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超音波断層撮影(エコー)



 
 産婦人科、心臓内科、消化器内科など、さまざまな分野でエコーは先駆して使われてきました。そういった流れから20年ほど遅れて整形外科分野でも少しずつ普及してきました。とは言え、今頃、話題になっているのですから、やはりかなり遅れていることは否めません。

 普及しない最大のポイントは、「導入しても読影できない。」に尽きます。ちょっと勉強したぐらいでは全く読めません。どのような画像診断であっても、まず正常像を頭に叩き込む必要があります。ところが、超音波の場合、いま映っているのがどの部分なのかがはっきりしないのです。少しズレると教科書の画像とは大きく異なってしまいます。教科書はほとんどが静止画ですが、実際のエコーはリアルタイムで動く画像です。そのギャップは大きいのです。

 加えて、整形外科では、およそあらゆる体表からエコーを行いますので、頭に入れる正常像は星の数ほどあることになります。それゆえにもう一つ整形外科分野では普及しないのだと考えています。

 ところが、実際に診療を行う上では、エコーはとても有用なツールとなっています。レントゲンはそもそも骨の状態を知るものですし、軟部組織は写りますがそれほど情報はありません。エコーは骨の表面で跳ね返りますので骨の中の状態は分かりませんが、皮膚〜軟部組織〜骨の表面までは極めて情報量が豊富です。すなわち、外傷や疾病でレントゲンだけの診断を行うと骨以外の異常を見逃す可能性が高くなります。エコーだけでも骨の中の状況は分かりません。レントゲンとエコーを組み合わせると骨の中〜軟部組織〜皮膚まで全てが検索できることになります。

 エコーが現れる30年前の整形外科では、レントゲンを撮影して「骨は大丈夫。」で済まされてきましたが、今はそうはいきません。骨折の有無に加え靭帯の損傷程度など軟部組織の状況をエコーで評価して治療に当たらないといけません。また、裂離(剥離)骨や小さな骨折はエコーでの描出の方がレントゲンより優れていることがあります。

 例えば、肋骨骨折ではレントゲンでの診断率は50−60%でしかなく、エコーでは85%とされています。それ以外にもレントゲンで写ってこない骨折もエコーで発見できることもよくあります。また皮下腫瘍はエコーでかなり診断できます。(もちろん確定診断は病理診断が必要です。)先日も、検診でガングリオンと診断された方は、エコーでは神経鞘腫でした。ガングリオンは確率的には高いですけど、きちんと診断しておくべきだと思います。

 触診で何でも分かるという「神の手」を持ってられる先生を除いて、普通の整形外科医ならやはり運動器のエコーは必須だと考えます。

 かく言うわたくしの腕前はどうかとお知りになりたい方も多いかと思います。わたくしが研修医の頃、指導してくれた先生がまだ「星占い」程度の荒い画像であった頃からエコーをされており、、その先生から徹底的に教え込まれました。このことは確かに運が良かったと言えますし、未だにその先生には深く感謝しています。その後、小児の上腕骨顆上骨折の超音波ガイドピンニング法のエコーを担当したり、脊椎後方除圧固定後の硬膜や脊椎転移腫瘍術後の動態エコーなどを行っていました。このようにエコーに接してうん十年、なかなかそういう経験を積んだものは数少ないと自負しています。