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整形外科 外科 リハビリテーション科

FAI (大腿骨寛骨臼インピンジメント) Femoroacetabular impingement

 インピンジメントは英語で「衝突」という意味です。整形外科では、主に関節の可動が物理的に傷害されるとき○○インピンジメントという病名がつけられています。

 FAIはFemoroacetabular impingementの略号です。そのまま訳すと「大腿臼蓋の衝突」となります。大腿とは大腿骨のことであり臼蓋は骨盤に大腿骨の骨頭が収まるくぼみ(ソケット)のことです。

 ですからこの病気は、大腿骨寛骨臼蓋と大腿骨の一部が衝突すると起こります。衝突の仕方には2種類あってcam type、pincer typeがあります。またこの二つが混合したcombined typeがあり合計3つの分類となっています。

 cam typeは大腿骨頭がなだらかにくぼむ場所が膨らんでいて股関節の臼蓋と当たります。pincer typeは股関節の臼蓋前縁が覆い被さって大腿骨を動かすとあたります。すなわち、前者は大腿骨頭の形に問題があり、後者は臼蓋の形態に問題があります。この二つがミックスした状態をcombined typeとします。

 従って大腿骨頭が膨らんでいるcam topeはその部分を削る手術をします。臼蓋が出っ張っているpincer typeは出っ張った臼蓋を削ったり過剰に突出した下前腸骨棘を削る手術をします。いずれも最近では鏡視下手術で行うようになってきています。

  下前腸骨棘インピンジメント

 大腿直筋の付着部である下前腸骨棘が膨隆すると、股関節の可動時に大腿骨頚部と衝突してインピンジメントを起こすことがあります。成長期に鍛錬したアスリートは下前腸骨棘が発達していることが多く、また裂離骨折を起こした後に膨隆するケースも見られます。

 症状は股関節を屈曲すると下前腸骨棘に疼痛が生じます。レントゲンでは下前腸骨棘が前下方に突出しています。

 保存治療はインピンジメントを起こさないように屈曲などを控えるようにします。改善しない場合は鏡視下に下前腸骨棘の除圧を行います。FAIの手術と一緒に行う例が多い。
 
本日のコラム79 FAI(大腿骨−寛骨臼インピンジメント)(*:狭義)の診断指針(日本股関節学会、2015)

 FAI(大腿骨−寛骨臼インピンジメント)の概念は、股関節運動時に寛骨臼辺縁部と大腿骨頸部もしくは大腿骨頸部移行部付近が、繰り返し衝突(インピンジメント)することによって寛骨臼縁の関節唇および関節軟骨に損傷が生じる病態とされています。既知の疾患のあるものは除外します。

 pincer type と cam type があります。(両方あるものは,mixed type) pincer type FAIは寛骨臼辺縁の過剰な被覆であり、Cam tope FAIは大腿骨頭・頚部移行部の骨性隆起により生じます。両者はまったく別の病態と考えられています。

 Cam type は、関節鏡の良い適応です。臼蓋形成不全を有する症例をpincer typeと誤って臼蓋辺縁部のトリミングを行うと変形性股関節症をが進行してしまう。

 *:明らかな股関節疾患に続発する骨形成異常を除いた大腿骨−寛骨臼インピンジメント

 日本股関節学会指針(案)FAIの診断基準(2015)
  Pincer typeのインピンジメントを示唆する所見
1.CE角40度以上
2.CE角30度以上かつARO0°以下
3.CE角25度以上かつCross-over sign陽性

*正確なX線正面像による評価を要する。特にcrossover signは擬陽性が生じやすいので、3の場合はCT.MRIで寛骨臼のretroversionの存在を確認することを推奨する。
  身体所見
前方インピンジメントテスト陽性(股関節屈曲・内旋位での疼痛誘発を評価)
股関節屈曲・内旋角度の低下(股関節90°屈曲にて内旋角度を健側と比較する)

Patrickテスト(FABERテスト)陽性(股関節屈曲・外転・外旋位にて疼痛誘発)も参考所見として用いられる。(他の股関節疾患、仙腸関節疾患でも高率に認められるので注意が必要。)
  Cam typeのインピンジメントを示唆する所見
CE角25度以上
主項目:α角(55度以上)
副項目:Head-neck offset(8mm未満)、
Pistol grip deformity、Herniation pit
(主項目を含む2項目以上の所見を要する)
*X線、CT、MRIのいずれによる評価も可。
  診断の目安 上記の画像所見を満たし、臨床症状(股関節痛)を有する症例を臨床的にFAIと診断する。
  除外項目

 以下の疾患の中には2次性に大腿骨−寛骨臼インピンジメントをきたしうるものがあるが、それらについては本診断基準をそのまま適応することはできない。

・既知の股関節疾患

炎症性疾患(関節リウマチ、強直性脊椎炎、反応性関節炎、SLEなど)、石灰沈着症、異常骨化、骨腫瘍、痛風性関節炎、ヘモクロマトーシス、大腿骨頭壊死症、股関節周囲骨折の既往、感染や内固定材料に起因した関節軟骨損傷、明らかな関節症性変化を有する変形性股関節症、小児期より発生した股関節疾患(発育性股関節形成不全、大腿骨頭すべり症、ペルテス病、骨端異形成症)、股関節周囲の関節外疾患


・股関節手術の既往

1次性もしくは特発性としてのFAIと小児疾患や外傷の既往歴があるのもを2次性のFAIとする考えもあります。