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整形外科 外科
リハビリテーション科

 
手指(末節骨・中節骨・基節骨・中手骨)の骨折

 骨折が疑われるときはレントゲン撮影を行います。レントゲン上、骨折がはっきりしないが骨折が疑われる臨床症状を示すときは、骨折に準じてギプスなどで固定を行います。(臨床症状優先)1-2週間後にレントゲンを再度撮影するか、早期にMRI(場合によりCT)を行う。

 <後遺症の予防>

 避けられる後遺症は出来るだけ起こらないように心がけます。

1.MP関節の伸展位拘縮(MP関節とは指の付け根にある関節)
 MP関節の中手骨骨頭は前方に楕円形の長軸がくるので、前に突出したようになっています。従ってMPが伸展する(楕円の短軸方向)と側副靭帯は緩み、MPが屈曲する(楕円の長軸)と緊張します。外傷や炎症のあるときに、3-4週間、伸展位固定をすると側副靭帯が短縮してMP関節が曲がりにくくなります。MP関節を固定するときは出来るだけ屈曲位で行います。

2.指の回旋変形
 中手骨骨折において骨折部が回旋するとCross finger(交叉指)となることがあります。初診時、手指を握ってクロスしていなかをしっかりとみます。最大屈曲位で指が重ならないようにすることが大切です。

3.腱の癒着

 基節骨周辺は腱の癒着が起こりやすい。およそ4週間で起こるので、早期に自動運動を行うことで予防します。もし癒着が生じてきたら、バネがついて指を伸ばす装具(カプナースプリント)を装着し改善を図ります。

<末節骨骨折>

1.腱の停止部より末梢の骨折
 骨折に対して圧迫するものが無く、骨折部が離開して、骨癒合が得られにくい。骨癒合しない(偽関節)場合もありますが、軟部組織でつながって問題はありません。弾力絆創膏での圧迫固定を追加すると効果的。

2.腱の停止部より中枢での骨折
 伸筋腱と屈曲腱により骨折部に圧迫する力が働くので、骨癒合は停止部の末梢の骨折よりは得やすい。癒合には4-5週間かかります。

 <槌指 mallet finger>

 突き指は軽症から重症まで幅が広く、様子を見ているうちに変形が残ったり動きにくくなるといった後遺症が出ることがあります。
指が曲がっていたり、伸びなかったり、腫れて痛みがある場合などは、受診する方が良いでしょう。

  「突き指(槌指)」は腱の断裂を伴う場合と、骨折を伴う場合があります。それぞれ腱性槌指、骨性槌指といいます。

1.腱性槌指→腱の損傷を伴うもので、完全断裂と不完全断裂があります。完全断裂は全く伸展が困難で深めの屈曲位(50-60度)を取っています。部分断裂は5-20度ぐらいの屈曲位で少し伸展出来ます。
 小さい裂離骨折伴う場合でも、指の伸展が出来ないものは腱損傷として扱います。裂離骨片の大きさと伸展障害の程度は必ずしも一致しない。
 損傷後、1ヶ月前後でも保存治療は可能とされています。但し治療期間が長くなったり治らないことも多くなります。時間が経っていても諦めずに、まずは伸展固定をしてみると良い。

2.骨片を伴うもの(関節内骨折)
 指の伸展機構には障害が無いので伸展は可能です。骨片が大きくても転位が少ない場合は、保存治療が可能。この場合、やや屈曲位で固定。骨癒合は約6−8週間。
 期間中にずれる場合は手術。PIP関節がスワン・ネック変形をしDIP関節が屈曲位を取る場合、転位のある大きな骨片や掌側へ亜脱臼する場合、他動的に伸展出来ない場合は保存治療ではなく手術を行います。
 関節面の30%以上(40%と言う意見もある)で骨折している場合は手術。

 固定方法:DIP軽度伸展位で6−8週間のスプリント固定(もしくは装具)を行います。この期間は勝手に外してはいけません。外して曲げてしまったら最初から固定期間の数え直し(固定1日目に戻る)になります。医師の指示での脱着は可能です。
 固定後、2-3週間ほど夜間のみ装着を推奨する意見もあります。6−8週間の固定後、固定はそのままで1日3回外して可動域訓練2−3週間徐々に行う方法もあります。

 *固定終了後、可能であれば2−3週間程度、夜間のみ固定具を使用することが推奨されています。
 *固定具による差は無いとされています。(コクランレビュー)
 *末節骨の骨折はX線上の完全な治癒には5ヶ月ほど要する。

 マレットフィンガーの分類
 a:伸筋腱の断裂(骨片なし)
 b:小さな裂離骨折を伴い、指の伸展が出来ないもの
 c:関節面の3分の1以上の骨片を伴うもの。(骨片と末節骨とは骨膜がつながっているので伸展可能)
 d:大きな骨片を伴い、掌側への亜脱臼を伴うもの

■治療開始が遅れた場合■

 何らかの理由で治療開始が遅れることがあります。受傷2−3ヶ月以内であれば、多くの場合で治療可能とされています。DIP伸展位固定を8−20週継続します。治療開始までの時間が長いほど治りにくい。
予後は良くない。数週間の固定後、症状が持続する場合は手術による修復が有効。槌指の状態を放置すると、スワンネック変形を起こす。(PIP過伸展、DIP屈曲)

<合併症>

1.伸展不全(extenser lag)
 伸展障害が残ること。更に6週間伸展固定を継続すると改善することがあります。特に骨折部位にギャップがあり骨が延長して治るような場合は伸展不良が出やすい印象があります。
 しかしながら多少屈曲していても多くの患者には許容できると言われています。
→完全に治るのが望ましいが、外傷ではなかなか元通り完璧ということにはならない。

2.その他 疼痛、知覚過敏、しびれ感など

■Seymour骨折■

Salter-HarrisI型、II型の亜型としてSeymour骨折があります。小児の突き指で起こる末節骨の骨折により爪基部の爪母を突き破って開放骨折として対応が必要となります。
すなわち、デブリードメント、爪の除去・洗浄、爪の再留置、抗菌剤の投与などがあります。

 

<中節骨骨折>
 浅指屈筋腱(FDS)の停止部より、中枢の骨折は背側凸、抹消での掌側凸変形を起こします。
 1.骨幹部骨折 固定性が悪く経皮的ピンニングを要することが多い。骨癒合には長期間。
 2.頚部骨折 イメージ下に整復し、DIP屈曲位でシーネ固定3-4週間。または創外固定4-6週間

<PIP関節損傷>

 拘縮予防が大切で、固定期間が重要。

1.側副靱帯損傷 側屈20°以上の不安定性があれば、手術を考慮。反対側と比較して不安定性が無ければバディーテープにて積極的に可動域訓練を行い、6-8週間固定します。

2.掌側板裂離骨折 ボールなどで過伸展を強制されて起こります。PIP関節30-40°屈曲位で背側スプリントを一週間程度行い、バディテープ法に切り替えるか、最初からバディテープ法を行います。積極的に可動域訓練を行う。3-4週間固定したままだと拘縮を起こしますので、必ず、可動域訓練をしっかりしましょう。

3.背側脱臼骨折 整復後、安定性を得られるものは保存治療。軽度屈曲で再脱臼するものや軸圧損傷で関節面での陥没骨折が大きく、関節面の適合性を欠くものは手術適応。

4.掌側脱臼骨折 極めてまれ。整復位がとれず、手術になることが多いとされています。

<基節骨骨折>

 掌側の骨間膜付着部で引かれ、伸筋腱中央索が遠位で引っ張るので、骨折は掌側凸変形をきたす。

1.骨幹部、基部骨折 腱損傷の無いものはナックルキャスト。関節にかかる骨折は、経皮的ピンニングののち、ナックルキャストにて固定します。基節骨骨折で、SHIIの骨端線損傷を整復した場合は、バディテープで4週間固定を行いながら可動域訓練を行います。

2.頚部骨折 基節骨もしくは中節骨頚部での骨折は背側転位が多い。完全に転位し騎乗位となったものは、手術になることが多い。

<中手骨骨折>

 1.頚部骨折 壁を殴ったり強くぶつけることで起こります。頚部は30-50°掌屈転位を生じることが多く、整復します。整復しても40°以上の転位を認める場合は、経皮的ピンニングをし、ナックルキャストを行います。

 2.骨幹部骨折 斜骨折、横骨折が多く、整復が難しい。手術してプレート固定をすることが多いです。ピンニング+ナックルキャストもあり。

 *ナックルキャスト 基節骨骨幹部骨折や基節骨基部骨折、中手骨骨折などでのギプス固定法。MP関節を70-90°屈曲位にしそれ以上は伸展出来ないように手背側はギプスによる覆いを作ります。掌側はMPがフリーに動くように解放し、積極的に可動域訓練を行えるようにします。ギプスの中枢側は骨折部位より1関節越えるようにします。


本日のコラム64 骨端軟骨損傷の分類(Salter-Harris分類)

 大人には無い小児特有のケガです。骨端軟骨は、成長期の子供の骨が伸びるために、骨に挟まっている板状の軟骨のことです。ここから骨が新生されて成長します。骨に比べて脆弱なため、外傷で骨折がなくとも、骨端軟骨が損傷していることがよくあります。

typeT:骨端軟骨の完全な分離。骨折を伴わない。
   幼少児。一般に成長障害は残さない。

typeU:高頻度に起こります。骨端軟骨の分離と骨幹端の三角骨片。
   年長児に多い。整復は容易で成長障害を起こす事は少ない。

typeV:まれ。骨端軟骨板の分離+骨端の長軸に沿った関節内骨折。
   まず関節面の整復を行うと軟骨板の整復も出来る。成長障害はほどんどない。

typeW:関節面から骨端軟骨板をこえて骨間端部にいたる縦骨折。
   上腕骨外顆骨折でよくみられる。成長障害(内反肘、外反肘)を起こしやすい。

typeX:長軸方向の外力で骨端軟骨板が圧挫される。
   足関節・膝関節などの加重が強く働く部位で起こりやすい。レントゲン上、転位がないため診断は困難。
   圧挫された軟骨板の早期閉鎖が起こり、成長障害や変形を来たし易く、最も予後不良のタイプである。