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整形外科 外科 リハビリテーション科

コンパートメント症候群 compartment syndrome

急性型と慢性型があります。急性型は外傷などによって急速に症状が悪化しますので緊急の対応が必要です。慢性型は運動負荷などにより筋肉量が増え、相対的に筋膜の伸びが悪い場合に起こります。

・急性型コンパートメント症候群

筋肉、神経、血管は小さな狭い区画によって仕切られており、そこに骨折や打撲などの外傷、感染、熱傷、四肢の圧迫、ランニングやジャンプなどの激しい運動等により内圧が上がって筋肉や神経が不可逆性に損傷を受けてしまいます。

前腕で起こるVolkmann拘縮がもっとも多いとされます。次いで下腿骨骨折でも起こります。

症状は安静時痛、異常感覚、軟部組織の圧痛、遠位の関節の運動で疼痛があります。古典的な所見としては、5P、すなわち疼痛Pain、蒼白 Palior、麻痺 Paralysis、知覚異常 Paresthesia、脈拍消失 Pulslessnessですが、麻痺は末期症状であり、脈拍消失は必ずしも伴わず、遠位の脈拍は正常であることが多い。→余程進行しない限り脈拍は触れます。

筋肉内の微小循環が障害されて起こりますので、それほど内圧が高くない状況でも発症します。

疼痛がもっとも早く出現するので、指標として有効です。痛み止めや局所安静のための固定等を行っても疼痛が改善しない場合はコンパートメント症候群を強く疑います。

内圧測定で40mmHgを越える場合は、ただちに処置を行います。圧迫するものを外して改善しない場合は筋膜切開等を行い内圧を下げます。コンパートメントが進行すると疼痛が突如消失することがあります。これは筋区画内の筋肉が完全壊死を起こしたときに起こりうることで、この場合は筋膜切開は禁忌となります。


*過度の飲酒や薬物乱用でも血管が閉塞して起こることがあります。
 
注記;コンパートメント内圧測定は、市販の専用機器もあるが、多くの施設では、動脈圧モニターに18G針を装着して各コンパートメント内の筋に直接刺して測定している。
 「拡張期血圧-コンパートメント内圧<30mmHg 」であった場合にコンパートメント症候群と診断する。上述の5Pや臨床症状と合わせて総合的に判断する。1度の診察や測定結果で判断に迷う場合は、1-2時間毎に判断を繰り返す。
 
下腿慢性コンパートメント症候群

アスリート貧血でも同様の症状が出ますので貧血のチェックが必要です。その他、脛・腓骨疲労骨折、シンスプリントでも同様の症状を呈することがあります。疲労骨折が合併するケースもあります。

下腿は骨や筋膜を境として4つの区画(コンパートメント)に分けられています。前方、側方、浅後方、深後方があります。急性型は外傷による骨折や圧挫創で起こります。慢性型はランニングなどの運動負荷により筋肉が増量、また運動時のバンプアップにより内圧が高まって痛みや神経を圧迫してしびれ、麻痺などを起こします。慢性の場合は、運動負荷で症状が出て、しばらく休むと症状が改善するのが特徴です。

慢性型は前脛骨筋、腓腹筋、腓骨筋などのストレッチを入念に行います。症状が改善しない場合は筋膜切開を行います。


・各コンパートメント障害による症状
 1.前方 下腿前外側に痛み腫れ、疼痛、圧痛。深腓骨神経の知覚障害(1,2趾間)、足関節の背屈障害(前脛骨筋、趾伸筋)

 2.側方 外側に痛み圧痛。浅腓骨神経(下腿外側)の知覚障害、長短腓骨筋の筋力低下で足関節の外がえしが低下。

 3.浅後方 ふくらはぎに痛み圧痛、腓腹神経障害による知覚障害、腓腹筋、ひらめ筋、腓腹筋の筋力低下により足関節の底屈が減弱

 4.深側方 下腿内側に圧痛。足底内側の脛骨神経領域での知覚障害。後脛骨筋、足趾伸筋の筋力低下


下腿慢性コンパートメント症候群(Chronic Exertional Compartment Syndrome of the lower leg)は、運動に伴って下腿の筋区画内圧が異常に上昇し、痛みやしびれを引き起こす疾患です。特に前方区画(前脛骨筋など)に好発し、ランナーやサッカー選手など反復的な負荷をかける競技者に多く見られます。

病態と好発部位

区画 主な筋・神経 症状の特徴
前方 前脛骨筋、長趾伸筋、深腓骨神経 足背のしびれ、背屈障害
側方 長・短腓骨筋、浅腓骨神経 足外側のしびれ、外反障害
浅後方 腓腹筋、ヒラメ筋、腓腹神経 ふくらはぎの痛み、底屈障害
深後方 後脛骨筋、長趾屈筋、脛骨神経 足底のしびれ、底屈・内反障害

診断のポイント

典型的な病歴
運動開始後に鈍痛・張り感・しびれが出現し、安静で速やかに軽快
内圧測定(ゴールドスタンダード)
安静時:15 mmHg以上
運動後1分以内:30 mmHg以上
補助検査
MRI(筋浮腫の確認)
NIRS(近赤外線分光法による筋酸素飽和度の変化)

鑑別診断

疾患 鑑別点
シンスプリント 骨膜の圧痛、運動後も持続する痛み
脛骨疲労骨折 局所の叩打痛、MRIで骨髄浮腫
神経絞扼障害 安静時にも症状あり、Tinel徴候陽性
血管性跛行 ABI低下、運動後の冷感や蒼白

治療とリハビリ

アプローチ 内容 適応
保存療法 ストレッチ、フォーム修正、活動制限 軽症例、初期対応
筋膜切開術 筋膜を切開し内圧を軽減 保存療法無効例、競技復帰希望者
鏡視下筋膜切開 低侵襲で瘢痕を最小化 美容的配慮が必要な症例

術後リハビリでは、段階的な荷重・ROM訓練を行い、6〜12週で競技復帰が目安です。

  
下腿慢性コンパートメント症候群

下腿は、骨や筋膜により4つの区画(コンパートメント)に分かれています。(前方、側方、浅後方、深側方)

運動などの負荷によりこれらの内圧が上がると、痛みやしびれが出てきます。運動後や臥位になると症状は消えます。(悪化すると改善の度合いが低下します。)

診断は、コンパートメントの内圧が安静時、運動中、運動後に測定(圧トランスデューサー)して著しい上昇(40mmHg以上)を伴うかをみます。安静時(正常値)は15mmHg以下とされています。35~40mmHgで症状が誘発されるとしています。

保存治療としては、局所の安静とストレッチがある程度有効ですが、保存治療に抵抗する場合は筋膜切開を行います。近頃では、小さな切開で済む鏡視下手術が行われています。
 
 
手のコンパートメント症候群

手には10のコンパートメント(骨間7,母指球1,小指球1、母指内転筋区画1)があります。重度の外傷や骨折、誤った輸液などで内圧が上昇し発症します。前駆症状としては、激しい痛み、指の運動障害、腫脹があります。MPは伸展しIPは屈曲位をとります。感覚障害は起こらず、他の部位より10mmHg少ない組織内圧で発症します。

治療は、屈筋支帯の切開、手掌正中切開で前面のコンパートメント3つはリリース可能で、2本の背側縦切開(第2,第4中手骨上切開)で骨間筋コンパートメントを切開します。手掌の皮切は二期的に、手背は一期的にでも可能とされています。

ここまで重度の外傷は一般診療所ではなく、二次、三次救急に受診することになると思います。