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整形外科 外科
リハビリテーション科

腸恥包炎(腸恥滑液包炎) Iliopectineal Bursitis

 腸恥隆起と腸腰筋の間にある滑液包が繰り返す運動や微少な外傷などによって炎症を起こす病気です。腸恥関節包は股関節の関節包と通じていることが多いとされています。

 症状は股関節前面の痛みと鼡径部痛です。鑑別診断としては骨関節炎、腫瘍性病変、関節リウマチ、大腿骨頭壊死などがあります。

 腸恥包炎は超音波断層撮影で股関節前面~その周辺に単房性もしくは多房性の嚢胞を描出することがあります。

 治療は対症療法となります。

腸恥包炎の臨床的特徴と鑑別

項目 内容
発症機序 腸腰筋と腸恥隆起の間の滑液包が、反復運動や微小外傷により炎症を起こす
好発 ランナーやサッカー選手など股関節屈曲を繰り返す競技者に多い
症状 鼠径部〜股関節前面の痛み、可動域制限、時に腫脹感
画像所見 超音波やMRIで嚢胞性病変(単房性または多房性)を描出
鑑別疾患 変形性股関節症、大腿骨頭壊死、腫瘍、関節リウマチ、腸腰筋膿瘍など
治療 安静、NSAIDs、ステロイド注射、穿刺排液、難治例では滑液包切除術

補足ポイント

腸恥滑液包は正常でも15%程度で股関節関節包と交通しており、股関節内圧の上昇が滑液包の腫脹を引き起こすことがあります。

感染性滑液包炎との鑑別が重要で、穿刺による培養検査が必要な場合もあります。

MRIのT2強調像では、腸腰筋後方に高信号の液体貯留として描出されることが多いです。


リハビリのステップ

1.急性期(炎症期)

安静:股関節の過度な屈曲・伸展を避ける
アイシング:1日数回、15〜20分程度
薬物療法:NSAIDsやステロイド注射で炎症を抑える
必要に応じて穿刺・排液:滑液包の腫脹が強い場合

2.回復期(炎症軽快後)

股関節周囲筋のストレッチ
例:腸腰筋・大腿直筋・内転筋の軽度伸張


股関節の可動域訓練(ROM)
痛みのない範囲で屈曲・外旋・内旋を促す


体幹・骨盤安定化トレーニング
例:ドローイン、ブリッジ、クラムシェル

3.再発予防期(競技復帰前)

動作指導:股関節屈曲時の代償動作(骨盤前傾など)を修正
段階的な負荷トレーニング:スクワット、ランジなど
スポーツ特異的動作の再教育:キック動作、ダッシュなど