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整形外科 外科
リハビリテーション科

外反母趾 hallux valgus  バニオン bunion

 母趾が小趾側に曲がってしまう状態をいいます。母趾が曲がって見えますが、実はその根元にある第1中足骨が内側に開いてしまうため相対的に曲がったように見えるのです。

 痛みは母趾のMTP関節の内側に出ることが多いのですが、第2、第3MTP関節足底が痛いこともあります。

 この中足骨の開きは足裏の横アーチが扁平足や筋力低下などで崩れるために起こるとされています。

 江戸時代には下駄や草履などのはなごのあるものを履いていましたのでなかったと言われていましたが、そもそも外反母趾の概念は昭和30年代に確立されたので、それ以前に外反母趾という診断はつかなかったのではないかという説もあります。

 下駄や草履を履いても起こることもあります。幼児期よりサイズの合っていない靴を履いて足のアーチがうまく形成されないということも指摘されています。

 現代ではハイヒールを履く女性に多く見られます。若い女性より中高年の女性に多いです。

 いったん外反母趾になってしまうとなかなか保存的にな治療では治りません。悪化を防ぐという意味で、足底板、足趾の運動が効果があるとされています。よく使われる母趾と第2趾に挟むアタッチメントやこれに類する矯正装具は痛みを改善する効果はありますが外反母趾を改善したり予防する効果に乏しいとされています。痛みは辛いものですし、当院では、アーチをサポートしながら母趾の外反を矯正するように装具(足底板)を作成し、症状の改善をはかっています。

 予防や悪化を防ぐには、足趾の体操を中心に装具(足底板、アーチサポート)を使い、また足に合った靴を履くといったことがよいでしょう。幅広の靴が必ずしも合っているわけではなく、足のアーチが復元されやすい靴が望ましいです。

 バニオンに硬い靴皮が当たると痛みますのでトゥボックスが広く柔らかい素材のものを選ぶとよいでしょう。

 これらの治療で効果が無く、痛みが強かったり、バニオン(bunion)といって母趾の曲がった関節内側に袋が出来てこれが炎症を繰り返すようになると手術療法も考慮します。

 手術がさまざまな方法があります。基本は内側に曲がった第1中足骨を骨切(こつきり)して元に戻すようにします。術後、きちんと歩けるようになるには2ヶ月ほどかかります。軽度のものは局所麻酔で日帰り手術を行う施設もあります。
 

 趾節関節外反(母趾)

 外反母趾は母趾の一番根元の関節(基節・中足骨関節、MTP関節)が外反する病気ですが、それより一つ遠位、趾側の関節が外反することがあります。これは正式な病名ではありませんが趾節関節外反母趾とでも言う状態です。

 この病態は分かっていませんが、小さい頃から小さい靴を履いていることと関連していると言われています。私の経験では外に向いているだけで痛みなどの症状はなく、形が気になって来院されることが多いようです。これを戻すのは困難で、やはり曲がる前に合った靴を履いて予防するしかないかと思います。
 
外反母趾

<外反母趾の病態>
 MTP関節部での外反
 母趾の回内
 母趾種子骨の外側偏位
 第1中足骨の回内
 第1足根中足関節の過可動性

 <外反母趾の重症度分類>
外反母趾:外反母趾角が20°以上のもの
軽症:20°以上30度未満
中等症:30°以上40°未満
重症:40°以上

<治療>
保存治療:足底板(アーチサポート、メタタルパッド、第1中足骨骨頭近位内側パッド)、運動療法(母趾外転筋運動)
手術治療:第1中足骨骨切り術が主流で、骨を切る部位によって遠位、近位、骨幹部に分けられさまざまな術式がある
 
  
外反母趾の装具について

 装具には、母趾・第2趾間に挿入する趾間装具、ストラップ型趾間開大装具、足底板があります。

 趾間装具は趾の股(1-2趾間)にはめるゴム状のもので簡便ですが、第2趾の外反を起こすことがあります。

 ストラップ型趾間開大装具は母趾にストラップを引っかけて外反を矯正します。

 足底板は縦アーチと横アーチをサポートするように作成します。ストラップを追加したものもあります。

 いずれの装具も軽度から中等症までであり、高度変形例では効果は限定的とされています。HV角35°未満で有効。
 
 
本日のコラム63 外反母趾

 外反母趾は、西洋型の生活様式で靴を履くようになってから増えています。特に女性がハイヒールを長期間履くとなり易いと言われています。これは足の前3分の1体重が掛かるのと中年以降に体重増により足のアーチが崩れて起こるとされます。

 保存治療は足のアーチを改善させる足底板(母趾を内反させる機能を付加することあり)や足の体操(グーチョキパー、ホーマン体操、内がえし、外がえし、タオルつかみ)を行います。

 *ホーマン体操とは、両母趾に太めの輪ゴムをかけて足の前方を開きます。母趾はゴムの力で相対的に内転します。

 靴は母趾根部〜小趾根部が包み込まれてフィットするものを選択します。幅広なものを選びがちですが、これは横アーチが潰れたままになり易いのでよろしくありません。痛みが出ない程度にフィットしたものを履きましょう。

 手術は、仕事や日常生活に支障がある場合に考慮します。例えば、仕事でどうしてもハイヒールを履かざるを得ず、保存治療に抵抗して痛みが続く場合などは手術を選択します。