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リハビリテーション科

骨粗しょう症 osteoporosis

骨を構成する成分が減ってしまってもろくなってしまいます。骨粗しょう症があると骨折が起こりやすく、大腿骨頚部骨折や脊椎の圧迫骨折などを発症します。

日頃の予防はカルシウムの摂取、運動、日光浴です。運動は剣道、バスケット、バレーボールなど骨に振動を与えるものが良く、水泳や自転車は効果がほとんどありません。高齢の方で運動不足を感じられる場合は散歩がよいでしょう。もちろん好きな運動(振動のあるものに限る)でも結構です。継続することが必要なので楽しみながら出来るものがよいです。

運動は心肺機能や筋力の強化にもつながりますのでお勧めします。

こういった対応をしっかり行った上で、骨量が少ない方は骨粗しょう症の治療を行います。
 
 
骨粗しょう症(骨粗鬆症)は文字通り、「骨」が「粗」くなって「鬆」(す)が入ることです。鬆(す)とは均一な空間内に出来た隙間を意味します。従って骨粗鬆症とは、骨に鬆(す)が入りがもろく弱くなった病状を表しています。英語表記では、osteoporosisと書きます。osteo「骨の」、porosis「空間に穴が空く」という意味です。

骨は常に吸収され、新生されて入れ替わっています。骨を吸収するのが破骨細胞で、骨を作るのが骨芽細胞といいます。この骨形成と吸収のバランスが保たれることで、ほぼ一定に維持されています。逆にバランスが崩れ、骨吸収が上回ると骨粗鬆症となってしまいます。実際には非常に複雑なメカニズムで骨代謝のカップリングが行われています。

ヒトの骨量は20歳代で最大に達し、女性の場合は閉経期まで一定に保たれます。男性は閉経がないため、高齢でも比較的正常値を保ちます。

<骨粗鬆症の病態>

骨粗鬆症は、骨強度の低下により骨折のリスクが増大した骨格系の疾患と定義されます。骨強度には骨密度と骨質の2つの要因があり、骨質は骨微細構造、石灰化、機質などにより規定されるが、臨床的な評価は難しい。従って定量的に計測できる骨密度が骨粗鬆症の程度を表す指標として用いられています。 
 
<骨粗鬆症の種類>

原発性:閉経や加齢により破骨細胞による骨吸収が骨芽細胞による骨形成を上回り、骨量が減少する
続発性:副甲状腺機能亢進症、甲状線機能亢進症、Cushing症候群、ステロイド性
 
<診断基準と薬物開始基準>
まず、続発性であるか否かを診断し、続発性の場合は原因となっている疾患の治療を行います。

原発性骨粗鬆症
骨粗鬆症の薬物治療を開始する基準は
*脆弱性骨折が大腿骨近位部骨折または椎体骨折がある
*脆弱性骨折が大腿骨頚部、椎体以外にある
 →YAM80%未満
*脆弱性骨折はないが、YAM70%以下
*YAM70%~80%で両親いずれかの大腿骨頚部骨折、FRAX(骨折リスク評価ツール)で主要骨粗しょう症性骨折10年確率15%以上

骨粗鬆症の治療経過観察は骨量測定、骨代謝マーカー、脊椎レントゲン撮影などを定期的評価に加えてQOLや骨折リスクに対する評価を行う
 
<骨代謝マーカーを用いた薬剤の選択>

骨粗鬆症の診断の確定
 ↓
骨代謝に影響する薬剤を確認(服用があれば、少なくとも1ヶ月は中止。ビスフォスフォネートは少なくとも3ヶ月~6ヶ月休止)
 ↓
骨吸収マーカー、骨形成マーカーの測定
 ↓
1.骨吸収マーカーが基準値上限以内:骨折の有無、骨量の程度、危険因子、合併症などを考慮して薬剤を選択

2.いずれかのマーカーが基準値の上限以上→転移性骨腫瘍などの骨疾患や骨・Ca代謝異常の再確認:あり→3へ、なし→4へ

3.基礎疾患の治療を優先

4.骨吸収マーカーが基準値上限以上→骨吸収抑制作用の薬剤
  骨形成マーカーが基準値以上→骨折の有無、骨量の程度、危険因子、合併症などを考慮して薬剤を選択
  

<骨粗鬆症の薬物治療における骨代謝マーカー(病態改善効果を判定するのマーカー)>

原発性骨粗鬆症診断の確定
 ↓
骨代謝マーカー測定による治療薬の選定#1(1,2,3,4、5)
 ↓(薬剤別効果判定のマーカー)
1.骨代謝評価困難:ビタミンD3(エルデカルシトールを除く)、イブリフラボン、カルシウム、カルシトニン

2.ucOC:ビタミンk2

3.PTH(テリパラチド):P1NPまたはBAP(骨型アルカリフォスファターゼ)→テリパラチドは治療開始 1-3ヶ月後のP1NP上昇が有効

4.骨吸収マーカー(NTX,CTX,DPD,TRACP-5b):ビスホスホネート#2、SERM、エルデカルシトール、エストロゲン、デノスマブ

5,治療薬未確定:上記すべての検査から吸収マーカーと形成マーカーをそれぞれ1種類を選択

*ucOC:骨粗鬆症におけるビタミンK2 剤の治療選択目的で行った場合または治療経過観察を行った場合に算定できる。ただし、治療開始前においては1 回、その後は6 ヵ月以内に1 回限り算定できる。

#1 ビスフォスフォネート服用者は少なくとも6ヶ月、その他の骨粗鬆症治療薬は1か月休薬してから測定
    テラバチドによる治療については未確立。骨折発生時には24時間以内に測定

#2 長期ビスフォスフォネート治療予定者は、骨吸収マーカーとBAPあるいはP1NPを測定
 
<実地診療における治療継続性の判断>

骨粗鬆症のにおける薬物治療(骨吸収抑制剤) 効果判定のながれ
1.治療開始前に骨吸収マーカー・骨形成マーカーを測定
2.投与開始3-6ヶ月後に骨吸収マーカーを治療効果評価のために再測定(保険適応は投与開始6ヶ月以内)

→骨吸収マーカーが最小優位変化(MSC)を越えて変化する。または閉経前女性の基準値内に維持されている・・・・現在の治療を継続→3へ

→骨吸収マーカーが最小優位変化(MSC)を越えて変化せず、閉経前女性の基準値内に達しない・・・原因の排除、原因がなければ薬物の変更も検討

3.6ヶ月~1年程度の間隔で骨形成マーカーを再測定
→基準に達しない→薬物の再検討
→基準値内に維持される→現在の治療を継続
→基準値の下限値以下に抑制→長期に渡れば休薬、中止などを考慮

*保険診療では、骨吸収マーカー(例:NTX)は、骨粗鬆症の診断時1回、治療開始後6ヶ月以内に効果判定の目的で1回、投薬を変更ご6ヶ月以内に1回と制限されています。

*また3-6ヶ月に一度、血液検査や尿検査を行うようにします。

*脊椎X線に基づく治療評価は、経過中に新規骨折の有無が重要です。  

*骨代謝マーカーは骨吸収抑制剤を用いている場合は、治療開始約3ヶ月で骨吸収マーカーが低下します。骨形成マーカーはさらに3ヶ月ほど遅れます。したがって、治療開始後、3-6ヶ月後に骨吸収マーカーを、開始6-12ヶ月後に骨形成マーカーを測定することが望ましい。

<薬剤の選択、継続について>

原則、単剤で開始し、その後の経過観察で効果が不十分、頭打ちの場合や、重症例、骨折リスクが高い場合は、より効果の高い薬剤へ変更するか、作用機序の異なる薬剤を併用します。アレンドロネート(フォサマック、ボナロン)と活性型D3との併用によって、治療開始早期から新規椎体骨折抑制効果が認められています。特に既存椎体骨折2つ以上、SQグレード3の椎体骨折を有する場合は、併用効果が高いことが明らかになっています。

<薬物治療実施期間>
 
 いつまで薬物治療を行うかは、コンセンサスはなく、基本的には効果と安全性が確認されている3-5年程度は問題ないとされています。長期治療を行う場合は、リスクとベネフィットを勘案します。特にビスフォスフォネートは投与期間3-5年とし、5年以上では効果が頭打ちするとされています。それ以降はケースバイケースで重症例や多発圧迫骨折例では継続される場合もあります。継続が必要でも可能であれば、1年程度の休薬を行うのがよいとする意見もあります。

*副甲状腺ホルモンのテリパラチドは、生涯にわたって2年間(連日投与製剤)、あるいは18ヶ月(週1回投与製剤)でのみ投与が認められています。治療期間後には他剤へ切り替えます。

参考:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015


<新しい薬剤の評価>
1.テリパラチド酢酸塩:ヒト副甲状腺ホルモンの断片で、主に海綿骨骨密度を強力に増加させます。連日投与と週1回製剤があります。

2.デノスマブ:破骨細胞文化に必要なRANKLと結合することで骨吸収を抑制。顎骨壊死は6年間、2,343例のうち6例の報告。

3.イバンドロネート:静注可能なアミノビスフォネート、経口投与が困難な患者。

生活習慣病と骨粗しょう症との関連

続発性骨粗鬆症のうち疾患関連骨粗鬆症の代表例として生活習慣病関連骨粗鬆症が位置づけられており、コントロール不良の2型糖尿病、stage3の慢性腎臓病(CKD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、高血圧、脂質異常症などがあります。

慢性腎臓病(CKD)ではstageG3まではビスフォスフォネートの有効性と安全性はおおむね問題ない。GFR35ml/min以下では十分な検討が成されておらず、今のところ推奨されていない。
 
<ステロイド性骨粗鬆症>

薬物介入を考慮:グルココルチコイド用量、投与期間:5mg/日以上、少なくとも3ヶ月。→%YAM80%以下、毎年骨量測定、既存椎体骨折ありは投薬。カルシウム、ビタミンD補給(全例)。
ビスフォスフォネートを第1選択薬。第2選択として活性型ビタミンD3,ビタミンK2。

薬物管理の流れ

経口ステロイドを3ヶ月以上使用中もしくは使用予定
 ↓
一般的指導
 ↓
危険因子の評価(既存骨折、年齢、ステロイド投与量、骨密度)
スコア3以上 薬物治療:第1選択:アレンドロネート、リセドロネート。代替え治療薬としてテラパラチド、イバンドロネート、α-カルシドール、カルシトリオール
スコア3未満 経過観察 スコアを用いた定期的な骨折リスク評価(6-12ヶ月毎に胸腰椎単純レントゲン撮影、骨密度測定)

 
危険因子 <スコア
既存骨折 なし
あり
年齢 50未満
50-65未満
65以上
ステロイド
投与量
PSL換算mg/日
5未満
5-7.5未満
7.5以上
腰骨密度
 %YAM
80以上
70-80未満
70未満
(ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン2014年度改訂版)


薬剤性骨粗鬆症(ステロイドをのぞく)

薬剤性骨粗鬆症を引き起こす可能性のある薬剤
アロマターゼ
阻害剤
乳がん  アリミデックス
フェマーラ
アロマシン
LH-RHアゴニスト 乳がん
前立腺癌  
リュープリン
ゾラデックス
抗アンドロゲン薬 前立腺癌 カソデックス
オダイン
チアゾリジン
誘導体  
2型糖尿病 アクトス
SSRI うつ病 パキシル
ルボックス
ジェイゾロフト
抗けいれん薬 てんかん アレビアチン
デパケンなど
ワルファリン 血栓塞栓症 ワーファリン
ヘパリン 血栓塞栓症 ヘパリン
ループ利尿剤 浮腫
高血圧症
ラシックスなど
プロトンポンプ
阻害剤  
消化性潰瘍
逆流性食道炎  
タケプロン
ネキシウム
カルシニューリン
阻害剤
臓器移植 ネオーラル
プログラフ

骨粗鬆症性椎体圧迫骨折

<分類:SQ法 半定量的評価法>
椎体の形態異常でGrade分類されています。Grade1以上なら骨粗鬆症性椎体圧迫骨折(OVF)と診断されます。(もちろん、骨粗鬆症がベースに存在することが必要)

単純X線像にて、目視で前壁、中央、後壁のいずれかが椎体高の減少
Grade1 20~25%以上
Grade2 26~40%
Grade3 41%以上

*仰臥位と立位での骨折椎体の可動性は30%程度

<MRI>
圧迫骨折後、1年を経てもT1低信号、T2で高信号を示すこともあるので受傷時期の特定はある時点の1回のMRIでは困難。 1ヶ月後に再検査して経時的に比較するとよい。

一般に受傷から1ヶ月間で、T1強調像は低信号のエリアが拡大しピークを形成します。
従って、2回目(初回検査より1ヶ月後)のMRIで、T1強調像において

低信号が拡大→初回検査時の時点で受傷2週間以内
低信号が縮小→初回検査時は受傷1ヶ月ごろと推察される

*癒合不全を起こし易いのは、T2限局性高信号あるいは広範囲低信号およびT1広範囲低信号で起こりやすい。
*悪性腫瘍を疑った場合は、受傷2ヶ月以降のMRIや生検を検討

重要:病的骨折はMRIで、急性期のT1,T2強調像では鑑別困難とされている。理由は椎弓根の信号の変化や信号変化の辺縁不整像、造影効果などは骨粗鬆症性椎体圧迫骨折受傷後2ヶ月頃までみられるため。

<投薬のポイント>
骨密度は重要ですが、椎体骨折あるいは大腿骨近位骨折の既往がある患者には、急性期、慢性期を問わず、骨粗鬆症を投与します。(骨粗鬆症が起こりうる年齢、疾患があることが条件であろう。)

<無痛性椎体圧迫骨折>
骨折歴と身長低下が重要。椎体骨折の6割は無痛性です。身長の低下は重要で、20歳頃に比べて2㎝以上になれば、椎体骨折が存在します。また円背が進行すれば椎体骨折が起こっている確率が高いとされています。

<薬物治療>
Aランク:3年間の大規模臨床試験で骨折が優位に減少したエビデンスがある薬剤
エルデカルシトール(エディロール)
ビスホスホネート
SERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)
副甲状腺ホルモン
抗RANKL抗体(デノスマブ→商品名プラリア)

*Aランク以外の薬剤が必ずしも「治療効果がない」というわけではありません。

<第一目標>
 第1目標は骨折の予防ですが、除痛も重要です。
<使い分け>
椎体骨折がない 比較的若い方はSERM
椎体骨折が1-2個 ビスホスホネート、デノスマブ
椎体骨折が多発(3個以上) 副甲状腺ホルモン

大腿骨近位骨折 Aランク ビスホスホネートのアレンドロネートとリセドロネート、抗RANKL抗体のデノスマブ→後期高齢者

*A判定の薬剤がつかえないときは、「まだ証明されていない」C判定の薬剤を使うことで骨折抑制効果は期待されますし、無治療で放置することは避けます。

  骨密度 椎体骨折 非椎体
骨折 
大腿骨
近位部
骨折 
活性型ビタミンD3 アルファカシトール B B B C
エルデカルシトール
ビスホスホネート アレンドロネート
 フォサマック
 ボナロン
A A A A
リセドロネート
 アクトネル
 ベネット
A A A A
ミノドロネート
 ボノテオ
 リカルボン
A A C C
イバンドロネート
 ボンヒバ
A A B C
SERM(エビスタ、ビビアント)
選択的エストロゲン
受容体作動薬
ラロキシフェン
 エビスタ
A A B C
>バゼトキシフェン
 ビビアント
A A B C
カルシトニン エルカトニン B B C C
副甲状腺ホルモン テリパラチド A A A C
テリパラチド酢酸塩 A A C C
抗RANKL抗体 デノスマブ
 プラリア
A A A A
ビタミンK メナテトレノン
 グラケー
B B B C
骨密度A:上昇効果ある B:上昇効果を示した報告がある C:上昇効果があるとの報告がない
骨折 A:抑制する B:抑制するとの報告がある C:抑制するとの報告がない

主な骨粗鬆症治療薬の有効性評価(骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン2015より)
  
<食事と骨粗鬆症>

カルシウム摂取は重要ですが、1日の踵腓エネルギーに見合う食事量が取れているか、さらには適正体重が維持されているかどうかがより大切です。70歳以上の適正体重はBMIで21.5-24.9です。朝昼晩三食がしっかりと摂れているか、また栄養バランスがよいかどうか。低栄養、低体重では骨粗鬆症になってしまいます。動物性・植物性タンパクの摂取を含めた食事量と適正体重をチェックし、食事指導を行います。これらの後に、はじめてカルシウム、ビタミンD、ビタミンKの摂取の話になります。

タンパク源である魚や肉は最低でも1日1回は摂取することが必要で、できれば、朝は卵、昼は魚、夜は肉と形で食べるのが大事です。

<運動と骨粗鬆症>

骨粗鬆症の予防に運動はとても効果的です。特に骨に振動が加わる運動がお勧めです。高齢の方は歩くのが一番適しています。水泳は骨に振動が起こらず効果がありません。また転倒防止のために、腹筋や背筋加えて下肢筋力を強化するのがよいでしょう。実際には年齢や筋力などを勘案して運動メニューを作成し指導します。
  
 
 本日のコラム27 骨は硬ければ良い?(骨粗しょう症)

みんなが長生きする時代になり、骨がスカスカになる骨粗しょう症が社会問題となっています。骨粗しょう症の予防は、運動、カルシウムの摂取、日光浴が大切です。ところで骨の評価には「固さ」「質」があります。固さはカルシウムの量で測定できますが、質は今のところ測定する手段が無く、医療機関や健康診断では固さを測定しています。

固くてももろい骨もありますので、単純に骨量が増えたからといって骨の質が上がった訳ではありません。私見ですが、骨の質を良くするには、食事で十分なタンパク質を摂ること、継続して運動をすることと考えています。運動の種類は、骨に振動の伝わる散歩がよいでしょう。もちろん可能な方はジョギングやランニング、そのほか跳んだり跳ねたりするスポーツも効果的です。水泳は骨に振動が伝わらないので、骨粗しょう症の改善にはなりません。

長期に骨量を計測している方をみていると、やはり歩行などの運動が十分確保されていて、活動性が高い方は骨の減り方もゆっくりで、骨のお薬を併用することによって、骨量が増えることもよくあります。
 
 
本日のコラム47 骨粗しょう症の運動療法

骨粗しょう症の骨折予防には、栄養指導、薬物治療、運動療法の三つが重要です

<背筋強化>

閉経後女性における運動で骨量維持、増加に効果があるのは、背筋強化訓練です。背筋強化訓練とは、腹臥位で最大背筋力の30%の負荷を背負って行います。(1日10回、週5回)これは背筋力を鍛えることにより、椎体を刺激し骨量も増加させる効果があります。脊椎圧迫骨折が1箇所以下の場合によい適応。

<転倒防止>

運動療法により高齢者の骨折リスクは66%減少するとされています。代表的なバランス運動は、フラミンゴ療法で、開眼、片足立ち、片脚につき1分、1日3回行います。また重心の移動をスムーズにさせるため、左右の足を交互に上げて、重心移動を行う運動も効果的です。転倒予防には、下肢筋力の強化並びにバランス力の強化を行います。
 
 
本日のコラム104 骨粗しょう症

<概念と定義>
骨密度低下と骨質劣化の結果、骨強度が低下し、骨折しやすくなる疾患

<疫学>
患者数1280万人で、骨折発症率は女性が男性の3-4倍

<成因>
加齢や閉経などに伴う骨吸収亢進と酸化ストレス・糖化による骨基質の劣化

<予後>
骨粗鬆症とそれによる骨折はQOL低下、不動化、死亡リスクの上昇を招く

<診断手順>
医療面接、身体診察、骨評価、血液、尿検査(骨代謝マーカー測定を含む)の結果から総合的に判断する

<骨評価>
診断のための骨密度測定にはDXAを用い、腰椎と大腿骨近位部で測定する
1.骨密度がYAM(若年成人平均)の70%以下の場合(原則として腰椎または大腿骨近位部骨密度とする。)
2.脊椎圧迫骨折または大腿骨頚部骨折の脆弱性骨折がある場合
3.それ以外(手関節、肋骨など)の脆弱性骨折があり、YAMが80%未満の場合
    (骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版)

<DXAの適応>

・骨粗鬆症の治療を行う可能性がある

・65歳以上の女性、危険因子を有する65歳未満の閉経後から閉経周辺期の女性
*危険因子:過度のアルコール摂取(1日3単位以上、1単位エタノール8-12g)

・70歳以上の男性、危険因子を有する50歳以上70歳未満の男性
・脆弱性骨折を有する症例(重症度判定のため)
・低骨密度・骨量減少をきたす疾患に罹患、またはそれを引き起こす薬剤を投与されている成人

診断のための骨量測定は、DXAで行い、腰椎と大腿骨近位部の両部位での測定が望ましい。
診断は原則として腰椎骨密度を用いますが、高齢者で腰椎の測定が行えない場合は、大腿骨近位とする。

腰椎多発性圧迫骨折や両股関節術後、強度変形脊椎、極度の肥満など、腰椎、大腿骨近位部での測定が適当でない場合は、前腕骨で行う。

*副甲状腺機能亢進症では、橈骨骨幹部(1/3橈骨遠位)で行うのが最適。

<椎体骨折の診断>

椎体骨折の判定および類縁疾患との鑑別にX線写真、MRIが有用

椎体変形の半定量的評価法(SQ法)

グレード0 正常椎体 椎体高/椎体面積
グレード1 軽度の骨折 20-25%低下/10-20%減少
グレード2 中等度の骨折 25-40%低下/20-40%減少
グレード3 高度の骨折 40%以上低下/40%以上減少

<骨粗鬆症の診断基準>

脆弱性骨折あり→骨量にかかわらず→骨粗鬆症

脆弱性骨折なし

→YAM70%未満 または脊椎X線で骨粗鬆症化(従来の骨萎縮度判定基準で行う)あり→骨粗鬆症
→YAM70%以上80%未満 または 疑いあり →骨量減少
→80%以上 かつ なし →正常

*脊椎X線撮影による骨萎縮度判定は再現性に乏しいとの指摘があり、骨評価では定量的な骨密度測定を優先する。

*骨密度は、国際的には大腿骨近位部の測定が標準

<検診>

骨粗鬆症疑い例や予備軍の早期発見・早期介入のためのスクリーニング

骨量測定

YAM80%未満 要精査
80%以上90%未満 要指導
90%以上 骨粗鬆症の危険因子 あり 要指導 なし 異常なし

危険因子
 ・除去できない危険因子
  加齢、性(女性)、人種、家族歴、遅い初潮、早期閉経、過去の骨折

 ・除去できる危険因子
  カルシウム不足、ビタミンK不足、ビタミンD不足、リンの過剰摂取、食塩の過剰摂取、極端な食事制限、運動不足、日照不足、喫煙、過度の飲酒、多量のコーヒー

<薬物治療開始基準>

 骨折の危険因子があれば、骨量減少の段階から薬物治療を始める

<診断基準と薬物開始基準>

 まず、続発性であるか否かを診断し、続発性の場合は原因となっている疾患の治療を行います。

 原発性骨粗鬆症で骨粗鬆症の薬物治療を開始する基準は
*脆弱性骨折が大腿骨近位部骨折または椎体骨折がある
*脆弱性骨折が大腿骨頚部、椎体以外にある→YAM80%未満
*脆弱性骨折はないが、YAM70%以下
*YAM70%~80%で両親いずれかの大腿骨頚部骨折、FRAX(骨折リスク評価ツール)で主要骨粗しょう症性骨折10年確率15%以上

骨粗鬆症の治療経過観察は骨量測定、骨代謝マーカー、脊椎レントゲン撮影などを定期的評価に加えてQOLや骨折リスクに対する評価を行う。
 
本日のコラム105 骨粗しょう症 食事指導

<骨粗しょう症の治療時における食事指導>

1.推奨される食品
 ・カルシウムを多く含む食品:牛乳、乳製品、小魚、緑黄色野菜、大豆、大豆製品
 ・ビタミンDを多く含む食品:魚類、キノコ類
 ・ビタミンKを多く含む食品:納豆、緑色野菜
 ・果物と野菜
 ・タンパク質:肉、魚、卵、豆、穀類
 
2.過剰摂取を避けた方がよい食品
 ・アルコール
 ・リンを多く含む食品:加工食品、一部の清涼飲料水
 ・カフェインを多く含む食品:コーヒー、紅茶
 
 *推奨量はカルシウム700~800mg、ビタミンD10-20μg、ビタミンK250~300μg

 カルシウム薬やカルシウムサプリメントの使用により、心血管疾患のリスクが高まる可能性が報告されている。ただし同じ量を食品として摂取した場合はリスクの上昇は無い。→食事からカルシウムを摂るのが望ましい。

 サプリメント、カルシウム薬として1回に500mg以上摂取しないように注意する。
 
 
 本日のコラム109 ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療

 ステロイドの長期使用は骨粗鬆症を誘発することがあります。リスク分類で、いつ骨粗鬆症の治療を行うのかガイドラインが作られています。

ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン2014年改訂版
年齢とステロイド投与量の差によるリスクの差(スコア)


80%以上の感度となるスコア3以上で薬物治療の対象としている
  ステロイド投与量
5mg/日未満
(スコア0)
ステロイド投与量
5~7.5mg/日未満
(スコア1) 
ステロイド投与量
7.5mg/日以上
(スコア4) 
50歳未満(スコア0) 経過観察(スコア0)
YAM70%未満なら薬物治療、スコア4
経過観察(スコア1)
AM80%未満なら薬物治療スコア3
薬物治療(スコア4)
50~65歳未満(スコア2) 経過観察(スコア2)
YAM80%未満薬物治療、スコア4
薬物治療(スコア3) 薬物治療(スコア4)
65歳以上(スコア4) 薬物治療(スコア4) 薬物治療(スコア5) 薬物治療(スコア8)
経口ステロイドを3ヶ月以上使用中あるいは使用予定の患者は
1.既存骨折がある場合は、すぐに薬物治療を開始する。(スコア7)
2.既存骨折がない場合は、上表に従い薬物治療もしくは経過観察とする。
*プレドニゾロン換算 

ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン2014年改訂版をもとに産業医科大学第1内科 田中良哉教授 作成より
 
 
 
本日のコラム110 ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療 2

 海外のメタ解析では、特に20mg/日以上になると急速に骨折率が上昇する。20-40歳代で高容量のステロイドを投与すると、数ヶ月後に骨折が発症してくるが、高齢者に同量のステロイドを投与すると、数日で骨折が発症することが報告されている。また、若年者では、ステロイドを中止すると、骨密度が回復するが、高齢者では回復しにくい。

 ステロイドの外用薬は骨密度に影響を及ぼさないという考え方が一般的であるとしている。

 引用:ステロイド性骨粗鬆症のマネジメント 改訂版 産業医科大学医学部第1内科講座教授 田中良哉 より
 
  
本日のコラム207 骨粗しょう症の予防と治療

 4月から腰・大腿骨で骨塩量を測定します。この結果をみると、60歳代で既に骨塩量がかなり減っている方があります。骨塩量は若い頃(20歳まで)に如何に増やしておくかが大切なのですが、その後は如何に減らさないかが課題となります。

 骨を丈夫にするには、運動、日光浴、食事を適切に行う必要があります。

 まず運動ですが、骨に刺激を与えるものが有効です。バスケットやバレーボール、サッカーなど走ったり飛び跳ねる運動を行うと骨が強くなります。中高年になって運動を始める場合は、散歩から始めましょう。慣れてきたら20分ほど早歩きしましょう。水泳は振動が無いので、骨粗しょう症の予防にはなりませんので、何か他の運動と組み合わせて行うようにします。

 日光浴(紫外線)は非活性型ビタミンDを活性化し骨に対する作用を行うように変化させます。日光浴をしなくても、日中の屋外に出るだけで効果があります。ただし、日焼け止めクリームや全身を布で覆ってしまうと効果が著しく減弱しますので注意が必要です。また日本各地の地形や気候によっても左右されます。

 骨を作るのに必要な栄養素は、カルシウムだけで無く、ビタミンD、ビタミンK、タンパク質、ビタミンBなども必要です。これらを含んだ食事をバランスよく摂るようにします。

 カルシウムは乳製品、大豆、緑黄色野菜、海藻、魚、ごまなどに多く含まれています。日本では20歳以上の1日の平均摂取量は509mgで必要量800mgに足りず、あと牛乳200mlを飲むと良いでしょう。

 ビタミンDはカルシウムの腸管からの取り込みを促進しますので、カルシウムと一緒に食べるようにします。海の魚やきのこが多く含んでいます。

 ビタミンKは納豆、緑黄色野菜、卵などに多く含まれています。ビタミンKは骨の質を良くすると言われています。

 タンパク質は、骨のコラーゲンの材料となります。骨の質を高めます。乳製品、肉、魚、卵、大豆製品に多く含まれています。
 
 
骨粗鬆症性疼痛(骨粗鬆症による腰背部痛)

 骨粗鬆症が進行して胸腰椎椎体の圧迫骨折を起こすと背中の痛みが多かれ少なかれ出ることが多いのですが、骨折を伴わない骨粗鬆症の段階でも背中の痛みが慢性的に出ることがあります。

 これは、レントゲン等で見つからない微小骨折が発生している場合や破骨細胞による骨吸収が亢進して酸性環境となり、これが酸受容体の活性化をもたらし痛みを伝達する説があります。

 骨粗鬆患者へのアンケートを行った研究では、実に85%が腰背部痛を有するとしています。この中には、椎体骨折、脊柱変形、外傷などが含まれています。他の論文では、閉経後骨粗しょう症の10%程度は、骨粗鬆症性疼痛とする意見もあります。

 骨粗鬆症性疼痛には、第一に骨粗鬆症の治療を行います。また痛みに対しては、侵害受容性疼痛と神経傷害性疼痛に対応します。
 

本日のコラム591 骨粗鬆症治療薬の選択
骨密度増加効果のまとめ 
薬物名 商品名 用法 種類 期間 増加率  治療前骨密度
エチドロン酸 ダイドロネル 備考欄参照 BP 2年 0.5% 70%
 吸収をよくするため,服薬前後2時間は食物の摂取を避ける [1]1日1回 200mg(増減:1日400mgを超えない) 食間 重症の場合:1日1回 400mg 食間 投与期間:2週間 再投与までの期間は10~12週間とし,これを1クールとして周期的間欠投与 ►1日400mgを超えない

禁忌
1)重篤な腎障害(排泄阻害)
2)骨軟化症(悪化)
3)[妊婦・妊娠]
4)小児
5)[過敏症]
ラロキシフェン エビスタ 1日1回60mg経口 SERM 2年 1.6% 69%
  禁忌
1)深部静脈血栓症,肺塞栓症,網膜静脈血栓症等の静脈血栓塞栓症又はその既往歴(副作用として静脈血栓塞栓症が報告→増悪)
2)長期不動状態(術後回復期,長期安静期等)
3)抗リン脂質抗体症候群(本症候群では静脈血栓塞栓症を起こしやすい報告)
4)[妊婦・妊娠][授乳婦]
5)[過敏症]
バゼドキシフェン酢酸塩 ビビアント 1日1回20mg経口 SERM 2年 2.4% 69%
    禁忌
1)深部静脈血栓症,肺塞栓症,網膜静脈血栓症等の静脈血栓塞栓症又はその既往歴(副作用として静脈血栓塞栓症が報告→症状増悪)
2)長期不動状態(術後回復期,長期安静期等)
3)抗リン脂質抗体症候群(本症候群の患者は静脈血栓塞栓症を起こしやすいとの報告)
4)[妊婦・妊娠][授乳婦]
5)[過敏症]
 
エルデカルシトール エディロール 1日1回0.75mg経口 D3 2年 3.2% 68%
   高Ca血症休止、改善後0.5mgで再開だが効果が弱く他剤変更推奨
テリパラチチドとの併用で高カルシウム血症、ミルク・アルカリ症候群(高カルシウム血症、高窒素血症、アルカローシス等)・・・併用注意
禁忌 [妊婦・妊娠][授乳婦]
リセドロン酸 ベネット
アクトネル
2.5mg1日1錠毎日起床時
17.5mg週1回起床時
75mg月1回起床時
BP 2年 4.8% 67%
   禁忌
1)食道狭窄又はアカラシア(食道弛緩不能症)等の食道通過を遅延させる障害(本剤の食道通過遅延により,食道局所における副作用発現の危険性が高まる)
2)30分以上上体を起こしていることや立っていることのできない患者
3)本剤の成分或いは他のビスホスホネート系薬剤に過敏症の既往歴
4)低Ca血症
イバンドロン酸 ボンヒバ 経口100mg月1回起床時
静注 月1回緩徐に
BP 2年 5.8% 66%
  経口
 【禁忌】
1)食道狭窄又はアカラシア(食道弛緩不能症)等の食道通過を遅延させる障害(食道局所における副作用発現の危険性高い)
2)服用時に立位又は座位を60分以上保てない患者
3)本剤の成分又は他のビスホスホネート系薬剤に対し過敏症の既往歴
4)低Ca血症(血清Ca値が低下し,低Ca血症の症状が悪化)
5)[妊婦・妊娠]
静注
 【禁忌】
1)本剤の成分或いは他のビスホスホネート系薬剤に対し過敏症の既往歴
2)低Ca血症
アレンドロン酸 ボナロン 点滴静注900μg100ml30分以上で BP 2年 6.0% 66%
ボナロン
フォサマック
1日1回5mg起床時
一週間1回35mg起床時
   禁忌
1)本剤の成分或いは他のビスホスホネート系薬剤に対し過敏症の既往歴
2)低Ca血症
禁忌
1)食道狭窄又はアカラシア(食道弛緩不能症)等の食道通過を遅延させる障害(本剤の食道通過遅延により,食道局所における副作用発現の危険性が高まる)
2)30分以上上体を起こしていることや立っていることのできない患者
3)本剤の成分或いは他のビスホスホネート系薬剤に過敏症の既往歴
4)低Ca血症
ゾレドロン酸 ゾメダ 点滴静注4mg 3-4週間毎 BP 2年 8.1% 65%
   警告!!
1)点滴静注のみに用いる.又,投与は必ず15分間以上かけて行う(5分間で点滴静注した外国の臨床試験で,急性腎不全発現例が報告)
2)悪性腫瘍による高Ca血症患者に本剤を投与する場合,高Ca血症による脱水症状を是正するため,輸液過量負荷による心機能への影響を留意しつつ十分な補液治療を行った上で投与

禁忌
1)本剤の成分又は他のビスホスホネートに過敏症の既往歴
2)[妊婦・妊娠]
ミノドロン酸 ボノテオ
リカルボン
1mg1日1回起床時
50mg月1回起床時
BP 2年 9.1% 64%
   禁忌
1)食道狭窄又はアカラシア(食道弛緩不能症)等の食道通過を遅延させる障害(本剤の食道通過が遅延により,食道局所における副作用発現の危険性が高くなる)
2)服用時に上体を30分以上起こしていることのできない患者
3)本剤の成分或いは他のビスホスホネート系薬剤に過敏症の既往歴
4)低Ca血症(血清Ca値が低下し症状が悪化)
5)[妊婦・妊娠]
    
デノスマブ プラリア 60mg6ヶ月毎皮下注 モノクローナル抗体 2年 9.2% 64%
   禁忌
1)[過敏症]
2)低Ca血症
3)[妊婦・妊娠]
テリパラチド酢酸塩  テリボン 56.5μgを1週間に1回皮下注 24ヶ月まで
副甲状腺ホルモン剤 2年 9.9% 64%
   併用注意 テリパラチチドとの併用で高カルシウム血症、ミルク・アルカリ症候群(高カルシウム血症、高窒素血症、アルカローシス等)・・・併用注意

禁忌
1)以下の骨肉腫発生のリスクが高いと考えられる患者
a)骨ページェット病
b)原因不明のAl-P高値
c)小児等及び若年者で骨端線が閉じていない
d)過去に骨への影響が考えられる放射線治療
2)高Ca血症(悪化)
3)原発性の悪性骨腫瘍もしくは転移性骨腫瘍(症状悪化)
4)骨粗鬆症以外の代謝性骨疾患(副甲状腺機能亢進症等)(症状悪化)
5)本剤の成分又は他のテリパラチド製剤に対し過敏症の既往歴
6)[妊婦・妊娠]
エストラジオール     女性ホルモン 2年 10.2% 64%
   禁忌
1)エストロゲン依存性悪性腫瘍(例えば乳癌,子宮内膜癌)及びその疑い(腫瘍の悪化或いは顕性化)
2)未治療の子宮内膜増殖症(細胞異型を伴う場合あり)
3)乳癌の既往(再発)
4)血栓性静脈炎や肺塞栓症,又はその既往(エストロゲンは凝固因子を増加させ,血栓形成傾向を促進の報告)
5)動脈性の血栓塞栓疾患(例えば,冠動脈性心疾患,脳卒中)又はその既往
6)[妊婦・妊娠][授乳婦]
7)重篤な肝障害
8)診断の確定していない異常性器出血(出血が子宮内膜癌による場合は,癌の悪化或いは顕性化)
9)[過敏症]
遺伝子組み換えテリパラチド  フォルテオ 1日1回20μgを皮下注24カ月間まで 副甲状腺ホルモン剤 2年 13.4% 62%
   禁忌
1)高Ca血症(悪化)
2)以下に掲げる骨肉腫発生のリスクが高いと考えられる患者
a)骨ページェット病
b)原因不明のアルカリホスファターゼ高値
c)小児等及び若年者で骨端線が閉じていない
d)過去に骨への影響が考えられる放射線治療
3)原発性の悪性骨腫瘍もしくは転移性骨腫瘍
4)骨粗鬆症以外の代謝性骨疾患(副甲状腺機能亢進症等)
5)[妊婦・妊娠][授乳婦]
6)本剤の成分又はテリパラチド酢酸塩に対し過敏症の既往歴。
ロモソズマフ イベニティ 210mgを1カ月に1回12カ月皮下 モノクローナル抗体 1年 13.3% →DMAB 60%
    適応 骨折の危険性の高い骨粗鬆症

 1)本剤の適用にあたっては日本骨代謝学会・日本骨粗鬆症学会の診断基準の次の重症度に関する記載等を参考に,骨折の危険性の高い患者を対象とする
a)骨密度値が-2.5SD以下で1個以上の脆弱性骨折を有する
b)腰椎骨密度が-3.3SD未満
c)既存椎体骨折の数が2個以上
d)既存椎体骨折の半定量評価法結果がグレード3
2)投与にあたっては,本剤のベネフィットとリスクを十分に理解した上で適応患者を選択

警告!! 海外で実施されたアレンドロン酸Naを対照とした比較試験で心血管系事象(虚血性心疾患又は脳血管障害)の発現割合が本剤群で高い傾向が確認.又市販後で本剤との関連性は明確ではないが,重篤な心血管系事象を発現し死亡に至った報告もある.投与にあたっては,骨折抑制のベネフィットと心血管系事象のリスクを十分に理解した上で,適応患者を選択.又本剤治療中は,心血管系事象がないか注意深く観察すると共に,徴候や症状が認められた場合は速やかに医療機関を受診するよう指導

低Ca血症(低Ca血症悪化)

SERM;選択的エストロゲン受容体モジュレーター
BP;ビスフォスホネート
D3;活性型ビタミンD
  
本日のコラム599 骨粗しょう症 薬物治療

 骨粗しょう症の予防は運動、カルシウムやビタミンDの摂取、日光浴などがある。ただし実際には効果が十分でないことが多い。

 原発性骨粗しょう症の薬物治療の開始時期は、大腿椎の脆弱性骨折がある場の値に関わらず適応あり。脆弱性骨折がない場合はYAM値70%以下、腰椎や大腿骨以外の脆弱性骨折がある場合はYAM値80%未満で行う。 
 どの薬剤を使うかは、治療二年を目処にDXA70%以上を目指す。基礎疾患により使用が制限される。

1.BP製剤
 長期使用で非定型的大腿骨骨折
 顎骨壊死
 腎障害(BPのうちイバンドロン酸ナトリウム塩;ボンヒバは腎障害が比較的少ないとされる)
 内服後に発熱、関節痛(インフルエンザ様)

2.SERM製剤(ラロキシフェン、バゼドキシフェン)
 保険適応は閉経後骨粗しょう症(従って閉経後の女性のみ)
 閉経前後では更年期障害を悪化させる可能性あり
 下肢静脈血栓症(寝たきりや超高齢者には慎重投与
 通常、閉経後から65歳ぐらいまで

3.抗RANKL抗体製剤(プラリア)
 低カルシウム血症(初回投与後一週間以内にみられることが多い)
 投与中止で骨吸収が過剰になることあり

6.PTH製剤
 高カルシウム血症や副甲状腺機能亢進症には禁忌
 悪性腫瘍治療中は禁忌。既往歴では慎重投与もしくは投与回避。

 *遺伝子組換テリパラチドの場合、使用説明書では『原発性骨腫瘍もしくは転移性骨腫瘍の患者は投与禁忌』となっているが、実際の運用では全ての癌で既往も含めて投与を控える方が安全とする考えがある。リスクとベネフィットを常に考慮する必要がある。

7.抗スクレロスチン抗体(イベニティ)
 アレンドロン酸ナトリウムに比して、重篤な心血管系の副作用が多い。
 心筋梗塞、不整脈、脳梗塞の治療中または既往がある場合は治療対象から外す方が良いとする意見がある

8.活性型ビタミンD製剤
 エルデカルシトールは、腎機能低下症例で効果が強く出るので、減量や定期的な採血(3-6ヶ月)が必要
 他剤との併用することも多い

■高齢者でも使いやすい薬剤
 ○エルデカルシトール
 ○BP製剤
 ○抗RANKL抗体(プラリア)
 ○PTH製剤
 △抗スクレロスチン抗体(イベニティ)
 △SERM製剤(ラロキシフェン、バゼドキシフェン)

■骨折リスクの高い骨粗しょう症
 ○PTH製剤(癌の治療中は不可 癌の既往がある場合も慎投与もしくは投与回避)
 ○抗スクレロスチン抗体(イベニティ)

■乳癌後にも使える
 ○エルデカルシトール
 ○BP製剤
 ○SERM製剤(アロマターゼ阻害剤の作用を減弱させるので治療中は使用しない)
 ○抗RANKL(プラリア)
 ○抗スクレロスチン抗体(イベニティ)
 
■腎機能が低くても使える
 ○抗RANKL抗体(プラリア)+カルシウム・ビタミンD合剤(デノタス)
 △SERM製剤(ラロキシフェン、バゼドキシフェン) 単独または+アルファカシドール製剤
 △イバンドロン酸ナトリウム塩(腎機能による

■低カルシウム血症でも使える
 △SELM製剤
 腎機能に問題なければ、エルデカルシトール、PTH製剤は使用できる 
  本日のコラム601 骨粗しょう症の薬物治療における注意点

1.ビタミンDと骨粗しょう症
 日本における原発性骨粗鬆症女性の50%がビタミンD不足または欠乏との報告がある。潜在的なビタミンD不足・欠乏が起こっており、これにより骨粗しょう症が増えていると考えられる。ビタミンDが欠乏・不足したまま治療を行うと、やはり効果が落ちるのが分かっている。ビタミンDとビスフォスフォネートの併用でより効果的に骨塩量の上昇が認められる。一方で、治療開始時の血清カルシウム量が低い場合はBPとVD併用でも骨塩量の増え方が少ないとされる。

2.デノスマブ(プラリア)治療におけるビタミンD製剤の種類(天然型か活性型か)による効果の違い
 結局のところ、はっきりとしたエビデンスは今のところない。治験では天然型を使用している。活性型は腎障害に注意。無理に活性型を使う必要は無く、もともと活性型を使用しているケースでは、プラリアをオンする形はあり。活性型を使用する場合は必要に応じてカルシウム投与量を調整する。

3.副甲状腺機能亢進症に注意
 骨粗しょう症の原因の一つに副甲状腺機能亢進症がある。亢進すると骨からカルシウムが溶け出し血中カルシウムが上昇する。従って骨の治療を行う前にまず血中カルシウム量を測定し、高い場合は副甲状腺機能(PTH intact)を調べる。
 PTH製剤の治療を開始する場合は、副甲状腺機能を調べて行う必要がある。