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整形外科 外科 リハビリテーション科

スポーツ外傷における他科疾患


スポーツ外傷における他科疾患

 コンタクトスポーツをはじめとする運動では、頭やお腹の臓器を傷めることがありますし、外傷がなくても突然の心停止につながる病態もあります。いずれも最初の対応が遅れると予後を左右するので、慎重に見るようにしています。

 とくに気をつけているのが心臓震盪です。心臓自体には持病がなくても、胸のちょうど心臓の上あたりに鈍い衝撃が加わったタイミングで、致死的な不整脈が起こり突然心停止に至ることがあります。野球やソフトボールの打球、格闘技の突きなどがきっかけになりやすく、若い方に多い印象です。当たった直後は一度立ち上がっても、数秒から数十秒後に急に倒れることがあり、その場に居合わせたら心停止を疑ってすぐに心肺蘇生とAEDを始めることが大切です。

 頭部の外傷では、脳しんとうや脳挫傷、硬膜外血腫などを考え、意識の状態や頭痛、嘔気の有無を確認したうえでCTによる精査を行います。脳しんとうは意識を失わないことも多いので、油断しないようにしています。胸部では外傷性の気胸を、腰から脇腹にかけての痛みでは腎臓や脾臓、膵臓など後腹膜の臓器の損傷を考え、迷わずCTや血液検査、エコーを追加します。腎臓の損傷では血尿や腰背部痛、脾臓の損傷では左脇腹の痛みとショックが手がかりになりますが、はっきりしないこともあります。

 下肢では、膝の裏を通る動脈が周囲の筋肉に圧迫されて起こる膝窩動脈捕捉症候群が、若い男性のスポーツ選手に見られます。運動中に足の間欠性跛行を訴え、足首を動かすと動脈の拍動が弱くなったり触れなくなったりするのが特徴で、両側に起こることも少なくありません。中高年の男性では、動脈の外膜がのう胞化する病気が片側性に同じような症状を来すこともあります。

 夏場の運動では熱中症にも注意しています。体温が上がるだけでなく意識がもうろうとしたりけいれんが出たりする場合は熱射病として、すぐに体を冷やして搬送する必要があります。単なる脱水や足のこむら返りと決めつけて対応が遅れないようにしたいところです。逆に、長時間の運動中に水だけを大量に飲み続けることで血液が薄まり、頭痛や嘔気、意識障害を来すこともあります。水分補給を勧めるときも、この点は頭に置いています。

部位・病態要注意疾患
外傷なしの心停止心臓震盪(胸部への衝撃、若年者)
頭部脳しんとう、脳挫傷、硬膜外血腫
胸部外傷性気胸
腰背部・側腹部腎外傷、脾外傷(後腹膜臓器損傷)
下肢の動脈膝窩動脈捕捉症候群、膝窩動脈外膜のう腫
体温・水分熱中症(熱射病)、運動誘発性低ナトリウム血症

参考文献:Orthopedics 整形外科外来における他科疾患を見逃さないコツ 3.2017

エビデンス:心臓震盪の病態

心臓震盪は既存の心疾患がない状態で、胸部への鈍的外力が心周期の脆弱な時相に加わることで致死的な心室細動を来す病態としてまとめられています。(Menezes RG ら. Med Sci Law. 2017)[1]

エビデンス:運動誘発性低ナトリウム血症

運動関連低ナトリウム血症は、長時間の運動中の過剰な水分摂取と抗利尿ホルモン分泌の関与が一般的な機序とされ、重症例では死に至ることがあると総説にまとめられています。(Rosner MH. Trans Am Clin Climatol Assoc. 2019)[2]

エビデンス出典(全2件)を見る
  1. Menezes RG, Fatima H, Hussain SA, Ahmed S, Singh PK, Kharoshah MA, et al. Commotio cordis: A review. Med Sci Law. 2017;57(3):146-151. PMID: 28587536.
  2. Rosner MH. Exercise-associated hyponatremia. Trans Am Clin Climatol Assoc. 2019;130:76-87. PMID: 31516170.