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制作開始しました。(2015/05/20)

池田医院へようこそ
信頼とまごころの医療 からだにやさしい医療をめざして

整形外科 外科 リハビリテーション科

運動器の超音波画像診断
 はじめに

 このコーナーは医家向けに作成しています。参考にして頂ければ幸いです。

 超音波断層診断は30年以上前から内科、外科、婦人科領域で広く用いられてきました。近年、四肢や体幹など運動器に対する超音波断層診断も遅ればせながら徐々に普及し、現在では四肢・体幹の外傷や疾患の診断、経過観察に欠かせないツールとなっています。

 「レントゲン撮影のみを行って大丈夫」といった昔ながらの診療スタイルは通用しない時代になっています。

 一方、超音波断層撮影は読影が難しくすぐに役立つとは限りません。最初は何が写っているのかオリエンテーションがつきにくいです。

 そこで当院の症例をご紹介して診療の一助にして頂ければと思いこのコーナーを作成しました。少しずつ充実させていきますのでよろしくお願いします。

 本格的に学んでみたい方は以下の専門書を推奨します。

・Ultrasound of the Musculoskeletal System (Medical Radiology / Diagnostic Imaging)
Baert, A.L., Abdelwahab, I.F., Derchi, L.E., Rizzatto, G., Valle, M.他

・Musculoskeletal Ultrasound: Echo anatomy & Scan technique (English
Edition) Hiroshi Minagawa, MD, PhD, Kevin KH Wong, FRCS(Orth), FHKCOS

・Fundamentals of Musculoskeletal Ultrasound: Expert Consult- Online (Fundamentals of Radiology)
Jacobson, Jon A.

・Musculoskeletal Ultrasound, An Issue of Ultrasound Clinics (The Clinics: Radiology)
Gaitini, Diana

初心者の方は以下を推奨します。

・超音波でわかる運動器疾患−診断のテクニック 皆川 洋至 (著) 皆川先生は運動器領域における超音波検査のパイオニアです。
・分かる運動器エコー ビギナーズガイド 編者:高橋周、松崎正史、山口睦弘 初めての方にお勧め。
・プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論 運動器系 超音波は解剖が3Dで分かっていないと読めません。
・CT/MRI画像解剖 ポケットアトラス3 脊椎・四肢・関節 解剖を3Dで理解するのに役立ちます。

 超音波断層撮影も含めて画像診断全般に言えることですが、まず正常像を学んでください。異常は正常が分からないと見つけることは出来ません。
 ランドマークとしては骨を描出させて行います。

 
本日のコラム58 腱症、腱付着症の超音波像

 腱に痛みが生じても、実際には組織学的に炎症所見に乏しく、変性が中心となっているために、腱炎、付着部炎とは言わずに腱症、付着部症と言い換えることになっています。臨床所見として疼痛、圧痛、腫脹があり、超音波でみると、肥厚し、fibrilllar pattern不整があり、またカラードップラーでは、腱内や周辺脂肪織に新生血管が増生しています。

 <足関節周辺疾患の超音波像>

 アキレス腱症:アキレス腱とその下方にある脂肪性結合組織(kager's fat pad) 内への新生血管の増生を認めます。
 アキレス腱付着部症:腱部に同様の所見を認めます。
 後脛骨筋腱機能不全:成人扁平足の病因の一つ。腱部に同様の所見を認めます。
 後脛骨筋腱付着部症:停止部は舟状骨底部にあり、その後足底に分枝し楔状骨、中足骨基部に停止します。有痛性外脛骨との鑑別は臨床的には困難。MRIで外脛骨障害は骨髄浮腫を認めます。腱付着部症は超音波で判断。
 腓骨筋腱脱臼:外傷を契機に、上腓骨筋支帯が外果表面より剥離し、仮性嚢が生じ、腓骨筋腱が仮性嚢内へ外果を乗り上げるように脱臼します。脱臼の再現性がない場合は、上肢筋支帯の剥離(仮性嚢)の有無を確認します。

新鮮肋骨骨折1
 肋骨表面のラインが連続性を保っておらず、途中で陥凹して左側からノッチが入ってみえます。骨折部の上方(表層)は低エコー領域があり出血が生じているものと判断できます。

 骨折がはっきりしなくとも肋骨表層の出血部位を探しだしてから骨折の評価をすると見つけやすい。

 ただしいつもこんなに分かりやすいこともなく、肋骨表層の出血もほんの少しのこともよくあります。


 この例ではレントゲン3方向を行ったが、まったく描出されませんでした。

新鮮肋骨骨折2

 この例もレントゲン撮影では描出されませんでした。超音波検査を行うと圧痛部に一致して肋骨表面でのずれと表層側に低エコー領域が上方にわずかに突出しているのがわかります。


新鮮肋骨骨折3

 この例はレントゲンで描出されました。肋骨表面の連続性が絶たれています。血腫はほとんどありません。


 描出のコツは圧痛点を良く探り真上からスキャンすることです。

 のう胞(のう腫)

 この例では筋内に大きな嚢胞がみられます。カラードップラーでは内部に血流無く嚢胞と診断しました。

 嚢胞上部は偽のエコー信号でやや明るくなっています。


 血腫の場合はこれほど内部エコーが均一ではありません。高エコーと低エコーが混ざります。相当期間が経った血腫は低エコーとなって嚢胞状を呈することがあります。
 
 のう胞(のう腫)2

 袋状になった内部に液体が入っているので低エコー領域として表されます。

 中手骨頸部骨折

 背側の骨皮質が骨折部で不連続になっています。軟部組織の大きな損傷は伴っていません。

 中足骨近位端での裂離骨折

 腱付着部で牽引され裂離骨折を起こしています。高エコーの骨片が本体から離れて描出されます。

内側腓腹筋の肉離れ

 ひらめ筋を圧排するように腫大しています。出血は認めません。

 大腿直筋の肉離れ

 筋繊維の走行に乱れがあり円形低エコー領域をいくつか認めます。

 ポイントは健側と比較すること、筋繊維の走行に乱れがないかをチェックします。


 重症度を判定し治療方針に反映させます。


強剛母趾

 母趾背屈時にMTP関節に痛みあり。背屈制限あり。レントゲンで基節骨から骨棘が出ています。

 超音波で診ると一目瞭然。健側に比べ患側は骨棘による高エコーを認めます。


アキレス腱滑液包炎

 骨性隆起は高エコーとして描出されます。


 足関節捻挫(前距腓靭帯損傷)

 患側は前距腓靱帯が分厚くなっています。また靱帯の下方に低エコー領域(血腫)の拡大を認めます。超音波検査では靱帯断裂の描出は皮下組織との信号の差が少なくて難しく、全体の腫れや出血等で判断します。



 レントゲン画像上、肘関節周辺骨折では関節内に出血して脂肪層を押し上げることによって間接的に骨折のあることが推察できます。

 このレントゲン画像サインを fat pad sign といいます。救急病院レベルですと時に見逃されていることがあります。

 後方のfat pad signは正常でも出ることがありますので左右の比較が必要です。

 超音波では高エコーの脂肪層を押し上げる血腫が見えます。


橈骨頭骨折

 橈骨頭を超音波で見ると一見、異常なく見えましたが、回内をさせると骨折部位が出てきました。超音波の利点は動的に見られることです。


 


 上腕骨近位端骨折

 レントゲンだと正面像、斜位、軸位などを駆使して撮影しますが、超音波だと全周を診ることができ、骨折のずれの程度や周りの軟部組織を診るのに適しています。

 手の腱交叉症候群

 前腕橈側遠位1/3あたりで母指外転筋腱・短母指伸筋腱と短橈側手根伸筋腱。長橈側手根伸筋腱が交叉します。手を使いすぎるとこの部位で擦れて腱鞘炎を起こします。

 大工仕事やPCなどの手作業が多い仕事で起こりやすいです。

 リスフラン靱帯損傷 

 靱帯が損傷による腫れで上方に圧排されています。

 つま先立ちをした状態で捻ると起こりやすい。レントゲンは立位で荷重をかけて行います。


大菱形骨結節骨折 

 レントゲンで結節部が二重になっており骨折と判断。超音波で確認。大きなずれはないが骨皮質の連続性は絶たれています。

膝蓋骨骨折

 骨折線に対して直角にスキャン。骨折部位で骨皮質の非連続となっておりギャップを認めます。


踵骨裂離骨折

 足背の捻挫により生ず。レントゲン撮影では最初描出されず超音波断層で見つかりました。同部を接線方向に再度撮影したのが下方のレントゲンです。骨表面に小さな骨片が浮いて見えます。

 レントゲンも超音波も基本的には二次元の画像です。またレントゲンは撮影枚数がせいぜい2−4枚ですので、このような小さな骨片は余程うまく接線方向で撮影できないと描出されません。

 その点、超音波断層撮影は多方向に動画で見ることが出来ますので特に皮膚から近い部位の裂離骨折は分かりやすいと言えます。

大腿四頭筋(内側広筋)血腫

 内側広筋内に低エコー領域を認めます。筋層内の血腫は経過時間によって低エコー→高エコー→低エコーと変化します。

 スキャンは筋繊維の構築の乱れを追うようにします。


石灰沈着性腱板炎

 急速な痛みと共に発症。肩が痛くて動かせないと来院。レントゲンでは所見無く、超音波で上腕二頭筋長頭筋腱内側に音響エコーを伴った高エコーを認めました。

 このようにレントゲンで石灰像がなくとも超音波では石灰像を認めることがよくあります。

 アキレス腱断裂

 軟部組織の状態を把握するのには超音波検査がダントツに優れています。レントゲンは骨傷の有無を見るために行います。


 ただし画像診断はあくまでも補助診断です。