表紙に戻る
池田医院へようこそ
信頼とまごころの医療
からだにやさしい医療をめざして

整形外科 外科
リハビリテーション科

特発性大腿骨骨頭壊死症 idiopathic necrosis of femoral head

 骨はカルシウムに富んだ組織ですが、血流が保たれないと壊死を起こします。大腿骨の骨頭はもともと血が乏しく動脈硬化などが進むと血流が低下して壊死を起こします。壊死の段階では痛みは出ませんがつぶれ出すと痛みが出ます。

 昔は潜函病と言ってダイビングや潜函作業で高圧の状況下から急速に減圧を行うと血液中に大量に溶け込んでいた窒素が気化して血管が詰まる病気の一環として知られています。いまは急速減圧をすることは基本的にありませんので発症するケースは少なくなってきます。

 男性ではアルコールの多飲、女性ではステロイドの服用にて起こりやすいです。診断はレントゲンをまず行います。レントゲンで所見があまりない場合や、痛みが強い、経過が長い場合はMRIを行います。治療はまずは保存的治療として免荷、安静などを行います。症状が改善しない場合は、大腿骨内反骨切り術、大腿骨頭回転骨切り術、人工関節手術の適応となります。

特発性大腿骨頭壊死症は、明らかな外傷や基礎疾患がないにもかかわらず、大腿骨頭への血流が障害されて骨組織が壊死する疾患です。壊死そのものでは症状が出ないこともありますが、骨頭が潰れる(圧潰)ことで股関節痛が出現します。進行すると日常生活に支障をきたし、変形性股関節症へと移行することもあります。

- 日本では年間約2,000〜3,000人が新たに発症しており、30〜50代の働き盛りの年代に多く見られます。

- 男性ではアルコール多飲、女性ではステロイド使用が主なリスク因子とされます。
- その他、喫煙、自己免疫疾患(SLEなど)、臓器移植後の免疫抑制療法も関連が指摘されています。
- かつては潜函病(減圧症)の一症状としても知られていましたが、現在では急速減圧の機会が減り、発症頻度は低下しています。

■ 症状
- 初期には無症状であることが多く、壊死部が潰れることで初めて痛みが出現します。
- 痛みは股関節部に限らず、膝や腰、殿部に放散することもあります。
- 発症から症状出現までには数ヶ月?数年のタイムラグがあることが特徴です。

■ 診断
- X線検査では初期変化が見られないことが多く、MRIが最も感度の高い検査とされています。
- MRIでは帯状低信号域や壊死範囲の評価が可能です。
- 必要に応じて骨シンチグラフィーで他部位の壊死の有無も確認します。

■ 治療
保存療法(初期・軽症例)
- 免荷(杖の使用)や安静、体重管理、鎮痛薬の使用が基本です。
- ただし、保存療法では骨頭圧潰の進行を完全に防ぐことは困難とされています。

手術療法(進行例・保存療法無効例)
- 大腿骨内反骨切り術:壊死部を荷重部から外すように骨の角度を調整。
- 大腿骨頭回転骨切り術:骨頭を回転させて健常部を荷重部に移動。
- 人工股関節置換術(THA):壊死が広範囲または高齢者に適応。
- 再生医療:骨髄由来幹細胞などを用いた臨床研究も進行中です。

■ 生活上の注意点
- 長距離歩行や階段昇降、重量物の運搬を避けることが推奨されます。

- 杖の使用や生活動作の工夫により、股関節への負荷を軽減することが重要です。