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整形外科 外科 リハビリテーション科
肉離れ  pulled muscle

 大人でスポーツをやっている人なら肉離れになったことがあると思います。(子供の肉離れは基本的にはありません。)文字通り筋肉の線維が断裂した状態を肉離れと言いますが、少し用語の混乱がみられます。

 運動時に伸展した状態で屈曲する力が強く働くと筋繊維が断裂します。その程度により、ほんの少しのみ痛みとつっぱり感のみ出るものもあれば、完全断裂してひどく出血するものまであります。現在、日本で使われている肉離れはある程度筋肉線維の断裂が生じ腫れと痛みをそこそこ感じるものを指しています。

 部分断裂に加えて血腫を形成したものも肉離れに含めます。少し前までは肉離れは血腫を形成せずに部分断裂を起こしていない状態を指していましたが、肉離れと部分断裂との境界がはっきりしていませんでした。

 こういった断裂を伴う肉離れは治療期間が少し長引いて膝より上で二ヶ月、膝より下で一ヶ月ほどかかります。はっきりとした断裂がなく少し筋肉が張って違和感がある程度なら1週間程度で改善します。

 完全断裂は4か月ほどかかりますし、手術が必要なこともあります。

 受傷時にどれだけしっかりケアしたかで治療期間が大きく異なります。特に受傷直後から内出血を予防するために圧迫しておくと治りが早いです。血腫が形成されると瘢痕化して筋肉も硬くなり動きも悪くなりますので要注意です。

 受傷後、素早いRICEが必要です。

 治療は痛みと腫れ、断裂の程度によって異なります。早期はRICEをおこないます。必要に応じて松葉杖による免荷、固定などを行います。少し落ち着いてくればリハビリを開始します。リハビリメニューに関しては個別にその都度、作成し修正しながら行います。
 
肉離れ

 奥脇のMRIによるハムストリング肉離れの重症度分類

 TypeI   :出血型 出血所見のみ。腱・腱膜に損傷無く、筋肉内または筋間(筋膜)の出血 
       保存治療、競技復帰は1-2週間

 TypeII  :筋腱移行部損傷型 筋腱移行部での損傷もしくは途絶像 
       保存治療、競技復帰は4-12週間(平均6週間)

 TypeIII :筋腱付着部損傷型 付着部付近での腱性部断裂、または腱付着部での裂離損傷 手術も考慮
       12週以上

 頻度はI,IIが同程度で、IIIは数%。

 Typeの判別には、受傷直後のストレッチ痛が決め手となります。明らかなストレッチ痛があれば、II以上が疑われます。MRIは確定診断に有効で可及的にMRIを行うようにします。

 保存的治療はTypeI,IIに対して行われますが、スポーツの復帰期間が大きく異なります。TypeIIでも受傷3週間ほどで痛みやストレッチ痛が改善してきますが、損傷した筋腱移行部の再構築は十分ではなく、この時期に運動復帰すると再断裂を起こし易く、TypeIとTypeIIの判別はしっかりと行う必要があります。可能であればMRIを行います。MRIは受傷24時間以内に行う方が、受傷程度、範囲を明確にしやすいとされています。
 
 肉離れはハムストリングが40%と多く、下腿三頭筋が次いで多く見られます。若者はハムストリングの損傷が多く、中高年は下腿三頭筋に多いとされます。

 ハムストリングの損傷は、陸上などの疾走時の損傷は遠位に多く、転倒やバレエ、ダンス、チアリーディング、新体操などの筋肉の生理的な限界を超える張力がかかる場合は坐骨結節近傍で起こりやすい。前者をスプリントタイプ、後者をストレッチタイプといい、ストレッチタイプの方が治療に時間がかかるとされています。

■治療

 受傷直後から48時間(急性期)はRICEを行います。(局所の安静、アイシング、圧迫、患部挙上)
 血腫が液状であれば、穿刺し吸引します。穿刺吸引時に生理食塩水を少量注入して吸引しやすくする方法もあります。液状である期間はとても限られています。多くの場合はすでに凝固して寒天状になっています。出血が塊では無く、びまん性に筋肉内に広がるケースでは、骨化性筋炎を起こし易いと言われています。びまん性出血の場合は、吸引は困難ですので保存的に経過をみます。早期に無理な可動域訓練を行うと骨化を促進しますので愛護的な治療が必要です。

 ・一部の医療機関では凝固して吸引が困難と判断されるものに対して、ウロキナーゼを注入し1−数日後に再度穿刺する血腫溶解穿刺吸引法を行っています。一般的な普及はしていません。(保険外治療)・・・当院では行っていません。

 奥脇の分類でTypeIIIは手術も考慮します。ハイアスリートの場合で、併走筋での代償が効かない場合、筋出力の比重が高い腱性部での断裂、付着部損傷(大胸筋遠位付着部損傷、ハムストリング近位付着部の総腱損傷)などは手術を検討します。(半膜様筋腱のみの近位付着部損傷は保存的でも可。半腱様筋と大腿二頭筋長頭腱の共同腱のIII度損傷は手術が必要となることが多い。両者の鑑別は、前者がSLR(straight-leg-raising test)テストで患肢の方が上がりにくく、後者は健側より抵抗なく上がる)
 
*鼡径部痛症候群の一部が腸腰筋の肉離れで生じていることがあります。発症早期にMRIで診断します。2-3週間経つとMRIで発見できないことも多いようです。

■MRIにおける治癒課程の変化

 TypeI,IIは保存的に治療。

 Phase1:受傷〜血腫の吸収、消退→損傷筋の安静
 Phase2:線維性瘢痕組織形成と腱性組織の再生→自動でのストレッチと無負荷もしくは自重までの求心性収縮
 Phase3:力学的強度の回復:他動のストレッチング〜求心性収縮負荷〜遠心性収縮負荷
 〜治癒

 中嶋によると、上記Phase1,2,3はほぼ等間隔で一週間程度で血腫が消失していれば、Phase2=1週間、Phase3=1週間の計3週間、Phase1が三週間要した場合、計9週間の治療期間を見込むとしています。

■復帰の目安

 Askling -test 臥位で患肢を急速に挙上させるテスト 

 参考:中嶋耕平 肉離れと筋打撲 MB Orthop.28(10):153-161,2015.
 
   肉離れ 超音波像

 断裂の横断像 円形に筋繊維のエコーに加えて低エコーを認めます。