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整形外科 外科 リハビリテーション科 |
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しびれ しびれはとても厄介で、なかなか診断がつきにくいものです。なぜならば脳〜脊髄神経〜末梢神経の各部位で似たような症状が起こること、また原因疾患が多岐にわたり、神経内科、循環器内科や脳神経外科、整形外科領域をオーバーラップしていることが、鑑別を困難にしています。 しびれとは自覚する感覚障害のひとつで、「じんじん」「ぴりぴり」「ちくちく」「無痛感」「筋力の低下(麻痺)」など人によってさまざまな表現をされます。医学的にこういう状態を「しびれ」とする明確な定義はありません。(運動障害は一般的にはしびれとはしません。)あくまでも自己申告となります。多くは原因があり自覚症状として「しびれ感」を訴えられます。診療する立場からは、それがいかなる状態なのかを判断しなければなりません。 ひとくちにしびれと言っても、症状自体に幅があり、また原因疾患も多岐にわたるため、多くの医師が敬遠しがちとなっています。 しびれ(感覚異常)をきたす疾患は、神経障害性と非神経障害性に分けられます。神経障害性のしびれは、障害部位により、大脳、脳幹、脊髄、神経根、末梢神経に分かれます。非神経性のしびれでは、閉塞性動脈硬化症、胸郭出口症候群などの循環障害、四肢・口唇のしびれは、過換気症候群、低カルシウム血症(甲状腺術後、副甲状腺機能低下症)でなど起こります。非神経性障害の特徴は、神経の分布と一致しないことです。 < しびれ(感覚障害)をきたす疾患> 1.神経性障害 ・末梢神経障害:代謝障害(糖尿病)、ビタミンB1欠乏症、膠原病、中毒(薬剤、重金属、有機溶媒)、神経免疫性疾患(ギラン・バレー症候群、癌など)、遺伝性神経疾患など ・脊髄・神経根障害:頸椎症や脊髄腫瘍などによる神経圧迫、多発性硬化症などの脱髄疾患、脊髄梗塞などの血管障害、脊髄空洞症、脊髄炎、ビタミンB12欠乏症(亜急性連合性脊髄変性症)など ・脳障害:脳梗塞、脳出血などの脳血管障害、脳腫瘍、脱髄疾患など 2.非神経性障害 ・血管系の異常:胸郭出口症候群(頚〜肩〜上肢のしびれ・痛み)、閉塞性動脈硬化症・バージャー病(主に下肢のしびれ、痛み、上肢でも起こる) ・内科疾患:過換気症候群・副甲状腺機能低下症(四肢のしびれ、四肢のつっぱり感といった筋痙攣)、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患(左上腕内側のしびれ)、緊張性頭痛(四肢のしびれ、肩こり、頭痛)など <しびれ分類> 1.単神経炎or神経根障害 2.中枢神経障害 ・交叉性感覚障害・・・脳幹障害(例:右顔面しびれ+左体幹〜下肢しびれ) ・顔面を含む片側全体の感覚障害・・・テント上病変 3.脊髄障害 ・典型例:病変のある髄節以下両側左右対称に障害 ・ブラウン・セカール(Brown-Sequard)症候群:脊髄の半側のみの障害。患側の障害髄節の完全知覚麻痺、それより遠位の患側で運動麻痺、深部感覚障害。対側は温痛覚障害 ・脊髄空洞症では頚椎での発症が多く、上肢のみの障害が起こることがある。進行すると膀胱直腸障害、歩行障害 4.多発神経炎:左右対称性の靴下・手袋型 <神経障害レベルの鑑別> 神経障害を初診でみる場合、中枢神経障害と末梢神経障害かが一番気になります。特に脳梗塞などの疾患は早期の対応が必要なこともあり気を抜けません。 一般的に、末梢神経障害はその障害された神経に合致した感覚障害や運動障害を起こします。他方、中枢神経障害では、末梢神経の分布に合致しない範囲の障害を起こすことが多い。しかしながら、例外もあって、大脳皮質の梗塞で、偽性尺骨神経麻痺と呼ばれる単神経障害とよく似た障害を起こすことがまれにあります。 中枢神経障害は運動していないときに急性発症します。末梢神経障害は圧迫や絞扼要因があるなどの原因が比較的推察しやすいと言えます。 両側下肢のしびれを認める場合、脊髄障害では特定のデルマトーム以下が障害され、遠位優位であれば多発神経炎、左右非対称なら多発単神経炎を考えます。 両側下肢の神経傷害性しびれの鑑別 ・多発神経炎:左右対称性で遠位優位 ・多発単神経炎:非対称性、発熱、激しい疼痛、急速な進行 ・Guillain-Barre症候群:上行性の運動麻痺、腱反射が高度低下・消失、ときに構音障害や複視 ・脊髄病変:特定のデルマトーム以下の障害。脊椎の前後屈で症状に変化、上位ニューロン障害で腱反射亢進 ・脳幹障害:構音障害、複視 ・大脳障害:頭頂部病変で起こりうるがまれ。頭頂部の占拠病変による圧迫で起こることあり。 <皮膚所見による鑑別> ・帯状疱疹:紅斑、水疱、痂皮 しびれ。数日から〜数週間、痛みが先行することがおおい。神経障害があるが発疹のないものを「Zoster sine herpete」といい、髄膜炎や脳神経麻痺を引き起こします。 ・血管炎:多発単神経炎をきたす疾患で、紫斑→皮膚生検で確定診断 ・CRPS(複合局所疼痛症候群):外傷後、皮膚温、色調の左右差、体毛減少、爪や皮膚の萎縮 ・POEMS症候群:多発神経炎+多毛+色素沈着 POEMS症候群:POEMS症候群 (P: polyneuropathy−多発神経炎,O: organomegaly−臓器腫大,E: endocrinopathy−内分泌障害,M: M-protein:M蛋白,S: skin changes-皮膚症状) 骨髄や一部のリンパ節に発生した形質細胞腫から分泌される血管内皮増殖因子 (VEGFと略されます) というタンパク質が症状を起こしているのではないかとされています。
・胸郭出口症候群:原因→頚肋症候群、斜角筋症候群、肋鎖症候群、小胸筋症候群、過外転症候群 ・橈骨神経麻痺 ・肘部管症候群 ・後骨間神経麻痺(回外筋症候群):橈骨神経の枝である後骨間神経の絞扼 ・前骨間神経麻痺(回内筋症候群):正中神経の枝である前骨間神経の絞扼 ・手根管症候群 ・ギオン管症候群 <手根管症候群の非典型例 中枢感作> 手根管症候群の35%程度で、正中神経領域外の知覚障害も訴えていたとする報告(中枢感作)があります。また尺骨神経領域の症状を訴えることもあると言われています。従って正中神経領域以外の症状があるからといって手根管症候群を含めて正中神経障害を鑑別診断から除外しないように心がけます。 *中枢(神経)感作 「中枢感作」とは、末梢での組織損傷や炎症の程度が激しくまた長期間続くとそれらが伝達される中枢に機能的な変化が生じ、正常な伝達が中枢で誤って解釈され「痛み」として感じられるようになること。要するに痛み刺激を受け続けると、他の正常な信号も痛みと認識してしまうことを言います。 |
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本日のコラム78 口周りのしびれは脳梗塞かも知れません。→ただちに専門病院へ 朝、目が覚めたら口の周りがしびれていた。これは重要な症状で脳梗塞が生じた可能性が高いので最寄りの専門病院をただちに受診するようにしてください。MRIの検査をすると脳梗塞などの疾患の有無が分かります。超早期だとCTでは所見が無いことがありますので要注意です。口周りのしびれに加えて、片側上肢のしびれ感がでていれば、まず脳梗塞です。上肢のしびれは口のしびれに遅れて出てくることがあります。 さて、上肢のしびれだけだとどうでしょう?これは整形外科にも来院される可能性があります。朝起きたら、急にしびれていた。このような場合は、まず脳梗塞の有無を検討します。脳梗塞は急に症状が出ます。そして徐々に進行することがあります。ある日突然、起こった場合は脳梗塞を疑いただちに最寄りの専門病院へ行きます。ここでもたもたしていると脳梗塞の治療が十分できないので、可能な限り、早く受診することです。かかりつけ医の先生に診てもらうより直接、専門病院を救急受診した方が良いです。 手指だけのしびれ、尺骨神経のみの障害、橈骨神経のみの障害、通常は頚椎以下の末梢神経の障害とされる神経症状でも、特殊な脳梗塞では、同じ症状を起こすことがありますので、くれぐれも間違わないようにしてください。急速に起こった場合は、脳梗塞の可能性があります。 |