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整形外科 外科
リハビリテーション科

 頚椎症性神経根症からのコンタクトスポーツ復帰

 頚椎症性神経根症とは何らかの頚椎の変形やヘルニアがあり頚椎部の神経根部を圧迫することにより頚〜肩〜上肢に痛みやしびれがでます。症状は頚椎を後屈したり後屈+病側回旋で悪化します。MRIでは脊髄症(脊髄に圧迫)に比較して神経根部の圧迫は同定しにくく、CTを併用することで参考となることも多いとされています。

 衝突の瞬間、頚部〜肩〜上肢に焼けつくようなしびれ感が出る場合をBurner症候群と言いますが、何度も繰り返したり、症状が遷延する場合は頚椎椎間板ヘルニアや椎間孔に骨棘がでて狭窄していることがあります。安易に自己診断するケースも見受けられますが、しっかりと調べる必要があります。

 一般的にラグビーやアメフトなどのコンタクトスポーツは頚椎の加齢性変化が早期に出ると言われており10歳代でも骨棘形成を認めることがあります。

 検査は診察に加えてレントゲン撮影を行い、MRI、CTで詳細な評価を行うようにします。骨棘などの骨性変化の描出はMRIよりCTの方が優れています。一方、椎間板ヘルニアなど軟部組織の描出はMRIが優れます。

 神経根症状は根が分布する部位のしびれや痛みのみではなく筋肉も支配していますので脱力などが問題となります。ベンチプレスやアームカールで上げられなくなったり左右差が出たりします。

 治療は保存的治療を行い、改善しない場合は手術を検討します。消炎鎮痛剤に加えて牽引や低周波などの理学療法、ストレッチを行います。通常、一ヶ月程度は安静にしこれらの治療を行います。手術は症状が遷延するケースで考慮します。状況に応じて椎間孔開放術、前方除圧固定術を選択します。
 
<椎間孔開放術後の後療法>

 術翌日 頚椎カラーを使用し歩行開始
 術後2週〜頚椎カラー除去、等尺性運動、可動域訓練
 術後1ヶ月〜ジョギング
 術後2ヶ月〜非接触プレーの個人練習、頚椎抵抗運動
 術後3ヶ月〜非接触プレーの全体練習、接触プレーの個人練習
 術後4ヶ月〜接触プレーの全体練習、試合出場許可

<頚椎前方除圧固定術の後療法>

 術翌日 頚椎カラーを使用し歩行開始
 術後1ヶ月〜頚椎カラーの除去、等尺性運動、ジョギング
 術後2ヶ月〜非接触プレーの個人練習、頚椎抵抗運動
 術後3ヶ月〜(骨癒合確認後)非接触プレーの全体練習、接触プレーの個人練習
 術後4ヶ月〜接触プレーの全体練習
 術後5ヶ月〜試合出場許可
 

<Torgらによる頚椎外傷・損傷のコンタクトスポーツへの復帰基準>
1.復帰可能
 ・矢状断で変形治癒せず可動域制限の温存されているC1-2の骨折後
 ・無症候の頚椎棘突起骨折
 ・神経学的異常の無い頚椎椎間板ヘルニア
 ・1椎間の頚椎前方or後方固定術後
 ・椎間孔開放術後
 ・神経学的所見・頚椎可動域制限が元に戻った3回目未満Burner症候群(別名:Stinger症候群)
 ・24時間以内に回復した1回目の一過性四肢麻痺

2.相対禁忌
 ・24時間以上持続するBurner症候群(別名:Stinger症候群)
 ・神経学的所見・頚椎可動性制限が元に戻った3回目以上のBurner症候群(別名:Stinger症候群)
 ・24時間以上持続する一過性四肢麻痺
 ・2椎体までの頚椎前方or後方固定術後
 ・椎間関節不安定性を伴った椎間板障害

3.絶対禁忌
 ・急性期の椎間板ヘルニア
 ・慢性のhard discによる椎間板ヘルニアで神経所見、疼痛、可動域制限のあるもの
 ・急性期の椎間板ヘルニアもしくは慢性のhard discヘルニアによる椎間板ヘルニアで一過性四肢麻痺
 ・C1-2固定術後
 ・三回以上の一過性四肢麻痺
 ・頚椎症性脊髄症
 ・持続する神経脱落症状、頚椎可動域制限、頚部違和感
 ・頚椎椎弓切除後
 ・3椎間以上の頸椎固定術後


 
参考:頚椎症性神経根症からのスポーツ復帰 天野ら 関節外科 vol35 No.5 2016