遷延治癒・偽関節

遷延治癒・偽関節 delayed union / nonunion

遷延治癒 骨折後3-6ヶ月経過しても通常の予想される経過より治りが遅い場合をいう

偽関節 通常、6ヶ月を経ても骨癒合せずに不安定性や症状があるもの

用語

定義(2025年時点)

遷延治癒

骨折後3〜6ヶ月経過しても骨癒合が遅れている状態。部分的な癒合は進行しているが、通常より遅い。

偽関節

骨折後6ヶ月以上経過しても骨癒合が停止し、疼痛や不安定性が持続する状態。骨折端の動きが持続し、仮骨形成が不十分。

低出力超音波パルス療法(LIPUS)は本当に効果があるのか?

Bone Joint nerve 7.2015の記事に表題の記事があったので興味深く読みました。LIPUSとは弱い超音波を骨折部に当てると治癒を促進する作用があり、難治性の骨折(偽関節など)に保険適応があります。毎日、20分間照射すると骨癒合を促進できます。

新鮮骨折において、レントゲンで骨癒合を得るまでの期間は、脛骨骨幹部骨折(保存治療)でコントロール群が154日に対しLIPUS群は96日と35%短縮されています。髄内釘手術を行った例では、1999年のEmamiによる報告では効果なし、その後、2004年にでたLeungの報告(創外固定もしくは髄内釘)では、コントロール群が140日、LIPUS群が81日と42%短縮しています。

そのほか、新鮮骨折の保存療法では、橈骨遠位端77日→51日34%短縮、舟状骨骨折62日→43日31%短縮、鎖骨骨折49日→52日効果なしというデータでした。

そこで渡辺らは、国内の18歳以上の新鮮脛骨骨折(粉砕骨折、開放骨折)343例を調査した結果、受傷あるいは手術から21日以内に照射を開始することが重要としています。髄内釘固定例では骨癒合促進効果は短縮されなかった。プレート固定例は30%の短縮がみられた。これにより、新鮮例においても、保存療法、手術療法ともにLIPUSは骨癒合を促進する可能性が高いとしています。

LIPUSの重大な副作用は報告されておらず、開放骨折、粉砕骨折、喫煙者、栄養不良などの骨融合不全になりやすい患者には、補助療法としてLIPUSを試みる価値が高いとしています。

臨床効果(新鮮骨折)  2025年補足

骨折部位

治癒期間
(従来)

LIPUS使用時

短縮率

橈骨遠位端骨折

77日

51日

約34%

舟状骨骨折

62日

43日

約31%

脛骨骨幹部骨折(保存)

154日

96日

約38%

鎖骨骨折

49日

52日

効果なし

髄内釘固定例では効果が限定的。
プレート固定例では約30%短縮。

エビデンスの再評価(2020年代以降)

肯定的報告
治癒期間の短縮(最大40%)
偽関節に対する骨癒合率:67〜90%

否定的・慎重な見解
AAOS(米国整形外科学会):急性骨折への推奨を撤回
NICE(英国):通常診療での使用は非推奨
Cochraneレビュー(2023):エビデンスに不確実性あり
結論:新鮮骨折へのルーチン使用は推奨されず、偽関節や遷延治癒など高リスク症例に限定的に使用するのが妥当とされる。

遷延治癒・偽関節

遷延治癒・偽関節に対してLIPUSは有効と報告されています。遷延治癒・偽関節に対し追加手術なしに骨癒合を得られたのは、遷延治癒の90%、偽関節の84%としています。(脛骨偽関節の自然治癒率は5-30%)明らかにLIPUSは効果があると考えられます。

*LIPUS照射を行っても1年以内に治癒しない例を検討した結果、成績不良因子としては以下の通り
1.骨折部の不安定性、固定破綻
2.骨折部の最大間隙8-9mm以上
3.萎縮性偽関節
4.髄内釘固定

このような因子を複数含む場合は、LIPUS単独での骨癒合はあまり期待できず、手術療法を優先すべきとしています。
 *手術療法 再内固定術(髄内釘等)、骨移植(血管柄付き骨移植も含む)、骨皮質剥離手術

難治性偽関節の分類
肥厚性偽関節 骨折端の血行が豊富で仮骨(修復された新しい骨)は形成されているが骨癒合が得られていない
 萎縮性偽関節 骨折端の血行に乏しく線維組織があり仮骨はほとんど認められない
骨欠損型 一部の骨片が摘出され,骨折部に隙が存在する
感染性偽関節

非排膿型 3ヶ月以上膿(うみ)の排出がなく鎮静した状態にある「静止感染型」と、3ヶ月以上膿(うみ)の排出はないが症状が認められる「活動型」がある

排膿型 骨折端の血行に乏しく線維組織があり仮骨はほとんど認められない