足根骨癒合症 Tarsal Coalition
足根骨は足関節の下を受ける距骨、その下で地面を支える踵骨、足ゆび(正確には中足骨)につながる舟状骨、三個の楔状骨(内側、中間、外側)、立方骨で構成されています。
癒合症はこれらの足根骨が接しているところで生まれつき骨性、軟骨性、繊維性の癒合を起こしています。頻度は1%程度とされています。距骨-踵骨、踵骨-舟状骨で多いのですが楔状骨-舟状骨での報告もあります。
発生頻度と好発部位
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癒合部位 |
発症年齢の目安 |
特徴・備考 |
|---|---|---|
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距骨-踵骨(TC) |
10歳以降 |
最も頻度が高く、足根管症候群を合併することも |
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踵骨-舟状骨(CN) |
8〜12歳 |
anteater nose signが特徴的 |
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第1楔状骨-舟状骨(C1N) |
思春期以降 |
比較的稀で、保存療法で改善することが多い |
症状は癒合部分の痛みです。スポーツ障害や捻挫などの外傷後に痛みを訴え始めるケースが多いです。大人になってから発症することもあります。元も頻度の高い内側距骨踵骨癒合症では、近くを走行する脛骨神経を圧迫して足根管症候群(足の裏のしびれ)と起こすことがあります。
症状と発症契機
主症状
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症状 |
説明 |
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局所の疼痛 |
癒合部位(特に後足部)に運動時痛や圧痛が出現 |
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可動域制限 |
足関節や後足部の動きが制限される(特に内がえし制限) |
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疲労感・歩行困難 |
長時間の立位や運動後に疲労感や歩行困難を訴える |
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足底のしびれ |
距踵骨癒合症では足根管症候群を合併し、脛骨神経の圧迫によるしびれが出現 |
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腫脹・変形 |
発症契機
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契機 |
説明 |
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スポーツ外傷・捻挫 |
軽微な外傷や反復的なストレスが引き金となり、症状が顕在化 |
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思春期以降の骨化進行 |
癒合部が軟骨や線維性から骨性に変化する時期(8〜12歳以降)に発症しやすい |
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過度な運動負荷 |
ダンサーやアスリートなど、足部に高負荷がかかる活動で症状が出やすい |
合併症
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合併症 |
説明 |
|---|---|
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扁平足(flatfoot) |
癒合により後足部の可動性が失われ、アーチが低下 |
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足根管症候群 |
距踵骨癒合により脛骨神経が圧迫され、足底のしびれや灼熱感を生じる |
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腓骨筋痙性亢進 |
後足部の可動性低下により、腓骨筋の緊張が亢進し、内がえし制限を助長 |
レントゲンでは分かりにくいケースもありますが、その場合はCTを行います。
基本は局所の安静などの対症療法を行います。癒合による痛みが改善しない場合は手術を行います。
保存療法(第一選択)
安静、運動制限インソールや装具
NSAIDs、ステロイド注射
理学療法(足部の柔軟性・筋力強化)
手術療法(保存療法無効例)
癒合部切除術(若年者・可動性温存目的)関節固定術(関節固定術)(重度変形や関節症合併例)
1.距踵骨癒合症
距骨、踵骨の骨化が進む10歳以降に発症します。可動時やい運動負荷時に痛みや疲労感が出ます。捻挫などの外傷後に痛みが改善しないことで発見されることも多い。融合部分が大きいと足根管を圧迫して足根管症候群を引き起こすことがあります。
2.踵舟状骨癒合症
骨化が進む8-12歳で発症します。足根洞のやや前方に痛み(疼痛)が出ます。踵骨の前方突起が延長し舟状骨と関節面を形成します。保存治療→改善しない場合、手術→再癒合や痛みが残存しやすい。
3.第1楔状舟状骨癒合症
中足骨内部から足底に掛けて痛みがでます。保存療法でほとんどが改善し、手術に至る例は少ないとされます。
足根骨癒合症のタイプ別比較
| 種類 | 発症時期 | 主な症状 | 特徴的所見 | 治療方針 |
|---|---|---|---|---|
距踵骨癒合症(Talocalcaneal coalition) |
約10歳以降 | 運動時痛・疲労感 捻挫後の遷延痛 足根管症候群(しびれ) |
C-sign(X線) 距骨下関節の可動制限 CTで癒合部明瞭 |
保存療法(安静・装具) 改善しなければ癒合部切除または関節固定術 |
踵舟状骨癒合症(Calcaneonavicular coalition) |
8〜12歳 | 足根洞前方の疼痛 捻挫後の遷延痛 |
- Anteater nose sign(X線) CTで踵骨前方突起の延長 |
保存療法(装具・運動制限) 改善しなければ 癒合部切除術※再癒合や疼痛残存のリスクあり |
第1楔状舟状骨癒合症(First cuneonavicular coalition) |
思春期以降 | 中足部〜足底の痛み | X線・CTで癒合確認 MRIで骨髄浮腫を伴うことも |
多くは
保存療法で改善手術適応は稀 |
臨床上のポイント
距踵骨癒合症は足根管症候群を合併しやすく、脛骨神経の圧迫に注意。踵舟状骨癒合症はanteater nose signが診断の鍵。再癒合リスクを考慮して術式選択を。
第1楔状舟状骨癒合症は保存療法での改善率が高く、手術は慎重に判断。
画像診断の補足
| モダリティ | 有用性 |
|---|---|
| X線 | 初期スクリーニング。C-signやanteater nose signなどの所見 |
| CT | 骨性癒合の詳細評価に最適。3D-CTで癒合範囲を明瞭に描出 |
| MRI | 軟部組織評価、骨髄浮腫、線維性・軟骨性癒合の確認に有用 |
参考:『足の臨床 図説第4版』 / 『足の画像診断_小橋由紋子』 / 『関節外科』2021年1月号「日常よくある足疾患」 / 『関節外科 2』0203年8月号「上肢の骨壊死疾患治療」 / 『関節外科』2023年8月号「上肢の骨壊死疾患治療」