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整形外科 外科
リハビリテーション科

後脛骨筋腱機能不全 posterior tibial tendon dysfunction

 後脛骨筋は下腿から始まり腱となって足関節の内後方を通り足底の舟状骨に付着しています。中年女性の多く、外傷の機転ははっきりしないことが多いです。

 この足関節の内側後方に回り込んでいるところで腱が擦れて炎症を起こし、部分断裂や完全断裂を起こし、その結果、足関節が外反し足底の縦アーチがくずれ扁平足になります。

 当初は腱の炎症で始まりますから足関節の内側後方に痛みが出ます。患側でかかとを上げることが出来ないようになります。進行すると内側痛は消え、外果に痛みが出てきます。

 治療は局所の安静をはかります。また原因となった運動の休止、アイシング、消炎鎮痛剤、温熱治療などを行います。痛みが強ければギプス固定や松葉杖で免荷します。痛みが改善してくればアーチサポートを作成し装着します。また急性炎症が消退した後は扁平足体操などの後脛骨筋機能回復訓練やアキレス腱のストレッチを行います。自動運動で内がえしから開始し、疼痛が生じない範囲でつま先立ちを行います。足外側縁での歩行、足趾の屈曲訓練も有効です。

 保存治療で改善しない場合や後脛骨筋の断裂がある場合は手術を考慮します。

* too many toes 立位後方から診ると外側に足の指が向いているので、正常に比べて多く指がみえる状態をいいます。

  
後脛骨筋腱機能不全症とオーバープロネーション

<オーバープロネーション>
 
 オーバープロネーションはランニング障害の一つです。ランニング時に足関節が過剰に内側に回る(回内)ことにより、足関節が着地すると過剰に内側へ倒れ込むようになり、それが原因となって扁平足、鵞足炎、開帳足、シンスプリント、外反母趾、足底筋膜炎などを引き起こします。(多少内側に倒れ込むのは正常です。あくまでも過剰に倒れ込むことが問題となります。)

 ランニング中にオーバープロネーションを防ぐために内側を補強した専用シューズがあります。また後脛骨筋、中殿筋を中心とした強化トレーニングが有効です。

<後脛骨筋腱機能不全症>

 オーバープロネーションの原因のひとつに後脛骨筋腱機能不全症があります。これは足関節を内反、底屈する筋肉ですが、この機能が低下すると足関節を正しく保持できずに着地時に内反してしまいます。後脛骨筋腱機能不全症には踵が内側ウェッジになったアーチサポートを装着します。 また後脛骨筋自体を強化する運動を行います。更に悪化する場合は手術を考慮します。

 後脛骨筋腱機能不全症(PTTD) Myerson 分類  
stage 症状   レントゲン所見  治療
 stage1  後脛骨筋腱の圧痛、腫脹  正常  Nsaids、腱鞘切開
 stage2 a 踵骨外転
 後脛骨筋腱の圧痛
 可逆的扁平足
b 踵骨外転
 前足部外転
c b+内側支柱の不安定性
 足根洞痛
a 踵骨外転
 距骨の沈下
b a+
 距舟関節不適合
 前足部外転
c bと同様
a 装具、踵骨骨切内方移動、FDL(長母趾屈筋腱)移行
b 踵骨骨切、FDL移行、外側支柱延長
c 踵骨骨切、FDL移行、内側支柱固定
 stage3  不可逆性外反扁平足
 足根洞部痛
 2b+距骨下関節腔の狭小化 3関節固定±外側支柱延長 
 stage4  足関節外反変形   2b+足関節外反 脛骨・距骨・踵骨間固定
距骨全周囲固定 
(出典 123 CLINICIAN '10 NO.592)

*stage1、2は保存的治療を優先します。扁平足変形がないstage1でも足底板を使って扁平足変形を予防することが重要。