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整形外科 外科
リハビリテーション科

遠位脛腓靱帯損傷 injuay of ITFL

足首のねんざと思っていたら、実はもっと深いケガかもしれません。

足首をひねったとき、「ただのねんざ」と思っていませんか?
実は、足首の少し上にある「遠位脛腓靱帯(えんいけいひじんたい)」が傷ついていることがあります。これは「ハイアンクルスプリン(high ankle sprain)」とも呼ばれ、スポーツ中のケガで起こることがあります。


前下脛腓靱帯(AITFL)と後下脛腓靱帯(PITFL)があります。いずれも果部骨折に合併することが多い。まれにスポーツ外傷では前脛腓靱帯の単独損傷(high ankle sprain)を起こすことがあり、脛腓間の解離が小さい場合は、診断が難しく、外側靱帯損傷などとの鑑別診断が重要です。

外旋ストレス検査で足関節やや上方の前下脛腓靱帯に痛みが生じれば、陽性。レントゲンでは左右差が重要です。(脛腓間の距離は個人差が大きいので)、はっきりしないものは超音波、CT、MRI。

典型例は外旋もしくは外転ストレスが原因となります。レントゲンにて骨折が無く、脛腓間の離開がはっきりしない場合は、外旋ストレステストを行い、前脛腓靱帯に一致した部位に疼痛が誘発されるかをみます。

<治療>

保存治療:脛腓間の開大が軽度、非荷重位で整復されている場合は、保存的治療を行います。脛腓間が拡大しないように、足関節軽度底屈位~中間位で3-4週間のギブス固定と免荷を行います。その後、足関節装具とし、荷重位レントゲンにて開大しないかを確かめながら、徐々に荷重をかけます。

脛腓間の拡大が無く、荷重歩行が可能な軽症例では、足関節装具やテーピング固定のみで、痛みが強くならない範囲で荷重を許可します。

<スポーツ復帰>

背屈位での踏み込み動作や回旋運動は、遠位脛腓靱帯を開大させる力が働くので、再損傷の危険性があります。スポーツへの復帰は、可動域や痛みなどを総合的に判断して慎重に決めていきます。

<手術>

スクリューやステイプルを用いて固定します。

最近ではAITFL補強術(スーチャーテープ使用)が注目されており、従来のスクリュー固定よりも生理的な安定性を保てると報告。

スクリュー固定は腓骨の自然な動きを妨げる可能性があり、動的固定(suture-buttonやテープ)が推奨される傾向に。


遠位脛腓靱帯損傷のGrade分類(重症度)

Grade 損傷の程度 臨床的特徴 治療方針の目安
Grade 1 靱帯の微細損傷(伸張) 軽度の腫脹・圧痛、明らかな不安定性なし 保存療法(装具・テーピング)で早期復帰可能
Grade 2 靱帯の部分断裂 中等度の腫脹・圧痛、軽度の不安定性あり ギプス固定+免荷、段階的荷重再開
Grade 3 靱帯の完全断裂または骨間靱帯損傷を伴う 明らかな不安定性、荷重困難、MRIで脛腓間離開あり 手術療法(スクリューやスーチャーボタン固定)を検討

補足ポイント

Grade 1〜2は保存療法の対象となり、POLICE処置+段階的リハビリが基本。
Grade 3は脛腓間の不安定性が強く、手術的固定が推奨されることが多い。
MRIやストレスX線、超音波による評価がGrade分類の精度を高めます。



遠位脛腓靱帯損傷の保存治療:最新の考え方(2024–2025)

保存治療の適応
Grade 1〜2(AITFL単独損傷または軽度の骨間靱帯損傷で、脛腓間の不安定性がない場合が対象。

MRIによる重症度分類が治療方針決定に有用。

Cotton testやFibular translation testなどの徒手検査で不安定性が否定されることが前提。

保存治療の実際

治療ステージ 内容
急性期(0〜2週) POLICE処置(保護・最適な荷重・冷却・圧迫・挙上)を基本とし、疼痛コントロールを重視。
荷重は疼痛に応じて制限。
固定 軽度例では半硬性装具(ウォーキングブーツなど)を使用。
中等度ではギプス固定(3〜4週)+免荷
が推奨されることも。
荷重再開 痛みが落ち着いたら段階的に荷重を再開
荷重位でのレントゲンや超音波で脛腓間の開大がないか確認しながら進める。
再発予防 アーチサポート付きインソールの使用が脛腓間のストレス軽減に有効。
テーピングや装具での補強も併用。

スポーツ復帰の判断

背屈位での踏み込みや回旋動作は脛腓靱帯に負荷をかけるため、慎重に評価。可動域、筋力、痛み、動的安定性を総合的に判断し、段階的な復帰プログラムを実施。