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整形外科 外科 リハビリテーション科

疲労骨折 stress fracture

 疲労骨折は運動等による応力が骨へのストレスを与え徐々に骨折してくる状態をいいます。通常の骨折は瞬間的に大きな力が加わって瞬時に起こりますが、疲労骨折はより小さな外力によって骨の微小な損傷が繰り返されて起こります。例えとして「針金を何度も曲げていると折れてくる。」という説明をしています。

 どの骨にでも生じる可能性がありますが、スポーツの種目によって特定に部位に起こりやすい傾向があります。同じ動作を繰り返すことによって生じます。

 クラブ活動で同じメニューをこなしても大丈夫な人と疲労骨折する人に分かれます。練習メニューが過度であると発症率が上がります。部活での練習メニューはこういった障害が発生する率を抑えるように適正な量にする必要があります。

 個々の発生要因としては、身体の柔軟性、フォームの乱れ、体重、靴や路面の問題などがあります。やはり適正なフォームが崩れると体への負担が大きくなり疲労骨折が起こりやすいです。グランドコンディションに関しては、よく走り込んだ軟らかい土なのか乾燥して固まった土なのか、またアスファルト等の硬い路面なのか、そういった違いで負荷が違ってきます。

 シューズは上級者用の軽く薄いものは障害が出やすいです。初心者は特に初心者向けに作られたものを履くと良いでしょう。

 個々の問題として、扁平足や凹足など足の裏のアーチが変形していると起こりやすいです。また女性の場合、無理なダイエットで骨量が減り骨が脆弱になって起こることがありますので、適切な食事を摂ることも大切です。

 治療の原則は、痛みを起こした運動は控えることです。痛くない動作は可能ですが遷延治癒、偽関節、完全骨折になったものはギブス固定や免荷、場合によって手術が必要です。

 運動再開の目安は疲労骨折部を押しても痛くないこと、レントゲンで骨折が改善していること、ホップテストなどの負荷テストで痛みが出ないこと(上肢や体幹では原因動作で痛みが出ないこと)、これらを満たす場合に少しずつ負荷を開始します。

 自己判断で痛みのでる動作を行ったり、中途半端にな運動の休止や運動を再開したりすると治療の遷延化や偽関節、完全骨折になってしまうので注意が必要です。

 特に部活ではさまざまな間違った情報が流れます。これは好意的に教えてくれる情報なのですが、他のケースと同じとは限りませんし同じ部位の疲労骨折でも治り具合に差が出ることもよくあります。



 疲労骨折まとめ

 個々の部位によって対処法や治療期間が異なりますので注意が必要です。(参考 MB orthop Vol25 No13 2012)

1.疲労骨折の部位別治療期間の目安
 尺骨肘頭疲労骨折 3-6ヶ月
 尺骨骨幹部疲労骨折 1-2ヶ月
 第2中手骨疲労骨折 1-2か月
 有鈎骨鈎疲労骨折 偽関節多い。トップレベルの選手は切除手術。新鮮例:4-6週間のギブス等の固定

 肋骨疲労骨折 第一肋骨:1-2ヶ月の局所安静、上肢の挙上中止 2-3ヶ月で復帰目標 頻回に上肢を挙上する種目で起こる。ゴルフ骨折(利き腕と反対側の4-7肋骨に多い。2-4週安静、その後ストレッチ、2-3ヶ月後から原因動作を開始。)

 恥骨疲労骨折 恥骨下枝に多い。レントゲン、MRIで確認できたらただちにランニング等の運動を休止します。2-4ヶ月ランニング等の中止または制限で骨癒合が得られることが多い。痛みが無くなったらジョギングの開始。positive standing sign 陰性化が重要。(患肢での片脚立位で他足を上げてズボンをはく動作で患側鼠径部あたりに痛み)


 大腿骨疲労骨折 保存2-4ヶ月 完全骨折 手術

 膝蓋骨疲労骨折 4-6週 2-4ヶ月後復帰

 下腿骨疲労骨折 リンク先参照
  脛骨疾走型疲労骨折 1-2ヶ月ランニング、ジャンプの中止
  脛骨内顆疲労骨折 1-2ヶ月休止
  足関節内果疲労骨折 6-8週間運動の中止
  脛骨跳躍型疲労骨折 難治性 3-6ヶ月保存治療、もしくは早期に手術を考慮
  腓骨疲労骨折 1-2ヶ月


 足舟状骨疲労骨折 ギブス固定6-8週間+完全免荷または完全免荷+杖(約三週間) 10-12週でジョグ開始
 踵骨疲労骨折 経過とともに帯状骨硬化像 痛む動作の休止 安静、免荷
 中足骨疲労骨折 完全骨折はギブスまたはシーネ 歩行時痛が強ければ免荷 完全骨折で無ければ4-6週でジョグ開始 第五中足骨Jones骨折は難治性、再発しやすい
 
母趾基節骨疲労骨折 地面を蹴る種目 女子で外反母趾例に多い 初期例では外反、背屈しないように固定 転位例は螺子固定
 
 
上肢の疲労骨折

 疲労骨折はスポーツ障害としてよく起こります。体重がかかる下肢に多く見られます。なかでも足背の痛みが出る中足骨、脛骨がたびたび痛くなって来院されます。上肢でも繰り返して力が加わると疲労骨折を起こします。第一肋骨疲労骨折、有鈎骨鈎疲労骨折、肘頭疲労骨折、舟状骨疲労骨折が有名です。

 第一肋骨疲労骨折は斜角筋群が繰り返して収縮して起こります。ウエイトリフティング、野球、剣道、柔道、チアリーディング、新体操など上肢の挙上運動を繰り返すことによって発症します。この疲労骨折は頭の中に疲労骨折かも知れないと思うことが重要で、何も考えないと見逃してしまいます。遷延治癒や偽関節となると厄介です。症状は頸部から肩にかけての痛みです。頸部疾患や肩疾患と誤診されることが多いです。初期は運動を控えた保存的治療を行います。化骨が大きくなったり、偽関節になると腕神経叢を圧迫し筋力低下・萎縮、痛み、しびれなどが出ることがあります。保存的治療で効果が無い場合は、手術を考慮します。腕神経叢への圧迫が高度の場合は、第一肋骨切除術を行います。

 有鈎骨鈎疲労骨折はバット、竹刀、ゴルフクラブ、テニスなどのラケットの端が直接的に有鈎骨鈎を繰り返し圧迫して起こります。保存的治療は時間がかかり骨癒合しにくいので、手術的に骨片の摘出や骨接合術が行われます。

 肘頭疲労骨折は投球動作による障害です。骨端線閉鎖前は骨端線の離開、閉鎖不全となり、成長し骨端線が閉鎖した後は疲労骨折となります。治療は投球動作を禁止し、身体の固さを改善するストレッチなどを行います。

 舟状骨疲労骨折は手関節を背屈する動作を繰り返すことによって軸圧が加わり生じます。当初は痛みだけのことも多く、放置して偽関節になることも多いです。

 いずれの疲労骨折も初期症状は痛みのみで、レントゲン撮影では所見を認めないことが多いので早期診断にはMRI、CTを行います。また経時的にレントゲン撮影を行うようにします。
 
 
 足関節内果疲労骨折

 足の疲労骨折は足関節内果、舟状骨、踵骨、第5中足骨基部、2−4中足骨骨幹部、第1MTP種子骨、母趾基節骨などに起こりやすいです。

 疲労骨折ははっきりした受傷機転が無く徐々に痛んできます。疲労骨折部は腫れていたり押さえると痛みがでます。昔は行軍で起こることもありましたが、今はアスリートが中心です。

 疲労骨折になる人は基本的に頑張り屋さんで一所懸命に運動に取り組んでいる場合がほとんどです。運動を続けたいために無理をすると悪化します。

 足関節内果骨折は足関節の腫れや痛みが出ます。レントゲン(前方に向かう斜骨折が特徴)では早期の場合、所見が無いこともありますので疑われる時はMRIを行います。スポーツ復帰までは保存的治療で4-5ヶ月、手術療法で2-3ヶ月かかりますので早期復帰を望む場合は手術を選択します。(内固定材はスポーツ活動をする限り抜釘しないのが原則)また遷延治癒や偽関節になった場合も手術を考慮します。

 
 
 第一肋骨疲労骨折

 上肢の運動を繰り返すと第一肋骨が疲労骨折を起こします。ウエイトリフティング、野球、剣道、柔道、新体操、チアリーディングなど上肢を挙上する動作を繰り返す運動で起こりやすいです。症状は頸部から肩にかけての痛みを訴えます。また化骨が出来て膨らむと腕神経叢を圧迫して脱力やしびれが起こることがあります。

 治療は初期はスポーツ活動の制限をし局所の安静を保ちます。遷延した場合は低出力パルス超音波療法(LIPUS)が効果的です。化骨が大きくなり腕神経叢への圧迫が高度の場合は切除手術も考慮します。
 
大腿骨頚部疲労骨折

 比較的まれ。軍人やアスリートなどがオーバーユースにより起こることがあります。初期はレントゲンで写りません。MRIが有効です。治療は転位の無い圧迫型(頚部の内側部分)は基本的に保存療法を行います。ベッド上安静から免荷歩行を行います。手術は、転位のある場合、上方から下方へ骨折線がつながっているケース、牽引型(頚部の上方部分)で内固定を行います。
 
 下肢の疲労骨折

 脛骨疾走型疲労骨折 ランニングをする種目であればいずれでも起こります。中高生で6割を占めますが、小学生での報告例もあります。初期には、レントゲンの正面・側面像では描出されにくいので斜位像を追加します。欄イング・ジャンプの中止で復帰までに約2ヶ月、長くとも3ヶ月以内。

 脛骨跳躍型疲労骨折 難治性の疲労骨折です。バレーボールやバスケットなどジャンプを繰り返す種目でみられます。脛骨前面中央に圧痛が出ます。ランニングやジャンプなど3-6ヶ月ほど中止し経過をみますが、なかなか治りにくく、経過が長く、早期復帰を望む場合は髄内釘固定や骨移植術を行いますが、再発例、難治例が多いとされています。

 腓骨疲労骨折 跳躍型は近位、疾走型は遠位と言われていますが、ランニングでも近位には発生します。1-2ヶ月のランニングやジャンプの中止。

 中足骨疲労骨折 骨幹部に起こるものは1-2ヶ月、運動の休止で改善。第5趾中足骨近位のJones骨折は難治性で手術を要することが多い。また第2、第4中足骨基部に起こる疲労骨折も難治性で手術を要することもあります。


下肢の疲労骨折2

 大腿骨疲労骨折 長距離選手に多い。頚部、顆上部、骨幹部。痛みの部位が特定しにくい。2-4ヶ月で復帰。完全骨折や転位例は手術。

 膝蓋骨疲労骨折 膝を深く曲げてジャンプする競技で起こりやすい。バレー、バスケット、ハンドボールなど。初期はレントゲンで分かりにくく、MRIやCTが有効。転位例、遷延治癒例は螺子固定などを行う。

 足関節内果疲労骨折 踏み込みやジャンプの動作で内反、外反するサッカー、バスケット、フィギュアスケートなどでみられます。レントゲンでは分かりにくく、MRI、CTで早期診断します。症状に応じてギプス、免荷、負荷のかかる運動の休止します。関節面の骨折線は消失しにくく運動再開後、再発することもあります。転位例、遷延治癒、再発は螺子固定を行います。

 足舟状骨骨折 陸上やバスケとボールなどの運動で足背部痛が慢性的に続く場合は疑うようにします。レントゲンでは写りにくくCT,MRIを行います。転位の無い新鮮例は4-8週間の免荷。完全骨折や遷延治癒、転位例は骨せん孔、螺子固定。偽関節は掻爬、骨移植 、螺子固定。難治性。
 
 
 足舟状骨疲労骨折 手術適応 ギャップのある完全骨折、遷延治癒、偽関節、早期復帰を希望するケース
 
 スポーツ損傷としての仙骨疲労骨折

 仙骨は脊椎の一番下部で骨盤の後面を形成する骨です。仙骨疲労骨折は高齢者を中心とした脆弱性骨折、出産前後、腰仙骨固定術後、スポーツ障害として生じるものがあります。

 殿部痛、坐骨神経痛、仙腸関節痛、腰痛などの症状が出ますので腰部疾患や仙腸関節炎との鑑別をしっかりと行います。仙骨疲労骨折は通常、レントゲンでは所見がなくMRIを行う必要があります。

 治療は原因となった運動の休止です。仙骨部に負荷のかかる運動は休止し痛みが生じない上肢や体幹上部のトレーニングを行うようにします。数週間から数ヶ月程度で痛みが改善し復帰できるようになります。
 
 脛骨跳躍型疲労骨折

 脛骨の跳躍型疲労骨折は、難治性の吸収型疲労骨折であり、仮骨形成に乏しく、治療には長期間を要します。

 骨形成型の疾走型疲労骨折とは異なり、6週間程度の運動制限では治癒しません。短期間の局所安静で痛みは改善し、レントゲン所見にも大きな変化が出てこず、安易に運動を再開すると更に悪化します。

 慢性化した例や早期復帰をめざす場合は、髄内釘挿入を行います。一般の脛骨骨折と異なり骨折部の固定性、髄内血流よりも、伸張ストレスを回避するために髄内釘を骨皮質に密着させます。横止スクリューは不要です。

 症状はランニングのストップ時やジャンプの着地時の痛みが中心で運動強度が上がれば痛みも増強します。症状が悪化すると階段昇降や起床時、動き始めの痛みが強くなります。

 初期は2週間程度の安静で症状が改善するため、受診すること無くそのまま運動を自己判断で再開してしまうケースが多いとされています。

 慢性化してしまうと保存療法には抵抗性で4ヶ月の運動休止を行っても治癒率は50%以下とされています。また経過中に完全骨折となることがあります。

 慢性例では脛骨骨幹部前方の痛み、腫れ、圧痛があり、レントゲンで嘴状の仮骨形成とBlack−lineと呼ばれる骨吸収像もしくは明瞭な骨折線を認めるようになります。初期にはレントゲンの変化がみられないので注意が必要です。

 スポーツの種類としては、バレーボール、バスケットボール、クラッシック・バレエに多くみられ、その他、陸上、体操、ハンドボール、野球、テニス、チアリーディング、バトミントン、アメフト、卓球でみられた。(関東労災病院における報告)

<治療方針>

 保存的治療は完治が困難なことが多い。

 初期例:発症1ヶ月程度の初期であれば、保存療法が有効。ランニングなどの下肢に負荷のかかる運動は6週間休止します。ハムストや殿筋の筋力強化は行います。徐々にランニングを開始しますが、ジャンプ動作や急激な力がかかる動作は控えます。3ヶ月程度、運動強度の制限を行います。

 慢性化例:二か月程度の運動制限を行い、殿筋とハムストリングの強化で治癒例もあるとされています。骨折部が深部に進行することあり。

 手術:運動中止が困難で確実にスポーツ復帰を期待する場合や完全骨折の危険性が高いもの、長期罹患例は手術の対象となります。髄内釘はリーミング径より0.5mm細い髄内釘を挿入し、骨皮質との密着をはかります。横止スクリューは使用しない。

 後療法:手術翌日より荷重歩行可能。一週間程度で松葉杖は不要となります。術後一週間から自転車エルゴメーターを開始。3−6週間して挿入部の刺激が緩和すれば、レッグエクステンションやハーフスクワットなどの筋トレを行います。6週間以降、創通が軽度となれば、ランニングの許可。術後10週後に筋力測定実施し、健常比比80%以上の筋力であれば、徐々にスポーツ復帰を行います。3ヶ月より競技復帰に向けてトレーニングを高め、4−6ヶ月で復帰をめざします。