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整形外科 外科
リハビリテーション科

距骨壊死 necrosis of talus

距骨が壊死を起こす病気です。もともと距骨は幅広い関節面を持つため血管の流入が制限されており、血液流入に乏しいと言われています。原因としては距骨骨折に合併したり、アルコールの多飲、ステロイド薬の投与などがあります。

症状は非特異的で足関節痛のみであり、痛みは強いです。骨壊死が進行し、骨折や骨破壊が進行すると腫脹や痛みが高度になります。急速に進行するケースがあります。

初期にはレントゲンでの所見がないことが多く、MRIで診断します。レントゲンでの経過は徐々に骨硬化像→圧潰がでてきます。

分類(J-STAGE報告より)

タイプ

特徴

Type I

関節面の陥没なし

Type II

距腿関節面のみ陥没

Type III

距踵関節面のみ陥没

Type IV

両関節面が陥没


壊死が疑われた場合、保存治療として完全免荷とします。PTB装具で免荷が有効です。骨壊死により挙ことの骨折や圧潰がある場合は、Blair法による手術を行います。

距骨壊死の保存療法(初期・軽症例)

1. 完全免荷(Non-weight bearing)
目的:壊死部への荷重を避け、骨の圧潰や変形を防ぐ
方法
松葉杖による免荷歩行
PTB(Patellar Tendon Bearing)装具:膝蓋腱で荷重を受け、距骨への負担を軽減

期間:通常6〜12週間、MRIでの骨髄浮腫の改善を確認しながら調整

保存療法の適応と限界

適応

限界

壊死範囲が小さい
関節面の陥没がない(JST Type I〜II)
痛みが軽度〜中等度

圧潰や骨折が進行した場合
痛みが強く日常生活に支障がある場合
手術療法(Blair法や人工距骨)を検討

PTB(Patellar Tendon Bearing)装具距骨壊死に対して有効な保存療法の一環として広く使用されています

PTB装具の距骨壊死における使用意義

使用される理由

距骨は血流が乏しく、壊死が進行しやすいため、完全免荷が極めて重要です。

PTB装具は膝蓋腱部で荷重を受ける構造により、距骨を含む足部への荷重を回避できます。

松葉杖と併用することで、両足を地面につけた安定した歩行が可能になり、筋力低下や廃用を防ぐ効果もあります。

適応と利点

項目

内容

適応

距骨壊死(初期〜中等度)
距骨骨折後の免荷管理

利点

- 距骨への荷重を回避
- 両足接地による安定性
- 筋力・持久力の維持
- 早期離床・社会復帰の促進

注意点

- 装着に慣れるまで違和感あり
- 装具の重さや見た目が気になることも

実臨床での使用例

距骨骨折後の両側PTB装具使用例では、完全免荷下での歩行訓練が可能となり、足関節拘縮の予防や可動域改善に寄与したと報告されています。

距骨壊死の保存療法においても、MRIでの経過観察と併用しながらPTB装具で免荷管理を行うことが推奨されています。
Blair法;壊死部分の除去、脛骨と残存した距骨、踵骨とを固定します。

手術療法(進行例・圧潰例)

術式

適応・内容

Blair法

壊死部切除+脛骨と残存距骨・踵骨の固定

脛踵関節固定術

距骨が完全に崩壊した場合

人工距骨置換術

患者ごとの3D設計によるセラミック製距骨の挿入

血管柄付き骨移植

若年者や再建希望例に選択されることも