上腕骨近位端骨折 proximal humeral fracture
転倒して手をついたり肩を打ったりして骨折します。骨折部位の転位が少ない場合は保存的治療が行われます。
三角巾+肋骨固定帯を使って固定し、比較的早期(早い施設では受傷1週間後より)に腰を曲げて振り子運動を開始します。
固定時は遠位の骨片が内側に転位している場合は厚めのタオルを上腕内側に、外側に転位している場合は薄めのタオルを入れるようにします
振り子運動は受傷一週間後から、三角巾や肋骨固定帯を外して行います。腰を曲げて腕をだらんと下げてゆっくり前後に振ります。この時、肩関節が前後に動かないように気をつけてください。
必ず腰を曲げて重力を利用してゆっくりと動かすのがコツです。腰をかがめずに行うと、強い筋力がかかり、骨折が転位(ずれること)しやすくなります。
振り子の回数は1日1000回~3000回を推奨する意見があります。およそ1日30分。
一般的には座位や立位で90度以上にあげるのは、受傷6週間を過ぎるまで待った方が良いとされています。(この間、腰を曲げて振り子運動を行い90度以上に)
骨折の転位が大きい場合は手術を考慮します。髄内釘やプレート固定行います。
上腕骨近位端骨折の分類と手術適応
1. Neer分類による骨折タイプ
Neer分類では、骨折部位の数(2〜4パート)と転位の有無で分類されます。
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骨折タイプ |
特徴 |
手術適応の可能性 |
|---|---|---|
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1パート骨折 |
転位なし |
通常は保存療法(非手術) |
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2パート骨折 |
転位あり(例:外科頸骨折) |
転位が大きければ手術検討 |
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3パート骨折 |
外科頸+大結節 or 小結節骨折 |
手術適応が高まる |
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4パート骨折 |
外科頸+大結節+小結節骨折 |
高頻度で手術適応(特に若年者) |
2. 転位の程度(Neerの基準)
以下のいずれかを満たすと「転位あり」と判断され、手術が検討されます:
骨片の移動距離が1cm以上
骨片の角度変形が 45度以上
3. 手術適応の具体例
手術が推奨される状況
転位のある3〜4パート骨折関節内骨折で整復困難な場合
大結節骨折で腱板機能に影響がある場合
開放骨折や血管・神経損傷を伴う場合
若年者で機能回復を重視する場合
相対的適応(症例により判断)
高齢者でも転位が大きく、機能障害が予想される場合
保存療法で整復困難な骨折
骨粗鬆症があっても活動性が高い場合
非手術が選択されることが多い状況
転位のない骨折(1パート)
高齢者で骨折部の安定性が高く、機能回復が見込める場合
手術リスクが高い(重篤な合併症など)
参考:『ST2018.3 上腕骨近位端骨折の治療』 / 『スタンダード骨折手術治療 上肢』 / 『臨床整形外科』2023年3月号「二次骨折予防に向けた治療管理」 / 『orthopaedics』2020年11月号「肩周辺骨折の治療」 / 『AO骨折治療 第3版』