症と誤診。鎖骨下方〜胸筋部に痛み。真の狭心症で生じる胸骨部には無い。

 しびれ、筋力低下の神経支配は、より強い部位が主病巣。

 <頚髄症>
 多くが手指のしびれで発症。両手同時よりも一側に始まり、まもなく両手となることが多い。項部痛で発症することはほぼ無い。初発症状:手のしびれ6割、足のしびれ1割。四肢あるいは体幹への電撃性ショック、指のもつれなどは一割以下。指のしびれが主訴で頚部痛が先行もしくは同時に発症しない場合は神経根症は除外してよく、まず脊髄症もしくは絞扼性末梢神経障害を疑う。しびれ感が常にあり、強さもほとんど変動しない。症状は最初に灰白質障害(脊髄前角・後角)によるものがでて、次いで、白質障害(錐体路、脊髄視床路)がでることが多い。

 指のしびれ感は灰白質由来、続いて巧緻障害(手指のもつれ、箸使い、書字、ボタン掛け)がでる。病変が拡大し白質に及ぶと足の引きずり、もつれなどのけい性歩行。足先、下肢、体幹のしびれ、さらに排尿障害がでる。下肢の感覚異常はしびれ感では無く、風呂の温度が熱く感じるなど温度覚異常で自覚されることも少なくない。

 高位診断:しびれがどの部位から発症したかが大切。C3/4、C4/5橈側の指ないしは全指。C5/6母指を除く尺側の2−4指で発症。C6/7小指から(ほとんどない)。軽症側のしびれの初発も高位診断に使える。



*一側のしびれ、巧緻障害+対側の温痛覚障害 

*両手に朝方強いしびれ、時間とともに徐々に改善→手根管症候群

 
上中位胸椎の神経症候

 他の部位に比べて脊髄、神経根が障害されることは少ない。いずれの場合も、脊髄の灰白質障害による髄節徴候よりも白質障害による長経路徴候である下肢末梢の症状で始まることが多い。従って他部位の障害と間違えたり見過ごさないようにする。

 神経根・脊髄を外部から圧迫する病変と非圧迫性の髄内病変に分けられる。

 圧迫性病変:胸椎の変性疾患(後縦靭帯骨化症、黄色靱帯骨化症、椎間板ヘルニア)、硬膜内髄外腫瘍(神経鞘腫、髄膜腫)、硬膜外腫瘍(悪性リンパ腫)、転移性悪性腫瘍(乳がん、前立腺癌、肝がん、多発性骨髄腫)、脊椎炎(結核性脊髄炎)

 非圧迫性病変:髄内腫瘍、脊髄動静脈奇形、特発性脊髄ヘルニア、神経内科疾患(多発性硬化症、ウイルス性脊髄炎、脊髄小脳変性症)

<症状>
 感覚障害:初発症状は、足趾足底のしびれ感。ほかに下肢全体〜体幹のしびれかん、胸部・腹部・腰部の締め付け感。椎間板ヘルニアで突然の胸背部痛で発症することあり。

 運動障害:立位・歩行時のふらつき、もつれ、不安定、脱力感、歩行時の足のつっぱり感、突っ張る痛み。走れない、雲の上を歩く感じ。

 排尿困難:膀胱障害

<症状の進行>

 下肢末梢に始まるしびれ感は脊髄症の進行とともに上行。下肢の運動障害も不安定性・脱力感から運動麻痺、けい性歩行となる。症状が進行すると排尿障害も顕在化する。


<所見>
1.痛み
 胸背部痛+の例では、叩打痛のチェック。転移性脊椎腫瘍、化膿性脊髄炎、結核性脊椎炎、椎体圧迫骨折

背部中央から肋間:腫瘍、椎間板ヘルニア、帯状疱疹

2.感覚障害
 体幹では感覚鈍麻、下肢では感覚過敏、異常感覚

3.運動障害
 下肢の運動障害

4.反射
 一般的に下肢腱反射は亢進。(7−8割)急速に進行した例では消失のことあり。バビンスキー徴候60%陽性

5.排尿障害

6.顔面の症状
 T1高位でホーナー症候群(病変側で縮瞳、眼瞼下垂)
 T2-3高位でハーレークイン症候群(病変対側の顔面の紅潮、発汗過多)

*Hofmann徴候+は頸椎疾患であることが多い
*しびれ感が大腿前面にも及んでいる場合は、胸椎疾患を考慮。
*下肢腱反射の減弱が合併→胸腰椎以下の病変の合併を考慮。

 

 
下位胸椎、上位腰椎の神経症候

 胸腰椎移行部(T11〜L1高位)には、脊髄円錐部(脊髄円錐、円錐上部)があります。T11/12高位よりL1/2高位の間にあります

 円錐上部:L4-S2
 脊髄円錐:S3-S5、Co

 この狭い2椎体ほどの間に多数の脊髄があるので、この部位で障害が起こると脊髄障害、神経根障害が混在し多彩な神経症候となる。

 高齢者は加齢による椎間板や椎体の短縮により、円錐部が下方に移動することがある。(下がってもL2椎体上1/3まで)

<症候>
 1.円錐上部症候群
  円錐上部(T12椎体高位:T11/12−T12/L1高位、脊髄レベルL4-S2)
  
 2.脊髄円錐症候群(L1椎体高位)
 S3-5髄節と尾髄(Co)よりなる脊髄円錐の病変による症候群。
 原因:椎間板ヘルニア,脊椎,脊髄腫瘍などの圧迫性病変。

 L1-L5神経根、S1-2前根は移動性が上がるので症状が出にくく、S3-5髄節症候が主症状となる。
 純粋な脊髄円錐の障害では早期から核上性の膀胱直腸障害と肛門性器周囲の対称性の感覚消失が生じる。
 下肢の腱反射の障害や運動障害はみられず、単独で発症することはきわめて稀。
 脊髄円錐上部症候群や馬尾症候群を合併するものが大部分で,下肢の腱反射の低下,消失と下肢の運動障害や感覚障害を伴うことが多い。

 3.馬尾症候群
 L2椎体高位以下では、L2以下の神経根が馬尾を形成している。馬尾症候群は、腰痛、下肢痛、筋萎縮、脱力、しびれを起こす。感覚障害は主に下腿、会陰に強く認める。間欠性跛行。

*間欠性跛行(馬尾性、脊髄性、血管性)
 馬尾性には、馬尾型、神経根型、混合型に分けられる。
 

 
 他部位病変との鑑別診断
1.大脳病変と末梢神経病変
 大脳半球の内側には下肢の運動野があり、この付近の大脳鎌周辺の障害で、下肢筋萎縮や下垂足が生じる。(円錐上部症候群と似る)大脳病変では腱反射個往診やBabinski徴候など錐体路徴候が目立つ。単、多発ニューロパチーで反射弓が障害されなければ下垂足を呈しても腱反射が保たれる。(Babinski徴候は陰性)

2.神経変性疾患
  ALSなどの運動ニューロン障害
 ALSでは、下肢筋力低下がびまん性で腸腰筋(L1-3)まで及ぶ、眼球の運動障害+、感覚障害や褥瘡がない。
 他に、多発性硬化症、急性散在性脳脊髄炎、脊髄小脳変性症、スモン病などがある。

3.C6/7頚髄症
 C6/7上肢の症状を起こさないので、胸髄病院との鑑別が必要。頚部痛や前胸部痛、肩こりが初発症状として出現する場合がある。頚部の前屈後屈にて腰背部への放散痛。
上腕三頭筋腱反射、Hoffmann 反射反射等がが陽性となることがある。

4.円錐部脊髄腫瘍 神経鞘腫、上衣腫が多い
 上衣腫は粘液乳頭型が多く、馬尾との癒着、周辺への浸潤が強く、手術では神経麻痺に注意。

5.円錐部血管性病変
 脊髄動静脈奇形(AVM)、脊髄出血、脊髄梗塞。脊髄痛を伴う急性脊髄麻痺は円錐部血管性病変の脊髄出血や脊髄梗塞を疑う。

6.円錐部脊髄外傷
 

腰仙椎部(馬尾)の神経徴候

 馬尾:脊髄円錐より尾側にある神経根の集合をいう。L1−S1神経根は下肢の運動と感覚、S2-S4神経根は排尿、排便、性機能、陰部の感覚に関与している。S2神経根以下の障害の場合、膀胱直腸障害のみの症状となるので、脊髄円錐障害とと酷似する。

自覚症状
 1.腰痛
 2.下肢痛
  神経根・馬尾障害に関連した下肢痛は、神経節の圧迫が重要で、神経根や馬尾の機械的圧迫のみだとしびれ感と感覚鈍麻は生じるが、痛みは生じにくい。強い痛みを訴える場合は、後根神経節の圧迫の有無をチェック。

 3.運動障害
 下位運動ニューロン障害。弛緩性麻痺。筋力低下。下肢筋は複数の神経根支配なので一本の神経根障害では著明な運動障害は生じない。下肢筋の神経根分布が障害後再構築されていることがあるので注意。

 4.間欠跛行
 歩行の最中に何らかの下肢症状が出現し、歩行の継続が困難になること。血行性、脊髄性、馬尾性がある。腰部脊柱管狭窄症による間欠性跛行は、前屈位で症状が改善し、また前屈位の運動負荷では症状がでない。ショッピングカートを押しての歩行や自転車では症状が出にくくなる。

 5.排尿・排便障害
 神経の圧迫による膀胱直腸障害で生じる。膀胱などの弛緩性麻痺による。膀胱の知覚も低下し尿意が減少する。残尿の自覚が無いことも多い。腸ぜん動の低下、肛門括約筋の弛緩などが起こる。排便障害には便秘と便失禁がある。
 
 6.性機能障害・間欠性勃起

他覚症状
 1.皮膚症状の有無

 2.姿勢異常・歩容異常
  下垂足、鶏歩

 3.筋萎縮
  殿筋の萎縮の有無:末梢神経障害では殿筋は温存。腰部神経障害では下肢と同時に殿筋も萎縮することが多い。萎縮筋の腱反射は通常消失、保たれている場合は上位運動ニューロンの障害の合併。感覚障害を伴わない下肢の著明な筋萎縮は運動ニューロン疾患の初発症状のことがあるので注意する。

神経学的検査
 1.緊張徴候 SLRテスト、FNST、Flipテスト
 2.徒手筋力テスト
 3.感覚障害
 4.排尿障害(神経因性膀胱)一定量たまると交感神経の反射で一気にでる機能は残存している。
 5.反射
  腰仙骨部での神経障害は腱反射は減弱もしくは消失。片側性は根障害。両側性減弱は加齢など。
  →Jendrassick maneuver 両手で指を組んで左右に引く動作。上位神経抑制を一時的に弱めることで高齢による両側性の神経反射減弱では反射が誘発されやすくなるとされている。

 PTRの亢進とATRに消失末梢神経もしくは腰椎部病変に加えて上位運動ニューロンの合併を疑う
 上位運動ニューロン障害があっても反射が亢進しないケースあり→糖尿病性神経障害+頚髄障害

 症状・徴候  障害神経根 
 L4  L5  S1
 緊張徴候 FNST、SLR  SLR  SLR 
 筋力低下  膝伸展  母指背屈
足関節背屈
 母趾底屈
足関節底屈
 感覚障害  下腿内側  下腿外側〜足背  足部外側
 腱反射低下  膝蓋腱反射  得意なものなし  アキレス腱反射
 


パーキンソン病と脊椎脊髄病変との鑑別

 パーキンソン病:無動、筋強剛、安静時振戦、姿勢反射障害を4主徴とする。中脳黒質でのドパミン産生細胞の脱落による基底核での運動調整障害が起こるとされている。

 パーキンソン症候群:パーキンソン病の運動障害と類似の症候を示す疾患群。原因として脳血管障害、薬剤、変性疾患、正常圧水頭症など。無動、筋強剛、安静時振戦、姿勢反射障害を4主徴のうち「無動もしくは筋強剛のいずれかを含む2つ以上の症状」を呈するものと定義されている。粗大筋力は保たれている。錐体路障害、運動失調、末梢神経障害、筋障害は認められず、錐体外路障害とされている。

 ・無動:動作緩慢だが筋力は保たれている、瞬目の減少・表情が乏しい仮面様顔貌。声が小さく単調。

 ・筋強剛:筋緊張度の異常で、亢進が認められる。受動的に関節を動かすとガクガクと歯車様の抵抗、鉛管を曲げるような一様の抵抗。

 ・振戦:四肢や頭部に起こる規則的な「ふるえ」。動作や体動で減弱または消失。4−6Hzの丸薬丸めるような振戦が特徴。頭部の振戦は、本態性振戦d値は横向けが多く、パーキンソンでは縦向けが多い。

 安静立位の姿勢と歩容も、体幹は前傾で軽度屈曲、肘と膝も軽度屈曲。最初の一歩がでにくい。(すくみ足)。歩幅も小さい。(鶏歩)速度が速くなりコントロールが上手く出来ない。(突進歩行)

 *高齢者ではパーキンソンと脊髄症との合併したり、鑑別診断が必要になってくる。