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整形外科 外科
リハビリテーション科

ハンマー趾 hammer toe

ハンマー趾(hammer toe)は、足趾の中でも特に第2〜第4趾に多く見られ、PIP関節(近位趾節間関節)が屈曲し、DIP関節が伸展した状態になる変形です。初期段階では柔軟性があるため、ストレッチや保存療法が有効です。

定義と分類

変形タイプ

特徴

関節の状態

ハンマー趾

PIP関節が屈曲、DIP関節は伸展または中間位

PIP屈曲拘縮

マレット趾

DIP関節が屈曲

DIP屈曲拘縮

クロウ趾

MTP関節過伸展+PIP/DIP屈曲

多関節変形


ハイヒールや小さい靴を履いていると生じることがあります。横アーチが崩れても原因となります。

筋バランスの崩れ:伸筋と屈筋の不均衡(特に長趾伸筋と短趾屈筋)
足底の過剰な圧力:特に前足部への荷重増加
外反母趾との関連:第2趾が母趾に押されて変形するケースが多い
靴の影響:つま先が狭い靴やヒールの高い靴による慢性的な圧迫
神経疾患・糖尿病:末梢神経障害による筋制御の低下


治療は、関節が固まっていない段階なら趾のストレッチを行います。またローヒールでサイズに少し余裕があるものを履くようにします。装具治療としては足底板を改良して足趾が伸展するように作成します。痛みが続くようでしたら手術を考慮します。

保存療法(初期〜中等度)

方法

内容

最新の知見

足底装具

メタタルサルパッドやトゥスプレッダー

足趾間の圧力軽減に有効

ストレッチ・筋トレ

屈筋・伸筋のバランス調整

足内在筋強化が予防に有効

テーピング

PIP関節の伸展位保持

動的テーピングが注目されている

LIPUS(低出力超音波)

軟部組織の修復促進

腱付着部の炎症軽減に可能性あり


基本的なストレッチ方法

ストレッチ名

方法

目的

回数・頻度

足趾の伸展ストレッチ

手でハンマー趾を優しく持ち、PIP関節を伸ばす方向に牽引

屈曲拘縮の改善

1日2〜3回、各10〜15秒

タオルスクランチ

床にタオルを置き、足趾でたぐり寄せる

足底筋群の強化と柔軟性向上

1日1〜2回、10回程度

足趾の分離ストレッチ

隣接する趾を両手で持ち、左右に開くようにストレッチ

内在筋の活性化と拘縮予防

1日1回、各趾5〜10秒

足底筋膜ストレッチ

足底を手で持ち、足趾を背屈させながら足底筋膜を伸ばす

足底の緊張緩和

朝晩各1回、15秒程度

足関節背屈ストレッチ

タオルやバンドで足を引き、足関節を背屈方向に牽引

後脛骨筋や腓腹筋の柔軟性改善

1日2回、各20秒


手術には、徒手整復可能なものは屈筋腱背側移行術を、徒手整復不可能なものは基節骨の骨頭切除術(MIP関節背側拘縮あれば、MIP関節軟部組織解離術を追加。)

手術療法(重度・拘縮固定例)

術式

内容

備考

PIP関節切除術

関節の一部を切除して伸展位に固定

最も一般的

腱移行術

長趾伸筋を足底側へ移行

筋バランスの再構築

関節固定術(Arthrodesis)

PIP関節を固定

再発予防に有効

MIS(最小侵襲手術)

小切開で変形矯正

術後回復が早い傾向あり


槌趾(mallet toe)

ハンマー趾(hammer toe)と槌趾(mallet toe)は、いずれも足趾の変形ですが、関節レベルの違いによって区別されます。

ハンマー趾 vs 槌趾:構造と特徴の比較

項目 ハンマー趾(Hammer Toe) 槌趾(Mallet Toe)
変形部位 **PIP関節(近位趾節間関節)**が屈曲 **DIP関節(遠位趾節間関節)**が屈曲
状態 PIPが屈曲し、MP関節は伸展または正常 DIPが屈曲し、他の関節は正常
外観 中節が曲がり、指がくの字に見える 末節が下向きに曲がる
好発趾 第2趾に多い 第2〜5趾に発生しうる
原因 靴の圧迫、筋バランスの崩れ、外反母趾との関連 外傷、神経障害、靴の圧迫
症状 胼胝(たこ)、痛み、靴ずれ 爪先の痛み、靴との摩擦
治療 ストレッチ、装具、手術(PIP関節の矯正) パッド、靴調整、手術(DIP関節の矯正)

解剖学的なポイント
ハンマー趾では、長趾伸筋と屈筋のアンバランスにより、PIP関節が屈曲し、MP関節が伸展することもあります。

槌趾は、DIP関節の伸筋腱断裂や拘縮が原因となることがあり、特に外傷後に見られることがあります。

臨床的な見分け方
指の中間が曲がっている → ハンマー趾
指の先端だけが下向きに曲がっている → 槌趾


槌趾のタイプ別治療アプローチ

タイプ

特徴

治療法

腱性槌趾

伸筋腱の断裂

スプリント固定(6〜8週間)、保存療法が基本

骨性槌趾

骨折を伴う

骨片の整復・固定術(ピン固定など)

拘縮性槌趾

慢性変形・関節拘縮

関節固定術(DIP関節)、軟部組織リリース

保存療法の具体例
スプリント固定:DIP関節を伸展位で6〜8週間固定(腱性槌趾に有効)
靴の工夫:つま先が広く、圧迫の少ない靴を選択
パッド・インソール:摩擦や圧迫を軽減
ストレッチ:足趾の伸展運動、足底筋膜の柔軟性向上