表紙に戻る
池田医院へようこそ
信頼とまごころの医療
からだにやさしい医療をめざして

整形外科 外科
リハビリテーション科

幼小児期の膝痛

 幼小児期の膝痛は多岐にわたる疾患の可能性があり注意を要します。特に股関節疾患で股関節の症状が無く膝や大腿部が痛むだけのこともあり知っていないと間違った診断をしてしまうことになります。更に白血病、神経芽腫、骨肉腫などの悪性疾患との鑑別も重要です。

<鑑別疾患>

 悪性疾患:白血病、神経芽腫、骨肉腫など
 化膿性関節炎、若年性特発性関節炎、円板状半月板、外傷、虐待、骨髄炎、血友病、成長痛、単純性股関節炎、ペルテス病、大腿骨頭すべり症など
 
 単純性股関節炎 Transient Synovitis of the hip

4-6才の学童期までの小児に多く見られる股関節の炎症です。原因はよく分かっていませんが先行するウイルス性疾患のあとで発症するケースも3割程度あるとされています。

股関節の痛みとそれによる跛行を認めます。38.5°以上の発熱やCRPが2.0mg/dlの場合は穿刺して細菌感染を除外診断します。通常は痛みに応じて局所の安静(松葉杖などによる免荷)を行い、希望により消炎鎮痛剤などを使います。局所安静をしっかりと行えば1週間ほど(場合により数週間)で改善します。長引く場合はペルテス病などの他の股関節疾患を考慮します。

診断はレントゲン撮影に加えて超音波断層撮影を行います。適時、血液検査。症状が継続する場合はMRIにて精査します。

血液検査で末梢血液に芽球などの異常が無く、貧血や血小板減少も認めず、LDHのみ高値のことがありますので注意が必要です。あるていど跛行をしていれば、骨盤~下肢全長をレントゲン撮影し、透亮像、骨膜反応がないかみます。

専門病院で抗がん剤を中心とした治療を行います。
 
幼小児期の白血病・悪性リンパ腫

幼小児期は急性リンパ性白血病が多く占めます。白血病は血液のがんであり骨髄内に白血病細胞が増殖し、貧血や皮下出血、労作時の息切れ、関節痛、骨痛、跛行を起こします。整形外科ではあまりみることはありませんが、関節痛、骨痛に加えて元気が無いなどの症状があれば、精査を行うように心がけます。


小児の股関節痛における主な鑑別疾患

疾患名 病態・特徴 臨床所見 検査所見 鑑別のポイント
化膿性関節炎 細菌感染による関節内炎症。進行が速く関節破壊を来す。 発熱、激しい疼痛、荷重不能、関節腫脹、発赤 CRP↑、WBC↑、関節液混濁・膿性、MRIで関節内液貯留・滑膜増殖 緊急対応が必要。Kocher criteria(発熱、CRP↑、WBC↑、荷重不能)で評価。
単純性股関節炎 ウイルス感染後に起こる一過性の滑膜炎。 軽度の疼痛、歩行可能、発熱は軽度またはなし CRP正常〜軽度上昇、関節液は漿液性、エコーで関節液貯留 自然軽快することが多い。経過観察で改善傾向。
ペルテス病 大腿骨頭の無血管性壊死。4〜8歳男児に多い。 跛行、股関節可動域制限(特に内旋・外転) X線で骨頭扁平化、MRIで早期壊死所見 初期はX線で異常がないことも。MRIが有用。
大腿骨頭すべり症(SCFE) 骨端線の脆弱性により大腿骨頭が後下方にすべる。思春期に多い。 股関節痛〜膝痛、跛行、外旋歩行 X線(frog-leg view)ですべりを確認 早期診断と免荷が重要。
若年性特発性関節炎(JIA) 16歳未満で発症する慢性関節炎。 朝のこわばり、関節腫脹、疼痛、発熱(全身型) ANA陽性(亜型による)、CRP↑、関節エコーで滑膜肥厚 6週以上の関節炎持続が診断基準。
神経芽腫の骨転移 小児の悪性腫瘍。骨転移で疼痛を呈することがある。 疼痛、夜間痛、全身状態不良 尿中VMA/HVA↑、画像で骨病変 股関節痛の原因としては稀だが、警戒が必要。
骨髄炎 骨への細菌感染。 発熱、局所の腫脹・圧痛、荷重困難 CRP↑、MRIで骨髄浮腫、骨シンチで集積 関節炎との鑑別にMRIが有用。
血友病 出血傾向により関節内出血を繰り返す。 関節腫脹、疼痛、外傷なし APTT延長、凝固因子活性低下 出血歴や家族歴が重要。
成長痛 夜間に下肢痛を訴えるが、日中は無症状。 両側性、圧痛なし、日中は元気 検査異常なし 除外診断。
虐待 不自然な外傷や骨折。 痛み、腫脹、説明と合わない外傷歴 X線で多発骨折、異なる時期の骨折 疑わしい場合は児童相談所へ通報。