>
 表紙に戻る
池田医院へようこそ
信頼とまごころの医療
からだにやさしい医療をめざして

整形外科 外科
リハビリテーション科

 
 アキレス腱断裂 Achilles tendon rupture

 かつてはアキレス腱断裂が生じると手術が行われてきました。近年、新鮮アキレス腱断裂に対し保存治療を行うようになってきています。現在も手術療法と保存療法の優位性についての議論は続いていますが、手術をしなくても遜色なく治るのであれば、保存治療を選択するのは当たり前だと考えます。

 保存療法もさまざまなものが報告されています。原則としては底屈位で固定し、断裂した腱が接するようにします。底屈位には自然下垂位もしくは最大底屈位にて膝関節より下方の固定を行います。荷重をかけるか、かけないかは施設によって異なります。その後徐々に底屈の度合いを弱めていきます。固定材料は、ギブス、ギプスシャーレ、機能的装具などを用います。

 <一般的な治療>
 従来のギプス固定+免荷という治療から、機能的装具を用いた早期運動、早期荷重を行うものまで治療方針には幅があるのが現状です。

 固定方法 初期:ギプス、ギプスシーネ、機能的装具、途中から機能的装具に切り替える方法などがあります。

 初期固定角度:足関節底屈位:最大底屈位(50−60度)、自然下垂位(30−40度)、もしくは両者の中間。テータ的には底屈度が増すほど再断裂率は低くなる。

 平均的な治療としては、ギブスもしくは機能装具を用いて6週間の底屈位固定を行う。荷重は全荷重は6週間後とするものから、機能装具を装着すればただちに全荷重を行うものまで差があります。いずれの方法でも、底屈度は固定期間中に徐々に下げて0度まで戻します。(例:最大底屈位2週間、自然下垂位2週間、背屈位ゼロ度2週間)、装具の装着は受傷後8週から10週程度継続します。

 装具脱着は自分で行わずに医療機関でのみ行うようにします。

 *再断裂は装具除去後2ヶ月以内でほとんどが発症しています。外固定終了後、足関節を強制背屈させることがないように心がけます。
 
 *治療開始までの期間と保存療法の適応
  受傷3日以内、受傷5日以内なら保存治療の適応。断端が寄るのであれば14日以内でも可。(超音波診断が有効)

 *手術療法より保存療法の方が下肢のDVT(深部静脈血栓症)を起こし易い。
 



本日のコラム62 アキレス腱断裂

 アキレス腱断裂の三大徴候
 1.下腿後縁下部に空くレス腱断裂部の陥凹(delle)
 2.患側でのつま先立ちが不可能
 3.Tompsonテストが陽性

 ・保存療法の適応
  年齢、性別、スポーツレベルの高低を問わず、受傷後5日以内の新鮮アキレス腱皮下断裂は全例適応となります。(病的断裂、陳旧性断裂は除く)それ以降は、断端が周辺組織と癒着し、足関節を底屈しても断端同士が接触しない。→2週間以内で超音波検査で断端が寄るのであれば保存適応とする意見もあります。

 受傷時から6週間の膝下ギプス固定+その後、4週間の短下肢装具とします。

 受傷後→最大底屈位(約50度以上)で膝下ギブスを2週間(ヒールタッチ)
     →3週間目:30度底屈位(軽度部分荷重)
     →5週間目:軽度底屈位(全荷重、ヒール付きギブズ)
     →7週間目:踵にくさびパットを入れた短下肢装具 4週間装着 全荷重

  受傷後3-4ヶ月でつま先立ち、ジョギングの開始、受傷4ヶ月まではジャンプ、ダッシュなどの過度のストレスは控える
     6-7ヶ月で片足つま先立ち可。

(杏林大学方式)

 断端部でのドップラー超音波所見:1ヶ月より新生血管、3ヶ月がピークでそれ以降、血管の描出は減っていきます。6ヶ月で更に減少、12ヶ月でわずかになります。

 *保存療法の適応に超音波診断が極めて有効です。底屈位で断端が寄らないケースでは再接着は難しいと考えられます。

 *施設により治療のプロトコールは若干異なっています。
 


 
本日のコラム562 アキレス腱断裂に対する保存療法

 米国整形外科学会が推奨する保存療法のコンセンサス:糖尿病、神経障害、免疫不全、65歳以上、喫煙者、活動性が低い、肥満(BMI>30)、末梢血流不全、皮膚疾患など

 通常レベルの生活への復帰は、手術と保存療法で差が無いとされる。スポーツへの復帰は手術療法の方が優位。

 手術のリスクとしては、感染、創部トラブル、神経損傷がある。
 保存療法のリスクとして、再断裂と深部静脈血栓が手術療法より高いとされる。

 これらに加えてエコー所見が重要となっている。底屈位でギャップが5mm以下なら保存療法の適応あり。

<保存治療のコツ>

ギブスでの伸展位固定は徐々に廃れている。ヒールリフトの状態でアキレス腱用装具か専用ブーツを装着する。最大底屈位から徐々に中間位に変更。可動域訓練は受傷から1-3週間から開始することが多い。早すぎると再断裂や癒合部の延長につながるので注意が必要。加重は、従来の8週間免荷に対して、受傷後、すぐに荷重をかける早期加重療法が良好な成績。だたしいつから動かすのか、荷重をかけるのかは、一定のコンセンサスを得ていない。最近のプロトコールでは底屈位で全荷重をすぐに許可している施設もあります。