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整形外科 外科 リハビリテーション科 |
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神経学的所見をどう読むか
徒手筋力テスト(manual muscle testing : MMT) 筋力の目安として徒手筋力テストがあります。 MMT 0−5の6段階で評価します。 MMT5 normal 強い抵抗+重力に抗して全可動域で動く MMT4 good 中等度の抵抗+重力に抗して全可動域で動く MMT3 fair 抵抗なしなら重力に抗して全可動域で完全に動く MMT2 poor 重力を除けば全可動域で動く MMT1 trace 関節は動かないが、筋収縮は認める MMT0 zero 筋収縮もまったく認めず *可動域が50〜100%未満でマイナスを、50%未満なら一段か低いランクでプラス表記
ECRL:extensor carpi radialis longus ECRB:extensor carpi radialis brevis EDC:extensor digitorum ECU:exensor carpi ulnaris APL:abductor pollicis longus EPL: extensor pollicis longus EPB:extensor pollicis brevis Ext.indicis:Extensor indicis FCR:flexor carpi radialis FDP:flexor digitorum profundus FDS:flexor digitorum superficialis FPL:flexor pollicis longus APB:abductor pollicis brevis FCU:flexor carpi ulnaris ADM:abductor digiti minimi
下垂足(drop foot) 腓骨神経麻痺で起こることが多いが、腰椎レベルの障害でも起こります。腰椎由来の麻痺との鑑別は股関節の外転(中殿筋、小殿筋、L5、S1、上殿神経)、足関節の外がえし(長短腓骨筋、腓骨神経)、足趾の底屈力(腓腹筋、ひらめ筋、脛骨神経、内がえしとして後脛骨筋、脛骨神経)をみます。 腓骨神経麻痺では腓骨筋力の低下はあるが、後脛骨筋と中殿筋は保たれています。 腰椎由来では、L4/5>L3/4での障害が多い。L5/S1外側病変でも起こる。ほかに胸腰椎移行部病変-円錐上部障害(T11/12〜T12/L1レベル) <頚髄症、頚部神経根症における障害高位の診断> 診断手順:症状、所見から頚髄症、頚部神経根症の診断→画像診断により圧迫因子を確認 脊髄を横断面でみると、中央部の灰白質由来の徴候(髄節徴候)と白質由来の徴候(索路徴候)とに別れる。頚髄症の症状はこれらの組み合わせで構成される。また脊髄の髄節と脊椎の高位とはずれがある。障害髄節高位由来の髄節徴候を把握することで頚髄症の高位診断が可能となる。 頚部神経根症の場合、高位診断は筋力、腱反射、感覚障害などに加えて、頚部痛、上肢痛、手指のしびれの局在が診断に有効。 画像所見があっても無症状のこともあるので、必ず神経学的な診断に基づくことが大切。 脊椎高位+1=髄節高位(運動神経と感覚神経は高位が更に少しズレている→運動と感覚障害が根障害と異なる範囲の違いが出る) *神経根症とも1髄節ずれている <頚髄症> 初発症状は手指のしびれで、両手同時のこともあるが、片手に生じてまもなく両手になることが多い。しびれの部位は移動せず、日によって異なることはない。両手のしびれに続いて、巧緻障害(手指のもつれ、書字障害、ボタンはめが困難、箸が使いにくい)がでる。 更に進行すると痙性歩行(足の引きずり、もつれ)がでる。排尿障害もでてくる。足の症状は、しびれも出るが、しびれずに温度覚障害(冷える、ほてる、風呂のお湯が熱く、また痛く感じる)がでることもある。
最初に、脊髄前・後角の灰白質が障害(髄節徴候)→次いで錐体路、脊髄視床路の障害(索路症状)の順に進行する。 診断の確定は、髄節徴候と索路徴候の両方が確認できること。 高位診断は、障害高位の髄節徴候を把握することによって可能。 1)初発症状の手のしびれがどこから始まったが重要。C3/4,C4/5高位なら髄節はそれぞれC5,C6の髄節障害で、全指にしびれが始まる。C5/6高位では髄節はC7となり母指を除いた尺側4指のしびれで発症する。C6/7高位では、髄節はC8となり、尺側2指あるいは小指のみ、もしくはしびれはないということになる。次いで、上肢腱反射、筋力低下、感覚障害の所見により高位診断をすすめる。 C6/7椎間の障害は希。この場合、C5/6タイプ、C6/7タイプ、胸部脊髄症型のいずれかの症状を呈す。 脊椎C3/4→髄節C5障害→全指にしびれ 脊椎C4/5→髄節C6障害→全指にしびれ 脊椎C5/6→髄節C7障害→母趾を除いた尺側4指のしびれ 脊椎C6/7→髄節C8障害→3パターン(尺側2指しびれ、小指のみしびれ、手指のしびれなし) <頚部神経根症の診断> 頸部の神経根症は、殆どが一側の後頚部〜肩甲帯の痛みで発症します。上肢の痛み、しびれ(30%弱)を伴うことがあります。 高位診断は、頸部痛の局在、しびれの部位などで判断する。 ・疼痛部位による高位診断:C5,C6肩甲上部、C7肩甲間部、C8肩甲部に多い。 ・上肢の症状別高位診断:C6上腕、肘、前腕の橈側痛、C7それらの後方、C8尺側、 ・手指の症状別高位診断:C5手指に症状なし、C6母指、C7示指または中指、C8小指(しびれの1番強い部位で判断する) ・腱反射:C5、(C6)神経根障害で上腕二頭筋腱反射低下、C7,(C8)神経根症で上腕三頭筋腱反射低下。 ・痛み刺激のルート 侵害受容器→DRG(後根神経節)→1,2へ 1.深部知覚(位置覚、振動覚)→(同側の)後索路上行→ 2.表在感覚(痛覚、温覚)→対側(数節上行)→外側脊髄視床路上行(脊髄前側方)→3,4へ 3.→新脊髄視床路(鋭い痛み)→視床→大脳皮質体性感覚野 4.→旧脊髄視床路(鈍い痛み)→視床→大脳辺縁系 ・運動の神経路 大脳皮質運動野→内包→中脳大脳脚→延髄錐体交叉(対側へ)→外側皮質脊髄路(側索)→髄節(前角)下位運動ニューロンと接合する。(下位ニューロンは前角から前根を経て筋肉へ) <脊髄障害部位による症状の鑑別> 1.索路徴候(long tract sign):錐体路徴候、後索障害、脊髄視床路障害 2.髄節徴候(segmental sign) <索路障害> 錐体路徴候、後索障害、脊髄視床路障害 1)錐体路徴候(側索、外側皮質脊髄路):運動麻痺、同側の筋力低下。下位ニューロンが生きているので筋萎縮は伴わない。上位ニューロンの障害により神経抑制が深部腱反射は亢進。錐体路は下行運動線維束で大脳皮質から側索を経て前角まで。(上位ニューロンを形成)外側からS、L、T、Cと順に層状構造形成しています。前角では下位ニューロンに接合。 2)後索障害 ・深部知覚(位置覚、振動覚)障害 ・識別性知覚障害 3)脊髄視床路障害 ・温痛覚障害(外側脊髄視床路) ・触覚障害(前脊髄視床路) ・膀胱直腸障害 *複合感覚:二点識別感覚、皮膚書字覚、立体認知、2点同時式別感覚があり、高度な感覚で触覚、痛覚といった感覚が正常な場合に複合感覚が障害されている場合は、視床より上位の障害の可能性があります。 <髄節徴候> 障害レベルの灰白質の異常。→下位運動ニューロンが傷害されるので、弛緩性麻痺、筋萎縮、線維束れん縮が生じます。前角細胞の障害か神経根の障害かは識別できない。 <脊髄内に局在する疾患の診断> 1.Brown-Sequard症候群(脊髄半側切断症候群) 脊髄のいずれか半側が障害された病態。障害部位以下の同側の運動麻痺(錐体路障害)と識別感覚・深部感覚(後索の障害)が生じ、反対側は表在感覚としての温痛覚の消失(脊髄視床路)。 反対側の温痛覚障害は、障害部位の数髄節下から見られる。これは脊髄後角で伝達された2次ニューロンが脊髄灰白質で反対側に交叉し、数髄節上行してから脊髄視床路に合流するため。 原因は、血管障害、脊髄炎、腫瘍、外傷など。T1-2胸髄病変では、病変と同側の節前性交換神経障害を生じることあり。典型例では、Honer症候群(病変と同側の縮瞳、眼瞼下垂、顔面発汗低下)が起こる。 2.前脊髄動脈症候群 前脊髄動脈は、脊髄前方の3分の2(後索・後角を除く)を支配しており、病変部以下の両側の錐体路徴候(通常は対麻痺)、解離性感覚障害(温痛覚は障害され、深部感覚は保たれる)、膀胱直腸障害となります。多くは血管障害に起因し、疼痛や帯状の締めつけ感とともに急激に発症します。 4.圧迫性脊髄症 頚椎症性脊髄症、後縦靭帯骨化症、黄色靱帯骨化症、脊髄腫瘍など、脊髄を圧迫する疾患によって引き起こされる病状のこと。 服部の分類が有名。
<偽性局在徴候について> 偽性局在徴候とは、神経学的所見から推定される病巣とは異なる部位に真の病巣があることをいいます。例えば、「神経学的所見としては脊椎の障害と推定されたが、実際には脳の障害であった。」など、通常とは異なる部位の疾患によって引き起こされている場合をいいます。 脊髄の各高位に出現する偽性局在徴候 1.大後頭孔近傍病変 手足の末梢にみられる筋萎縮・筋力低下。piano-playing fingers:両手水平位挙上で、萎縮した手指がピアノを弾くように震える。 2.頚髄レベルの病変で腰椎病変と誤診されるもの 頚椎レベルの病変(頚椎症性脊髄症、頚椎椎間板ヘルニア、頚椎黄色靱帯骨化症など)であるにもかかわらず、病気の初期に下肢に限局した症状症状のみが出現することがあります。花北(藤枝平成記念病院、脊髄脊椎疾患治療センター)によれば、初発症状として、間欠性跛行、下腿のしびれ、両下肢の脱力、大腿内側部痛などがでます。深部腱反射の亢進が認められることが多いので、身体所見をしっかり取ることが大切としています。 3.脊髄円錐部近傍病変 脊髄円錐部は、下肢運動系・知覚系に加えて排尿・排便機能に関する中枢が存在するので、ここの病変は多彩な症状を呈する。 →神経学的に上手く説明できない症例は、大後頭孔近傍病変か脊髄円錐部を念頭におく 4.脊髄馬尾病変にみられる偽性局在徴候 L1/2やL2/3などの高位のレベルの病変で、L5神経根症状がでることがあります。 5.いわゆる下垂足を呈する病変の多彩な分布 下垂足はL5神経根病変で起こることが最も多いが、他の疾患でも起こりえます。例:脳腫瘍、胸椎黄色靱帯骨化症、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症などがあります。 6.脊髄病変により頭蓋内病変が存在するかのような症状を呈する 脊髄腫瘍により正常圧水頭症となり、歩行障害、認知症、尿失禁の3徴候を示すことがあります。 7.排尿障害を呈する脊髄疾患がある 8.cervical angina 頚椎椎間板ヘルニアなどで、狭心症様発作を起こすことがあります。心電図などの心機能検査には異常が出ません。 参考:整形・災害外科 VOL60 No.5 2017 |
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本日のコラム78 口周りのしびれは脳梗塞かも知れません。→ただちに専門病院へ 朝、目が覚めたら口の周りがしびれていた。これは重要な症状で脳梗塞が生じた可能性が高いので最寄りの専門病院をただちに受診するようにしてください。MRIの検査をすると脳梗塞などの疾患の有無が分かります。超早期だとCTでは所見が無いことがありますので要注意です。口周りのしびれに加えて、片側上肢のしびれ感がでていれば、まず脳梗塞です。上肢のしびれは口のしびれに遅れて出てくることがあります。 さて、上肢のしびれだけだとどうでしょう?これは整形外科にも来院される可能性があります。朝起きたら、急にしびれていた。このような場合は、まず脳梗塞の有無を検討します。脳梗塞は急に症状が出ます。そして徐々に進行することがあります。ある日突然、起こった場合は脳梗塞を疑いただちに最寄りの専門病院へ行きます。ここでもたもたしていると脳梗塞の治療が十分できないので、可能な限り、早く受診することです。かかりつけ医の先生に診てもらうより直接、専門病院を救急受診した方が良いです。 手指だけのしびれ、尺骨神経のみの障害、橈骨神経のみの障害、通常は頚椎以下の末梢神経の障害とされる神経症状でも、特殊な脳梗塞では、同じ症状を起こすことがありますので、くれぐれも間違わないようにしてください。急速に起こった場合は、脳梗塞の可能性があります。 |
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