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整形外科 外科
リハビリテーション科

発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼) Development hip dysplasia

乳児が歩行するときにうまく歩けない(跛行)することで見つかることが昔は多かったのですが、今は乳児健診で股関節のの開排制限や脱臼する感触で診断されます。レントゲンや超音波断層撮影を行い評価します。

長年、先天性股関節脱臼と呼ばれてきましたが、先天性のものはきわめて少なく周産期に足を伸ばして固定するなどが原因となって起こることが分かり、現在は、発育性股関節形成不全と言うようになりました。

治療は乳児期に見つかった場合は、リーメンビューゲルという装具をつけます。80%がこれにより整復されますが、残りの20%は入院して牽引治療を行います。それでも改善しない場合は手術を考慮します。

整復後、成長の過程で不具合が起こることもあります。骨盤骨切り術が必要なこともあります。

骨盤の大腿骨頭の受け口である臼蓋が形成不全を起こしている場合、成長とともに改善していくことも多いのですが、実際いつどの程度、どれぐらい改善するかはよく分かっていません。


大人の股関節脱臼は外傷性股関節脱臼であることが多いです。骨折を伴うこともありそれらの対処を行います。脱臼は全身麻酔を行った上で整復します。足の筋力は強いので通常は全身麻酔が必要です。

大腿骨頭置換術後の再脱臼は高齢者に起こることがあります。この場合、麻酔なしでも整復できるケースもあります。

成人の臼蓋形成不全:治療方針の概要

1. 保存療法(非手術的治療)

対象 症状が軽度、関節変性が進行していない
運動療法 股関節周囲筋(特に中殿筋)の強化
体重管理 股関節への負荷軽減
鎮痛薬 疼痛コントロール
装具療法 必要に応じて股関節の安定化を補助
 

※保存療法は進行予防や症状緩和が目的であり、構造的な異常を根本的に修正するものではありません。

2. 手術療法(構造的修正を目的とする)

手術名

適応

特徴

寛骨臼回転骨切り術(RAO)

関節変性が軽度〜中等度で、骨頭被覆の改善が可能な場合

臼蓋を回転させて骨頭被覆を増加させる。日本で広く行われる

寛骨臼棚形成術(Shelf procedure)

骨頭被覆が不十分だが、RAOが困難な場合

人工的に棚を作り骨頭を覆う。変性が進行している場合にも適応されることがある

寛骨臼骨切り術(PAO:Periacetabular Osteotomy)

若年成人で関節温存が可能な場合

臼蓋の向きを多方向に調整可能。欧米で主流

人工股関節置換術(THA)

関節変性が高度で保存療法・骨切り術が困難な場合

痛みの除去と機能改善が目的。高齢者や進行例に適応される