表紙に戻る
池田医院へようこそ
信頼とまごころの医療
からだにやさしい医療をめざして

整形外科 外科
リハビリテーション科

 
大腿骨頚部内側骨折・外側骨折(転子部骨折、
転子下骨折を含む) femoral neck fracture

 大腿骨が股関節を形成する近位部は上から骨頭〜頚部〜大転子・小転子〜転子下となっています。この部分の骨折を大きく二つに分けて関節包に包まれている部分を大腿骨頚部内側骨折、関節包より外側を大腿骨頚部外側骨折といいます。外側骨折は、大転子と小転子を結ぶ転子間骨折、それより下部の転子下骨折に分けます。

 内側骨折は関節包に包まれており外側骨膜がないため血流に乏しく治りにくい特徴があります。外側骨折は骨膜もあり血流がしっかりしているので治りやすいです。

 治療ですが内側骨折は骨接合術を行っても1/3が骨頭壊死を起こすので人工骨頭置換術を選択することが多いです。外側骨折は骨接合術が選択されます。手術をしない保存的な方法もありますが忍耐強いリハビリが必要です。

 手術をする体力が無い方や手術を拒否される場合は保存的な治療を選択します。
 
 
大腿骨頸部骨折

 大腿骨の頚部とは股関節にはまっている部分(大腿骨骨頭)を支える部位をいいます。転倒などにより大きな力が働くと頚部に骨折が起こります。骨折が骨頭に近い内側型と遠位の外側型に分けられます。外側型は通常症状が強く歩行困難となりますが、内側型は痛みがそれほどでもなく痛いながらも歩行が可能のことがよくあります。歩行可能だから骨折はないと考えてはいけません。

 内側型はこのように症状が強くなく歩行できることもあり、専門の整形外科医でも見逃すことがあるので注意が必要です。また初診時にはレントゲンで異常が無くとも加重や筋肉に引っ張られてずれてくることもあります。従って痛みが継続する場合は、必ず経時的にレントゲンを撮影します。初診時に骨折が疑われる例ではMRIにより精査を迅速に行うようにします。レントゲンでは見つからない例でもMRIで確定することはよくあります。

 症状としては外側型は股関節に激痛が生じることが多く、内側型は外側型に比べ痛みは弱く下肢に放散して坐骨神経痛や筋肉痛様の症状を起こすことがあるので注意が必要です。

 頚部骨折は原則として手術療法を選択します。転位が無く安定している場合は保存的に治療することもありますが、治療期間が長くなり、高齢者の場合、寝たきりになることも多いとされています。

 実際に、自宅で転倒し骨折したものの放置して寝たきりになり往診に呼ばれたこともあります。このようにならないように受傷時には侮らずにきちんと医療機関での治療を受けるようにしてください。

 大腿骨頸部内側骨折 このTypeの骨折は一見、骨折が無いように見えますが実は折れてます。骨折部でかみ合っているので分かりにくいです。これを見逃してなりません。
 
  
本日のコラム80 大腿骨頸部内側骨折

 Garden分類
Stage T:不完全骨折。頸部内側の骨性連続が残存。
Stage U:完全骨折。軟部組織の連続性は残存し、骨折部は嵌合。
Stage V:完全骨折。回転転位があります。頸部被膜(Weitbrecht支帯)の連続性は残存。
Stage W:完全骨折。すべての軟部組織の連続性が断たれている。

 *Garden分類は、stage分類なので、stage1〜4と表記することも多い。

 大腿骨頸部内側骨折は血流の関係で、骨折すると自然治癒が難しいとされています。また高齢者では保存治療に要する時間が長くかかり、寝たきりや就下性肺炎などを起こし易いので原則手術をすることが勧められています。それでは全例で手術をするのかというとそうでもなく、Garden分類のStage T、IIも原則手術ですが、場合により保存治療が選択されることがあります。この場合、経過中に骨頭壊死を起こせば、人工骨頭置換術を考慮します。

 全身状態が悪く手術に耐えられと判断される場合や手術を拒否される場合も行いません。


 *レントゲンで所見が無くMRIで骨折を認める場合、不全骨折と診断します。大腿骨頚部不全骨折、大腿骨転子間不全骨折ともに通常、手術適応となります。何らかの理由により保存療法を行う場合は、6-8週間、入院加療を行います。保存療法の経過中にずれてきたり、骨頭壊死を起こす場合は、手術を考慮します。