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ヒアルロン酸の関節内注射

 当院では、以下の理由により早期の変形性関節症に対して、ヒアルロン酸の関節内注射を推奨しています。

 まずはじめによくテレビの通販番組でみられる経口摂取のヒアルロン酸は、膝への効果はありません。これは消化管で分解されるために関節には届かないからです。ヒアルロン酸は直接関節内に注入して初めて効果が出ます。

 ヒアルロン酸はもともと関節内に軟骨から分泌され半減期は12時間です。関節内でのヒアルロン酸の働きは、氷の10倍以上滑りやすくなり軟骨を摩擦から保護し、更には再生を促進します。加齢とともにヒアルロン酸の分泌は減少し、徐々に擦れやすくなり軟骨がすり減り、破壊されていきます。

 この破壊された軟骨の断片はさらに関節内の炎症を引き起こし、滑膜が反応して炎症性の水が溜まるようになります。炎症性の水は粘度が低く,関節を保護する作用はありません。

このようにして、「加齢→ヒアルロン酸分泌減少→関節軟骨破壊促進→変形性関節症の進行」といった流れができあがります。

 この流れを断ち切るのにヒアルロン酸は有効とされています。

 数年前、米国で変形性膝関節症に対するヒアルロン酸は有効ではないとする発表が成されましたが、このリサーチは重症の変形性膝関節症に対して行われたもので、日本のように軽中等症に対するものではありません。

 日本での研究では、早期の軽度〜中等症までの変形性膝関節症に対して、ヒアルロン酸の関節内注射は,関節の炎症を改善し、水が溜まるのも減少する効果があるとされています。

 従って、膝のヒアルロン酸注射を怖がらずに早期より積極的に上手く使っていくことが重要と考えます。
 
  
 ひとくちにヒアルロン酸と言いましてもいろいろな種類があります。


精製ヒアルロン酸ナトリウム3999
hyaluronate sodium

★アルツ Artz(生化学)
★スベニール Suvenyl(中外)
 関節注:25mg/2.5mL/A(V)
 ディスポ関節注:25mg/2.5mL/キット

ヒアルロン酸Na(沢井 [注]1%,シオノ [注]1%,武田テバ [注]1%,日新 [注]1%,ニプロ [注]1%),
ヒアルロン酸ナトリウム(日医工 [注]1%),
アダント(Meiji Seika [注]1%),
アドマック(武田テバ [注]1%),
グリオロン(日本臓器 [注]1%),
ヒアルトーワ(東和薬 [注]1%),
ヒアロス(マルホ [注]1%),
ヒカミロン(鶴原 [注]1%),
ヒュースレン(東和薬 [注]1%),
プリーラ(高田 [注]1%),
ルミステロン(日新 [注]1%)

 ★マークは先発品、それ以外は後発品(ジェネリック)です。おそらく後発品はもっとあると思われます。

 このなかでどれを使うかは、医師の裁量となります。わたくしは、いずれの薬も先発品を使うのを原則としています。