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整形外科 外科
リハビリテーション科

痛風 gout 偽痛風 pseudogout

 痛風と偽痛風は同じように関節痛を引き起こしますが別の病気です

 痛風は血中の尿酸が増えて関節に析出して炎症を起こします。尿酸は水に溶けにくく特に温度が下がる足の母趾関節(MTP関節)に発症しやすいです。肘関節、膝関節、アキレス腱などで起こることもあります。急性期の治療は消炎鎮痛剤を投与します。急に尿酸値を下げると症状が悪化しますので、炎症が落ち着いてから必要に応じて尿酸を下げるお薬を使うかどうかを決めます。

 尿酸値がそれほど高くない場合は、食事や運動療法で改善するかをみます。肥満がある場合はダイエットも必要です。

 偽関節は関節内にピロリン酸カルシウム水和物の結晶が沈着する病気です。原因ははっきりしていません。特定の病気に合併することがあります。レントゲンで白い沈殿が写ります。

 治療は痛みに応じて消炎鎮痛剤を投与します。炎症を繰り返してCharcot関節になることがあります。


本日のコラム66 尿酸の排泄を促すカゼイン

 カゼインは牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品に含まれているタンパク質です。カゼインは腎臓に働きかけて尿酸の排泄を促します。この結果、高尿酸血症の改善につながります。現在、投薬を受けている方でも乳製品を通してカゼインを摂取するとよいでしょう。

 コーヒーに含まれるクロロゲン酸というポリフェノールは尿酸値を下げる作用があり、1日コーヒーを4杯以上飲むと痛風発作を半分ぐらいに抑える作用があるとされています。(ただし3杯以下では効果が殆ど無い。)カフェインに弱い方は、デカフェインのコーヒーを飲むのがよいですね。
 
 血中の尿酸値のうち、食事によるものは2割、身体で作られる内因性のものが8割とされており、食事制限だけではなかなか下がりにくいことが分かっています。

 
本日のコラム390 ピロリン酸カルシウム沈着症(偽痛風、Crowned dens症候群、石灰沈着性頚長筋腱炎、椎間板性偽痛風)

 ピロリン酸カルシウム沈着症は、関節軟骨内に沈着し時として関節内に放出され炎症反応を起こし発症します。高齢者に発症し、レントゲンで関節内に石灰沈着を認めます。急激に発症することが多く、変形性関節症や化膿性関節症などを鑑別を要します。

 診断は、関節液内のピロリン酸カルシウムの同定で、次いでレントゲンで関節内の石灰化を確認します。ただし、ピロリン酸カルシウムが沈着していても、ほかの疾患のこともあるので注意が必要です。石灰化=カルシウムの沈着ですが、症状がこれから来ていると短絡的に考えないようにします。

  関節内のピロリン酸カルシウムの沈着は、40歳以下ではほとんど無く、55歳以降、60−75歳で10%、80歳で30%と言われています。臨床症状を伴わないもの、急性炎症を起こしているもの、慢性の炎症のものがあります。

 炎症が生じる機序は不明ですが、関節軟骨内に蓄積したピロリン酸カルシウムが関節内に放出され、好中球により貪食されることによって起こる自己炎症性反応とされます。

 高齢者に多く、性差がない、膝関節などの大関節に多く発症、さらに発熱や倦怠感などの全身症状を起こすことが、痛風と異なる点とされています。高齢者で重症感もあり化膿性関節炎などと鑑別が必要。複数の関節に同時、また数日後に別の関節に起こることがあります。

 検査所見として、硝子軟骨内に線状の高エコー像(痛風は軟骨表面に高エコー)。X線で軟骨内石灰化。CRP高値、赤沈亢進。関節液は黄白色に混濁し、顕微鏡検査でピロリン酸カルシウムの結晶を認めます。(レントゲンで点状もしくは線状の軟骨内石灰化+顕微鏡で平行六面体の結晶 2点が揃えば確定、一点のみは推定

 治療:局所の冷却・安静、関節液廃液、長時間作用型のステロイド注入。NSAIDs。
 
   
 本日のコラム391 CPPD(ピロリン酸カルシウム沈着症)

 ピロリン酸カルシウムは、関節軟骨内に沈着することが多いが、靱帯、腱、線維組織などにも沈着し症状を呈することがあります。代表的なものとして、 Crowned dens syndrome(CDS)、石灰沈着性頚長筋腱炎、椎間板偽痛風があります。

 いずれも知っていないと分からない疾患です。

 1.Crowned dens症候群
 軸椎歯突起周辺にCPPDが沈着して炎症を起こします。高齢者、頚部痛、発熱、頚部硬直、亜急性〜急性疾患 頸の回旋で疼痛、血液炎症反応高値、NSAIDs、ステロイドが著効。石灰沈着性頚長筋腱炎とのDD目的も兼ねてCT。

 2.石灰沈着性頚長筋腱炎
 頚部痛、頚部運動痛、嚥下痛、30−60歳、発熱軽微で炎症反応は高炎症反応が無いことも。咽後膿瘍、硬膜外膿瘍などが鑑別診断として必要。DD:頸椎CT、頸椎MRI、咽頭部痛はほぼ必発。

 3.椎間板偽痛風
 高齢者、外傷機転なし、激しい腰痛、発熱、高CRP、MRI(T1ISO、T2high)、DD化膿性椎間板炎、確定診断は椎間板穿刺必須。吸引できないときは生食数mlを注入し吸引。(培養検査も必須)治療はNSAIDsで劇的に改善。椎間関節内や椎間関節嚢腫内に起こると腰痛に加えて坐骨神経痛が生じることがある。椎間板線維輪石灰化を認めないことも多い。
 
 
本日のコラム563 偽痛風

 ピロリン酸カルシウムの化合物が関節内に蓄積して炎症を起こすと痛み、腫れなどの通風に似た症状がでます。痛風は尿酸の結晶が蓄積します。これらを合わせて、結晶誘発性関節炎にカテゴライズされます。いずれも痛みは強く、下肢なら歩行困難となります。治療法は、発作時はNSAIDsなどの消炎鎮痛剤を使用します。

 超音波で関節軟骨に結晶が沈着しているのが見えることがあります。痛風は軟骨表面に、偽痛風は軟骨内にいずれも層状に蓄積します。



右上の超音波画像で関節軟骨の上にもう一層結晶の沈着があり二重に見えています。