小児整形外科の他科疾患
お子さんが足を引きずったり、手足を痛がって歩きたがらなかったりすると、多くのご家族はまず整形外科を思い浮かべます。ただ、その裏に整形外科以外の病気が隠れていることがあり、年齢によって疑うべき病気の顔ぶれが変わってきます。発熱や体重の減り、元気のなさといった全身の様子も、あわせて見るようにしています。
首が傾いて戻らない斜頚のようなお子さんでも、筋肉のこわばりによる斜頚とは違い、目の動きに原因がある「眼性斜頚」ということがあります。首の動き自体は正常で、患側の目を閉じると傾きが戻るのが手がかりで、眼科での評価が診断の決め手になります。
2〜5歳頃、よく転ぶ、階段を上りにくがる、走れないといった様子から見つかることがあるのがデュシェンヌ型筋ジストロフィーです。立ち上がるときに膝や太ももに手をついて体を起こす特徴的な動き(ガワーズ徴候)があり、採血で筋の酵素が高いことも手がかりになります。両側のふくらはぎが細い筋萎縮と足の変形がある場合は、遺伝性の末梢神経の病気、シャルコー・マリー・トゥース病も考えます。
1〜2歳でO脚を心配して来院される方も多いのですが、この年齢では生理的なO脚との区別が難しく、経過を見ながら判断することがほとんどです。レントゲンで骨の端の変化が目立つ場合や、採血でカルシウムやビタミンDの値に異常がある場合は、ビタミンD欠乏性くる病を考えます。近年は日照不足や偏った食事が背景にあるお子さんの報告も増えているようです。
極端な偏食やダイエットが続くと、ビタミンCの不足から壊血病を起こすことがあります。歩きたがらない、足を痛がるといった症状に加え、歯ぐきの腫れや出血、皮膚の点状の出血が見られることもあり、食事の内容を丁寧に聞くことが診断につながります。
もっとも見逃したくないのが小児の白血病です。2〜5歳に多く、手足や複数の関節の痛みで発症することがあり、熱感や腫れがはっきりしないこともあります。顔色が悪く、なんとなく元気がない、痛む場所がはっきりしないといった場合は、念頭に置いて血液検査を行うようにしています。
関節の痛みや腫れが長く続くお子さんでは、若年性特発性関節炎も鑑別に挙がります。朝のこわばりや歩き始めの引きずりで気づかれることが多く、膝に単独で出ることもよくあります。急に片方の股関節を痛がって歩けなくなった場合は、様子を見てよい一過性の滑膜炎か、すぐに処置が必要な化膿性股関節炎かの見極めが重要で、熱の有無や血液検査、エコーでの関節液の状態を見て判断しています。
| 疾患 | 好発年齢・手がかり |
|---|---|
| 眼性斜頚 | 頚椎可動域は正常、患側閉眼で戻る |
| デュシェンヌ型筋ジストロフィー | 2〜5歳、Gowers徴候、CK上昇 |
| シャルコー・マリー・トゥース病 | 両側下腿筋萎縮、逆シャンパンボトル型 |
| ビタミンD欠乏性くる病 | 1〜2歳、O脚、骨端線の拡大 |
| 壊血病 | 極端な偏食、歯肉出血、点状出血 |
| 白血病 | 2〜5歳、四肢・多関節痛、顔色不良 |
| 若年性特発性関節炎 | 朝のこわばり、膝の単関節炎が多い |
| 化膿性股関節炎 | 発熱、荷重不可、緊急穿刺を要する |
参考文献:Orthopedics 整形外科外来における他科疾患を見逃さないコツ 3.2017
エビデンス:小児白血病の筋骨格症状
小児白血病は四肢・多関節の痛みなど筋骨格症状で発症することがあり他疾患に似て診断が遅れることがあると報告されています(ある報告では初発時に約7.8%で筋骨格症状)。(Kittivisuit S ら. Pediatr Rheumatol Online J. 2022)[1]。
エビデンス:栄養性くる病の国際コンセンサス
栄養性(ビタミンD欠乏性)くる病の診断基準や生化学(Ca・P・ALP・PTH・25OHD)・画像所見については国際的なグローバルコンセンサスが示されています。(Munns CF ら. J Clin Endocrinol Metab. 2016)[2]。
エビデンス出典(全2件)を見る
- Kittivisuit S, et al. Musculoskeletal involvement in childhood leukemia: Characteristics and survival outcomes. Pediatr Rheumatol Online J. 2022;20(1):34. PMID: 35501817.
- Munns CF, Shaw N, Kiely M, Specker BL, Thacher TD, et al. Global Consensus Recommendations on Prevention and Management of Nutritional Rickets. J Clin Endocrinol Metab. 2016;101(2):394-415. PMID: 26745253.