アキレス腱滑液包炎
アキレス腱にはスムーズに動くように前後に滑液包という薄い膜があります。これが繰り返して刺激されると炎症を起こして中に液体がたまるようになり痛みます。
アキレス腱より外側にあるものをアキレス腱皮下滑液包炎、アキレス腱より深部にあるものを踵骨後部滑液包炎といいます。両方共にアキレス腱で擦れて発症します。悪化すると皮下に腫れができます。また踵骨も反応して隆起することがあります。
後ろから見ると踵に腫れができます。運動負荷で痛みが増強します。あまり擦れないようにヒールパッドを使用します。それでも改善しない場合は手術を考慮します。骨が隆起している場合はこれを削ります。手術からの復帰は四ヶ月ほどかかります。
アキレス腱~アキレス腱周辺の障害
アキレス腱実質の障害(アキレス腱症、アキレス腱周囲炎)
アキレス腱付着部の障害(アキレス腱付着部症、踵骨後部滑液包炎)
*アキレス腱症=アキレス腱炎、炎症よりも微細な損傷や小断裂によりアキレス腱実質内のの変性と退行性変性(瘢痕化、変性肉芽組織)が中心であり腱症と呼ばれることが多くなっています。
腱周りの炎症は繰り返す運動により微少な損傷が起こり、それを治すために線維化、瘢痕化が起こり変性していきます。急性期には強い炎症反応が起こり疼痛が生じることもあります。急性期には局所の安静とアイシング、消炎鎮痛剤の投与が行われます。72時間以上経って慢性化する場合は温熱治療や超音波治療を追加します。さらに体幹~下肢のタイトネスを改善させる必要があります。それには症状に応じたストレッチやトレーニングをします。
このようにして痛みが改善して十分な可動域を確保した上で運動を徐々に再開させます。痛みが無い=治ったと勘違いし自己判断で運動を再開し悪化することが多いので注意が必要です。痛みが改善しない場合は手術療法も考慮します。
アキレス腱症とアキレス腱周囲炎との鑑別法:腱症は足関節の屈曲・伸展で痛む箇所が移動するが周囲炎では移動しない。
アキレス腱症の治療
アキレス腱症の初期治療は少なくとも6ヶ月間、保存治療を集中的に行う。アスリートの場合は2-3ヶ月の保存治療で軽快しない場合は手術療法を検討します。原因の基本は下腿三頭筋収縮によるover useが原因となっており、アキレス腱への牽引ストレスを控えるようにします。
アキレス腱への負担を減らすために1cmほど踵部が高くなった足底板、下腿三頭筋の遠心性運動が有効であると言われており、足関節を最大屈曲~伸展を行うようにします。
ステロイドの局所注射は腱の脆弱性を起こすために推奨されない。アキレス腱症、アキレス腱周囲炎にヒアルロン酸の局所注射を行い効果的とする報告があります。(変性したアキレス腱とkager's fat padの間にヒアルロン酸と局麻剤を注入します。保険外)
アキレス腱滑液包、アキレス腱付着部炎
踵骨後部滑液包(踵骨とアキレス腱の間)、アキレス腱皮下滑液包炎
アキレス腱付着部症 insertional achilles tendinopathy
狭義のアキレス腱付着部症はアキレス腱付着部に骨棘を認めるものをいい、踵骨後部滑液包炎や踵骨皮下滑液包炎(アキレス腱皮下滑液包炎と同じ)とは区別します。
踵骨後部滑液包炎
踵骨の後部でアキレス腱前方に生じる滑液包炎です。踵骨上縁レベルでアキレス腱のすぐ前方に圧痛があります。治療は、保存療法が第1選択となります。NSAIDsや局所安静、アイシングが有効です。急性期以降は、アキレス腱の遠心性収縮運動(ステップを使って荷重をかけた足関節の伸展~屈曲)などを行います。ヒールをあげたときに、後足部の外がえしや回内の有無をチェックして矯正します。5-10mmのヒールリフトを目的として足底板も有効です。
超音波ガイド下にヒアルロン酸や局所麻酔薬の注入も効果があるとされています。ステロイド注入はリスクがあるため、余程のことが無い限り行わないようにします。(強い炎症に対し単発のみ)
手術は3-6ヶ月の保存療法に抵抗性の場合に考慮します。鏡視下にて踵骨後部の滑液包内の滑膜組織の切除と踵骨後上隆起の切除をします。
狭義のアキレス腱付着部症
アキレス腱付着部の痛みと圧痛が生じます。特に起床時に痛く、数歩で症状は緩和することも多いので、運動を繰り返すうちに悪化することがよくあります。治療は、保存療法を第1選択とします。炎症が強い時期は、消炎鎮痛剤、局所安静、アイシングが有効です。急性期を過ぎるとアキレス腱の遠心性収縮運動を行います。またヒールリフトを目的として足底板も有効です。
3-6ヶ月の保存療法に抵抗性の場合は手術を選択します。骨棘や腱内石灰化、変性部位の切除を行います。
足部・足関節疾患と外傷に対する保存療法
アキレス腱障害に対する保存療法
・アキレス腱障害には、以下の3つに分類されます。
1.アキレス腱症(踵骨付着部の近位2cmより頭側)
2.アキレス腱付着部症(踵骨付着部の2cm近位まで)→狭義のアキレス腱付着部症と踵骨後部滑液包炎の2つの病態がある
3.踵骨後部滑液包炎
*最近では変性が中心となっていることがわかり、この場合、~炎ではなく~症と呼ぶことが多くなっています。
スポーツ障害として多くが発症、ランニングで起こることが多い。アキレス腱症が6-7割、付着部症が2-3割とされる。原因は、内的要因として加齢、肥満、遺伝、DM、関節リウマチ、ステロイド長期投与など。外的要因として、トレーニング内容、未熟な技術、ウォーミングアップやクールダウン不足、不適切シューズなど。
病態:略
治療:保存療法が主。
アキレス腱周囲の滑液包炎には、解剖学的位置と原因の違いがあります。それぞれの特徴を以下に整理しました。
アキレス腱周囲の滑液包炎:3つのタイプの違い
| 疾患名 | 解剖学的位置 | 主な原因 | 症状の部位 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| アキレス腱滑液包炎 (総称) |
アキレス腱周囲の滑液包全般 | 摩擦・圧迫 | アキレス腱周囲 | 踵骨後部滑液包炎と皮下滑液包炎を含む総称 |
| 踵骨後部滑液包炎 (retrocalcaneal bursitis) |
アキレス腱と踵骨の間 | オーバーユース、摩擦 | アキレス腱の前側(踵骨寄り) | アキレス腱の深部にあり、運動時の摩擦で炎症 |
| アキレス腱皮下滑液包炎 (superficial calcaneal bursitis) |
アキレス腱と皮膚の間 | 靴の圧迫、ヒール、パンプス | アキレス腱の後側(皮膚寄り) | 表層にあり、靴ずれや圧迫で炎症 |
臨床での鑑別ポイント
踵骨後部滑液包炎は、アキレス腱の深部の痛みや腫脹が特徴で、足関節の背屈で悪化しやすいです。
皮下滑液包炎は、皮膚直下の腫れや発赤が目立ち、靴の圧迫で悪化します。
両者が同時に併発することもあります(“Haglund変形”に伴う複合病態など)。