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池田医院へようこそ | ||||||||||
信頼とまごころの医療 からだにやさしい医療をめざして |
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整形外科 外科 リハビリテーション科 |
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FAI (大腿骨寛骨臼インピンジメント) Femoroacetabular impingement インピンジメントは英語で「衝突」という意味です。整形外科では、主に関節の可動域が物理的に傷害されるとき○○インピンジメントという病名がつけられています。 FAIはFemoroacetabular impingementの略号です。そのまま訳すと「大腿臼蓋の衝突」となります。大腿とは大腿骨のことであり臼蓋は骨盤に大腿骨の骨頭が収まるくぼみ(ソケット)のことです。 この病気は、大腿骨寛骨臼蓋と大腿骨の一部が衝突すると起こります。衝突の仕方には2種類あってcam type、pincer typeがあります。またこの二つが混合したcombined typeがあり合計3つの分類となっています。 cam typeは大腿骨頭がなだらかにくぼむ場所が膨らんでいて股関節の臼蓋と当たります。 pincer typeは股関節の臼蓋前縁が覆い被さって大腿骨を動かすとあたります。 前者は大腿骨頭の形に問題があり、後者は臼蓋の形態に問題があります。 この二つがミックスした状態をcombined typeとします。 大腿骨頭が膨らんでいる cam tope はその部分を削る手術をします。関節唇修復術(再建術)との併用で良好な手術成績が報告されています。 臼蓋が出っ張っているpincer typeは出っ張った臼蓋を削ったり過剰に突出した下前腸骨棘を削る手術をします。(関節唇修復術との併用) いずれも最近では鏡視下手術で行うようになってきています。 股関節に痛みを訴える場合にFAIは結構多い(数十パーセント)ので症状と勘案して対応する必要があります。 症状・臨床所見・画像所見の3つが揃うことが重要。(鼡径部痛+屈曲制限・痛み誘発+画像) 保存的治療として、痛みの出る肢位を避ける、消炎鎮痛剤などの投薬、FAIトレーニングをおこなう。骨盤が前傾しているとインピンジメントが生じやすいので過剰な骨盤前傾があれば是正を行う。 |
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FAIトレーニング 1.股関節周囲筋のストレッチ 2.骨盤・腰部の柔軟性改善 3.体幹筋力の強化 |
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FAI(大腿骨−寛骨臼インピンジメント)(*:狭義)の診断指針(日本股関節学会、2015) FAI(大腿骨−寛骨臼インピンジメント)の概念は、股関節運動時に寛骨臼辺縁部と大腿骨頸部もしくは大腿骨頸部移行部付近が、繰り返し衝突(インピンジメント)することによって寛骨臼縁の関節唇および関節軟骨に損傷が生じる病態とされています。既知の疾患のあるものは除外します。 pincer type と cam type があります。(両方あるものは combined type) pincer type FAIは寛骨臼辺縁の過剰な被覆であり、cam tope FAIは大腿骨頭・頚部移行部の骨性隆起により生じます。両者はまったく別の病態と考えられています。 cam type は、関節鏡の良い適応です。臼蓋形成不全を有する症例をpincer typeと誤って臼蓋辺縁部のトリミングを行うと変形性股関節症をが進行します。 *:明らかな股関節疾患に続発する骨形成異常を除いた大腿骨−寛骨臼インピンジメント
1次性もしくは特発性としてのFAIと小児疾患や外傷の既往歴があるのもを2次性のFAIとする考えもあります。 |
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最近のFAIの知見・動向(2020年代以降) 1. 変形性股関節症との関連性の明確化 FAIが変形性股関節症(OA)発症のリスク因子であることが、より明確に示されてきました。特にCam typeでは、関節唇損傷から軟骨損傷へと進行しやすいとされています。 2. α角やHead-Neck Offsetの定量的評価の重要性 Cam typeの診断において、α角(55°以上)やHead-Neck Offset(8mm未満)の定量的評価が、より精密に行われるようになっています。MRIや3D-CTを用いた立体的評価が推奨される傾向です。 3. 鏡視下手術の進化と適応の見直し 関節鏡視下手術の技術が進化し、術後の早期社会復帰や低侵襲性が評価されています。ただし、臼蓋形成不全との鑑別が不十分なまま臼蓋トリミングを行うと、OA進行のリスクがあるため、適応の見極めがより重要視されています。 4. アスリートにおけるFAIの認識拡大 特に成長期のアスリートにおいて、下前腸骨棘インピンジメントやFAIの発症が注目されており、裂離骨折後の骨隆起が原因となるケースも報告されています。 5. 保存療法の質的向上 FAIトレーニングにおいて、骨盤前傾の是正や体幹・股関節周囲筋の協調性改善がより重視され、動作分析に基づいた個別化アプローチが推奨されています。 |
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Dunn view 45-20 撮影 FAIのcamTypeの描出感度が高い (股関節屈曲45度、外転20度) | ||||||||||
下前腸骨棘インピンジメント 大腿直筋の付着部である下前腸骨棘が膨隆すると、股関節の可動時に大腿骨頚部と衝突してインピンジメントを起こすことがあります。成長期に鍛錬したアスリートは下前腸骨棘が発達していることが多く、また裂離骨折を起こした後に膨隆するケースも見られます。症状は股関節を屈曲すると下前腸骨棘に疼痛が生じます。レントゲンでは下前腸骨棘が前下方に突出しています。保存治療はインピンジメントを起こさないように屈曲などを控えるようにします。改善しない場合は鏡視下に下前腸骨棘の除圧を行います。FAIの手術と一緒に行う例が多い。 |
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