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リハビリテーション科

 間違いシリーズ17 膝の水は抜くと癖になる?

 もはや都市伝説となってしまった感があります。巷では、「膝の水を抜いたら癖になるし、絶対抜かない方がいいよ。」と何ら根拠の無い話を耳打ちする人がいます。そう信じて言うだけにたちが悪く、拡散してしまってます。

 では、本当に膝の水は抜くと癖になるのでしょうか?

 まず答えを先にいうと、絶対に癖になることはありません。癖になるというのは迷信です。それは、水が溜まるメカニズムを理解すれば、一目瞭然です。水が溜まる原因は、関節内に何らかの炎症が生じて関節液が大量に作られるためです。水が溜まる疾患として変形性膝関節症が有名ですが、この場合、すり減った軟骨のかけらが遊離して関節液を産生する滑膜が炎症を起こし関節液を沢山分泌するようになります。この結果、生産と吸収のバランスが崩れて溜まるようになります。

 更に問題なのが、炎症性に溜まった関節液には炎症を引き起こす物質が多く含まれています。これらにより更に滑膜が刺激されて関節液が分泌されることになります。このような悪循環を繰り返すことによって関節液はたまり続けることになります。

 それでは、溜まった関節液が溜まらなくするには、どうすれば良いでしょう?まず炎症を抑える必要があります。これは消炎鎮痛剤が有効です。これだけですと、膝の軟骨がすり減る要因を改善できませんのであくまでも対症療法となります。膝の中に炎症物質を取り除くには穿刺して吸い出してやるのが効果的です。そのとき、同時に軟骨を覆って保護する作用のあるヒアルロン酸を注入します。加えて、膝が安定するように筋肉トレーニングや膝のストレッチを行うようにします。

 これらにより膝が安定して軟骨のすり減り抑えることにより、膝の炎症が引いてくれば水は自然と溜まらなくなります。ただ単純に水を抜くだけだとまた溜まって来る可能性がありますが、これらの治療を組み合わせることにより、膝を安定させて、水が溜まりにくい膝に改善させることが可能と言えます。

 逆に、水を抜くのを恐れて、溜まったままにすると炎症が継続して、変形が進行していくことになります。

 *炎症が軽度で水の溜まりもそれほどではない場合は、必ずしも抜く必要がある訳ではありません。ケースバイケースです。

 膝の水が溜まるのはある程度、変形性膝関節症が進行した中期以降に起こってくるとされています。このまま放置するのは、極めてよろしくないといえます。