表紙に戻る
池田医院へようこそ
信頼とまごころの医療
からだにやさしい医療をめざして

整形外科 外科
リハビリテーション科

距骨滑車骨軟骨損傷 osteochondral lesions of the talus

足関節を捻挫すると脛骨と距骨が関節面で衝突することがあります。その場合、捻る方向によって距骨の天井部分の内側後方(内反底屈)、外側前方(外反背屈)のいずれかが損傷します。

軽度のものを含めて捻挫の35%ほどに何らかの軟骨損傷が起こっているという文献もあり、比較的よく起こっていると考えられます。また非外傷性のものもあり循環障害などに起因すると考えられています。

原因と病態

原因

内容

外傷性

足関節捻挫時に脛骨と距骨が衝突し、距骨の軟骨が損傷。
内反底屈 → 距骨内側後方、外反背屈 → 距骨外側前方が損傷しやすい。

非外傷性

血流障害、靭帯弛緩、代謝異常などによる軟骨下骨の虚血性変化。

慢性足関節不安定症(CLAI)

足関節の不安定性が繰り返されることで軟骨に慢性的な摩擦が加わる。

約50%の足関節捻挫に何らかの軟骨損傷が合併しているとされます。

レントゲン撮影では角度の問題で写らないこともありますので、伸展位、屈曲位を追加します。早期診断にはMRIが有効です。
 
レントゲン分類として Berndt and Harty分類が用いられます。

 Berndt&Harty分類
 stage1 距骨表層の変化
 stage2 部分剥離
 stage3 転位の無い完全剥離
 stage4 剥離片が180度シフト
 
 注:嚢胞はこの分類には入っていない

<治療方針>
レントゲン所見によるBerndt&Harty分類

骨端線閉鎖前のstage1,2は免荷治療、改善しない場合は鏡視下ドリリング等

骨端線閉鎖後のstage1,2は保存治療やドリリングは効果が無いことが多く、骨軟骨固定術

stage3以上は骨軟骨固定術。自家骨軟骨移植 術後6週間免荷、12週で全荷重、6ヶ月後競技復帰

新鮮例のStage1,2とStage3(内側例)は約6週間の免荷ギプス固定

新鮮例でStage3(外側例)、Stage4の加えて陳旧例のほとんどは手術療法の適応

MRIの分類による治療方針

Hepple分類(MRI所見に基づく)

ステージ

所見

解説

Stage I

軟骨表面は保たれているが、軟骨下骨に浮腫や信号変化あり

初期の損傷。軟骨はまだ連続性を保っており、保存療法が有効なことが多い。

Stage IIa

軟骨下骨に骨折線と浮腫を伴う

軟骨は保たれているが、骨折と炎症反応が存在。

Stage IIb

骨折はあるが浮腫は認められない

慢性化の可能性あり。骨折線はあるが炎症は沈静化している。

Stage III

遊離体があるが転位なし

軟骨片が完全に剥離しているが、元の位置にとどまっている

Stage IV

遊離体が転位し、関節内に浮遊

関節内に遊離体が存在し、症状が強くなる。手術適応となることが多い。

Stage V

軟骨下嚢胞形成

慢性化し、骨内に嚢胞が形成されている。変形性関節症への進行リスクが高い。


Hepple分類(MRI)ごとの治療方針

Heppleステージ

病態の概要

主な治療方針

備考

Stage I

軟骨表面は保たれているが、軟骨下骨に浮腫や信号変化あり

保存療法(免荷、装具、NSAIDs)
PRPやCBMAなどの生物学的治療も検討

骨端線閉鎖前は保存的に改善することが多い

Stage IIa

軟骨は保たれているが、軟骨下骨に骨折線と浮腫あり

保存療法(免荷ギプス6週間)
改善なければ関節鏡下ドリリング

MRIで骨髄浮腫が強い場合は早期介入を検討

Stage IIb

骨折線はあるが浮腫は消失(慢性化)

関節鏡下ドリリングまたは骨軟骨固定術

骨端線閉鎖後では保存療法の効果が乏しい

Stage III

軟骨片の完全剥離(転位なし)

骨軟骨固定術
または自家骨軟骨柱移植(OATS)

内側病変は保存的に経過観察することもあるが、外側病変は手術適応が高い

Stage IV

剥離片が転位し、関節内に遊離

自家骨軟骨移植(OATS)
またはスキャフォールド移植

遊離体摘出+骨床処理が必要

Stage V

軟骨下嚢胞形成

嚢胞掻爬+骨移植
または生物学的スキャフォールド使用

変形性関節症への進行リスクが高く、再建術が必要

補足ポイント

骨端線閉鎖前のStage I–IIでは保存療法が第一選択。
骨端線閉鎖後のStage IIb以降では、関節鏡下ドリリングや骨軟骨固定術が推奨される。

Stage IV–Vでは再建術(OATSやスキャフォールド移植)が必要となることが多い。

慢性足関節不安定症(CLAI)を合併する場合は靭帯再建術の併用が予後改善に寄与する可能性あり