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リハビリテーション科

単純性股関節炎 Transient Synovitis of the hip

 4-6才の学童期までの小児に多く見られる股関節の炎症です。原因はよく分かっていませんが、先行するウイルス性疾患のあとで発症するケースも3割程度あるとされています。

 股関節をいずれの方向に動かしても痛みが出ます。股関節の痛みとそれによる跛行を認めます。38.5°以上の発熱やCRPが2.0mg/dlの場合は穿刺して細菌感染(化膿性股関節炎)を除外診断します。通常は痛みに応じて局所の安静(松葉杖などによる免荷)を行い、希望により消炎鎮痛剤などを使います。局所安静をしっかりと行えば1週間ほど(場合により数週間)で改善します。長引く場合はペルテス病などの他の股関節疾患を考慮します。

 診断はレントゲン撮影に加えて超音波断層撮影を行います。超音波所見として、関節内水腫があります。これは急性の滑膜炎によるものです。適時、血液検査を行います。症状が継続する場合は除外診断のためにMRIにて精査します。
 
 
本日のコラム328 小児股関節疾患の診断と治療 2

<単純性股関節炎>

 単純性股関節炎は2歳から12歳に発症する一過性の股関節炎。体育は5歳〜7歳で男子に多い。原因は不明で、ウイルス感染、外傷、allergy説があります。

 症状に先行して、風邪様症状、激しい運動を認めることがあります。先行するエピソードが全く無いことも3分の1程度みられます。

 症状は、股関節痛、大腿部痛、膝痛であり、跛行を伴うことがあります。跛行は患側の外転位歩行で、痛みが強い場合は歩行を嫌がり、親に抱かれて来院することもよくあります。

 レントゲン所見では、関節水腫に伴うtear drop distance の開大が見られると教科書的には書かれていますが、実際には少なく、むしろエコー検査にて水腫を認めることが多い。

 鑑別診断としては化膿性股関節炎、ペルテス病があります。

 *化膿性股関節炎:38.5℃以上の発熱、患肢での荷重不能、RBC12000以上、CRP2.0mg/dl 以上、1時間値40ミリ以上→これらを満たす場合は躊躇無く関節穿刺施行

 *ペルテス病:単純性股関節炎との鑑別は、初期のペルテス病の場合では非常に困難であり、後日、阻血性変化による骨端の変形が生じてくることがよくあります。従って、単純性股関節炎と診断し終了した場合でも、1ヶ月後に来院しレントゲンを再度行うようにします。

 単純性股関節炎の治療は、外来での保存的治療が原則であり、スポーツなどの運動や長距離の歩行などを禁止します。痛みが強い場合は松葉杖による免荷を行います。また、アセトアミノフェンを投与することがあります。通常1、2週間で症状は改善します。

 症状が強い場合は、介達牽引並びに免荷を目的として入院加療を行います。

 スポーツ再開は痛みは跛行が消失した上で flexion adduction テストが完全に陰性化した段階で行うようにします。