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整形外科 外科
リハビリテーション科

線維性骨皮質欠損 fibrous cortical defect 非骨化性線維腫 nonossifying fibroma

線維性骨皮質欠損(fibrous cortical defect)および非骨化性線維腫(nonossifying fibroma)は、いずれも小児期に好発する良性の骨病変です。膝の痛みを訴えて受診した小児に対してレントゲン撮影を行うと、大腿骨遠位内側に1センチ大の円形または楕円形の透亮像が認められることがあります。

病変が皮質内に限局しており、境界が明瞭であれば、線維性骨皮質欠損と診断され、通常は経過観察となります。これらの病変は成長とともに自然に消失することが多く、治療を要しないことが一般的です。

非骨化性線維腫は、線維性骨皮質欠損と組織学的に同一であり、以前は区別されていましたが、現在のWHO分類では同一疾患とされています。病変の大きさや骨髄腔への進展の程度により、皮質内に限局するものを線維性骨皮質欠損、より大きく骨髄腔に及ぶものを非骨化性線維腫と呼ぶことがあります。

いずれの病変も無症候性で偶発的に発見されることが多く、画像所見が典型的であれば生検は不要とされています。X線では、辺縁が明瞭で硬化を伴う偏心性の透亮像として描出され、骨膜反応や石灰化は通常認められません。MRIではT1・T2強調像ともに低信号を示すことが多く、線維性組織を反映していると考えられています。

ただし、病変が大きく骨長径の50%以上を占める場合や、病的骨折をきっかけに発見された場合には、掻爬術と骨移植を含む外科的治療が検討されます。特に、骨皮質が著しく菲薄化している場合には、骨折のリスクが高まるため注意が必要です。

思春期以降には自然消退することが多く、予後は極めて良好です。したがって、典型的な画像所見を有する場合には、定期的な画像フォローアップによる経過観察が基本方針となります。

疾患名 好発年齢 好発部位 X線所見 臨床的特徴
線維性骨皮質欠損/非骨化性線維腫(FCD/NOF) 5〜20歳 大腿骨遠位部・脛骨近位・腓骨など 偏心性透亮像。皮質内または骨髄内に限局。硬化縁を伴う。骨膜反応なし。 多くは無症状。大きい病変では病的骨折のこともある。自然消退が多い。
単純性骨嚢腫 5〜15歳 上腕骨近位・大腿骨近位 骨髄内中心性の透亮像。骨皮質菲薄化。 無症状または運動時痛。病的骨折で発見されやすい。
線維性異形成(monostotic) 10〜30歳 大腿骨・肋骨・上腕骨など すりガラス様透亮像。境界不明瞭で皮質肥厚を伴うことも。 軽度疼痛。骨変形や脚長差、病的骨折のこともある。
骨芽細胞腫 10〜25歳 椎弓・長管骨骨端部 骨硬化と透亮像の混在。比較的大きめ。 持続性の局所疼痛。NSAIDsにやや抵抗あり。
骨嚢胞性変化を伴う軟部肉腫 小児〜高齢者 下肢長管骨 透亮像と軟部腫瘤、骨膜反応あり 疼痛・腫脹。画像で異型が疑われた場合は精査必須。

この表は、FCDとNOFを「成熟度や大きさの違いによる連続体」として捉え、統一した名称で扱っています。組織学的には同一であり、WHO分類でも統合されています。