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整形外科 外科
リハビリテーション科
脊椎カリエスと結核性関節炎

 骨関節結核には、脊椎カリエスと結核性関節炎があります。やや減少してきていますが、高齢者では増加傾向にあります。昔と違って結核自体が少なくなっていますので、医師としてみる機会も減っています。しかしながら最近、結核感染自体は徐々に増えつつありますので、診療の際には注意が必要です。

 共通する症状は、罹患部の慢性疼痛で、運動で憎悪し、安静で軽減します。診断は、局所もしくは主病巣から結核菌検出を行う。結核菌と非結核性抗酸菌、生菌、死菌の区別を行うために、PCR:合成酵素連鎖反応(polymerase chain reaction)を行います。

 治療の原則は、抗結核薬による保存療法を行います。早期病変では有効でも、進行例では手術療法が必要となります。

<脊椎カリエス>

 肺その他の結核病巣から血行性に骨関節に達し、椎体の終板に病巣を形成します。その後、椎体の骨梁に浸潤し、骨組織を破壊し吸収していきます。進行すると椎体は肉芽や膿瘍を形成し破壊され、圧排されて脊椎の変形を起こします。

 脊椎カリエスは、骨関節結核のなかで一番頻度が高く、50−60%とされています。好発年齢は、近年、50歳代にピークがあり、次いで40歳代、70歳代となっています。罹患部位は胸椎および胸腰椎がもっとも多いく、次いで腰椎、頚椎の順となっています。

 症状として、局所の圧痛、棘突起の叩打痛、脊椎の可動性の低下があります。臨床検査所見として、血沈の亢進やCRPの上昇は軽度で、末梢白血球は増加しないことが多い。赤沈が1時間100mmを越える場合は、化膿性脊椎炎か混合感染を疑う。

 治療は、脊髄麻痺がなく、画像上明らかな腐骨がない場合は、化学療法と装具療法を適応します。手術適応は、脊髄麻痺、腐骨を伴う結核病巣、後弯の進行があります。また抗結核薬の無効例、画像診断や生検でも鑑別診断が困難で脊椎病変が進行性の場合も手術適応とします。

 手術は脊椎前方アプローチで、罹患椎体の病巣掻爬、自家骨移植(腸骨、腓骨、肋骨)を行います。

<結核性関節炎>

 関節では、主な病巣により骨型、滑膜型に分けられます。主病巣から血行性に骨から連続して広がったり、骨端や滑膜にまず病巣を形成する場合があります。

 結核菌は他の起因菌と異なり、軟骨を破壊するたんぱく分解酵素を産生しないので、関節の軟骨は比較的保たれることが多い。発症頻度は低く、罹患部位は股関節、膝関節、足関節、肩関節、肘関節の順となっています。

 局所症状として、腫脹、熱感、関節水腫があります。関節可動域制限や進行すれば関節強直となります。

 結核性関節炎は、骨破壊が進行することが多く、積極的な手術療法が第1選択となります。手術は掻爬を行うが、関節破壊が著しい場合は、関節固定術が適応となります。人工関節置換術は、病巣が沈静化して数年以降に行われることがありますが、その適応は慎重にすべきとしています。

 *カリエスとは、慢性の炎症で骨が腐った状態になることです。骨に結核感染が起こると炎症が進行し腐骨を形成するので、結核性カリエスと言います。通常脊椎に多いので、脊椎カリエスと名付けられていますが、正確には結核性脊椎カリエスという意味です。

 参考文献:朝妻ら 脊椎カリエスと結核性関節炎への対応 日本医師会雑誌 2016 第145巻・第5号:975-977