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信頼とまごころの医療 からだにやさしい医療をめざして |
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整形外科 外科 リハビリテーション科 |
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脊椎骨折 vertebral fracture 脊椎椎体圧迫骨折 vertebral compression fracture 骨が丈夫な方の場合、高所よりの落下などによる高エネルギー損傷で起こります。 高エネルギー損傷としては、ハシゴ、脚立からの落下、工事現場での足場からの落下などがあります。 骨粗しょう症がある方はよろめいて少し踏ん張っただけでも圧迫骨折が起こります。時にははっきりしたエピソードがないこともあります。骨粗鬆症性椎体骨折 (OVF: osteoporotic vertebral fracture) 高齢者の骨粗しょう症による圧迫骨折は、外傷機転があっても数日〜1週間してから痛みが徐々に出だすことがよくあります。これは一気に折れるのではなく、脆弱になった椎体が徐々に壊れていくためです。 場合により破裂骨折といって椎体が割れることがあります。時には後ろ側に走っている脊髄神経を圧迫して下肢の麻痺や筋力低下、しびれ、膀胱直腸障害を引き起こすことがあります。この場合は、手術を考慮する必要があります。 急性期はレントゲン撮影では所見がないことも多く、痛みがある程度あればMRIを行います。これにより急性期でもただちに診断が可能です。(椎体の信号がT1強調で低信号、T2強調で高信号となります)気をつけたいのは基礎疾患として椎体に腫瘍性病変、特に転移性の脊椎腫瘍が隠れていることがあります。 治療は神経障害等がなく圧迫骨折だけですと保存的に行われます。昔は入院して治療することもありましたが、今ではがっちりしたフレームコルセットを外来で作成して装着し入院せずに自宅で療養することが多いです。 装着期間は当院では3ヶ月前後としています。以前は4ヶ月装着がスタンダードでしたが最近は2ヶ月装着とする医療機関も増えてきています。ただ2ヶ月ですと再骨折するケースもありますので、当院ではもう少し骨が安定する期間をとって3ヶ月としています。骨粗鬆症性椎体骨折の場合、コルセットの装着期間は24週を推奨する文献もあります。 同時に骨粗しょう症の評価を行い治療を開始します。 |
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T1強調画像でL1椎体が一部低信号になっています。比較的新しい圧迫骨折の場合、このように変化が出ます。 |
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転倒後の背中〜お尻の痛み 転倒によってさまざまな障害が起こります。よくあるのが尻もちをついて脊柱の圧迫骨折が発症します。これは尻もちによって脊柱が上下並びに前屈を強制されて椎体が耐えられなくなり骨折します。 背中や腰に痛みが生じます。レントゲンではすぐに分からないこともあり受傷状況などを聞き症状と合わせてMRIを行います。新しい骨折が見つかればフレームコルセットを作成して約3ヶ月ほど装着します。 転倒により骨盤自体が骨折することがあります。これは交通外傷などの高エネルギー損傷の場合、骨盤内の動脈損傷が合併して生命に関わることもありますので注意が必要です。また骨盤自体からの出血も大量となり止血手術や塞栓術が必要となることがあります。 家の中で尻もちをついた程度ですと骨盤骨折は起こってもさほど重篤には通常なりません。レントゲンに加えてCT,MRIにて検索します。多くは保存的治療で改善します。 転倒後、太ももの内側に痛みが生じる場合は、恥骨周辺に骨折が起こっていることがありますので放っておかずに最寄りの整形外科を受診するようにしましょう。 |
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骨粗鬆症性椎体圧迫骨折 <分類:SQ法 半定量的評価法> 椎体の形態異常でGrade分類されています。Grade1以上なら骨粗鬆症性椎体圧迫骨折(OVF)と診断されます。(もちろん、骨粗鬆症がベースに存在することが必要) 単純X線像にて、目視で前壁、中央、後壁のいずれかが椎体高の減少 Grade1 20〜25%以上 Grade2 26〜40% Grade3 41%以上 *仰臥位と立位での骨折椎体の可動性は30%程度 <MRI> 圧迫骨折後、1年を経てもT1低信号、T2で高信号を示すこともあるので受傷時期の特定はある時点の1回のMRIでは困難。 1ヶ月後に再検査して経時的に比較するとよい。 一般に受傷から1ヶ月間で、T1強調像は低信号のエリアが拡大しピークを形成します。 従って、2回目(初回検査より1ヶ月後)のMRIで、T1強調像において 低信号が拡大→初回検査時の時点で受傷2週間以内 低信号が縮小→初回検査時は受傷1ヶ月ごろと推察される *融合不全を起こし易いのは、T2限局性高信号あるいは広範囲低信号およびT1広範囲低信号で起こりやすい。 重要:病的骨折はMRIで、急性期のT1,T2強調像では鑑別困難とされている。理由は椎弓根の信号の変化や信号変化の辺縁不整像、造影効果などは骨粗鬆症性椎体圧迫骨折受傷後2ヶ月頃までみられるため。 |
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本日のコラム 腰椎圧迫骨折 年齢と共に、骨粗しょう症が進行すると骨がもろくなって、ちょっとした力が加わると骨折します。(脆弱性骨折) 今回のケースは、他院で分からなかった圧迫骨折です。ものを持ち上げたらその後、腰痛が出てきたので近医を受診。特に異常は無いとされ、痛みが続くので当院に来られました。初診時のレントゲン撮影でL2の椎体が少しへしゃげていましたので、MRIを即日実施、L2の新鮮圧迫骨折の所見を認め、ただちにフレームコルセット(硬性コルセット)を採型し、二日後には完成し装着してもらいました。完成するまでの2日間は、簡易コルセットを装着しました。 おそらく最初の医療機関では、レントゲンでは圧迫骨折の変化が無かったのだと思われます。あとは臨床症状、経過でどう判断するかが問われます。 最近の文献では、硬性コルセット、軟性コルセット、装着なしの三群で予後に変わりは無いとする一部意見もありますが、局所を固定し安静を保ち治癒を促進するためには、今のところフレームコルセットが一番効果的だと考えます。遷延治癒の場合は硬性コルセットが有効とされます。 骨粗しょう症の治療も並行して行います。 |
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本日のコラム42 椎体内不安定性 脊椎の椎体が骨粗しょう症性圧迫骨折を起こすと、骨折部の椎体高が立位と臥位(側面像)で異なることがあります。これは体重が掛かるか否かと骨折部の脆弱性によります。初期にこの差が大きいほど不安定性が高く、偽関節になりやすいので注意が必要です。椎体癒合の判断は、痛みや叩打痛がないこと、レントゲンやMRIでvacuum cleftを認めないこと、また脊椎不安定性が消失していることで行います。 高齢者の場合、通常歩行が可能で、痛みがわずかなこともあるので、軽微な動作で新たに痛みが出現した場合などは注意が必要です。 |
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本日のコラム70 高齢者の脊椎椎体骨折 初期治療は、安静と外固定(装具)が基本となります。 <外固定の選択基準> ダーメン型軟性装具:脊椎後彎変形がすでにある。偽関節に注意。 硬性装具(モールド型、ジュエット型、フレーム型):初発の椎体骨折で胸腰椎移行部で後弯変形が強く無いもの *中位胸椎(T6−10)、中下位腰椎(L3-5)で後壁が保持されている安定型の椎体骨折は軟性装具でも対応可能 *いずれの装具も骨折椎体の上位3椎体まで固定できる長さを選択する |
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本日のコラム254 原発性骨粗鬆症性椎体骨折の治療方針 1 一般的な流れとして、まず保存治療を行い、改善せずに痛みが継続する場合は手術を考慮します。椎体骨折の診断方法として何らかの外傷後に胸・腰背部に痛みが出る場合はレントゲンや MRI を行います。はっきりした外傷ない場合でも、圧迫骨折が起こることがあります。原因が特定できないものも30%程あるとされています。 圧迫骨折早期には、レントゲンでの診断も困難なことも多く、立位、臥位の正側面2方向を撮影して、椎体高の変化をみます。椎体高の変化が2%以下のこともありますので、注意が必要です。 早期の診断には、MRI が最も有効です。発症直後より、 MRI による変化がみられます。3ヶ月を経過すると信号の変化は通常見られなくなります。遷延性治癒、偽関節、破裂骨折になっている場合は、3ヶ月後も、 MRI で所見を認めます。 椎体骨折の評価と保存的治療 椎体骨折が今どのような段階にあるのかを評価することは重要です。新鮮骨折、陳旧性骨折、遷延性骨癒合、偽関節など、骨折の状態を評価します。 これらの評価の手法はまだ標準化されていません。 1.画像評価法 経時変化:立位2方向で椎体高の変化を見る 荷重変化:仰臥位と立位で比較 *経時変化なし、加重変化なし、仮骨が十分あるをもって骨癒合とします。 *MRI:椎体自体の信号変化は骨癒合の判断基準とはしない。 新規骨折:外傷の有無を問わず、4ヶ月以内を新鮮骨折、4ヶ月以降も骨癒合を得られないものを遷延性骨癒合、12ヶ月経っても骨癒合を得られない場合は偽関節と定義します。 2.メカニカルな評価 岸川らは、寝返り、寝起きなどのテスト運動での痛みを評価して適切な運動療法を実施する椎体骨折のメカニカルスケールを開発しています。(MB Orthop VOL30 No.8 2017) 非荷重期、部分荷重期、全荷重期にわけています。いずれのステージでも運動強度は運動の最中は痛みが出るが、終了後10分以内に消失する程度としています。 運動療法を行う理由は、その時期に合った適切な運動が骨構造の構築が促進されるという考えに基づいています。 *椎体の仮骨は椎弓根に近い後壁側から生じ、徐々に前方に拡大します。 3.新鮮椎体骨折のプロトコール <非荷重期> 仰臥位期:仰臥位で寝返り運動、四肢廃用予防運動、肺炎予防のための呼吸運動療法、塞栓予防のための弾性ストッキング <部分荷重期> 仰臥位禁止、左右側臥位からの45°以上のギャッジアップ)。テスト運動として寝返り、仰臥位側屈、臀部持ち上げの3次元方向で行い、三日間これらのテストで痛みが無ければ、側臥位から前額面方向の動きを用いて徐々に加重します。ギャッジアップ位で前後屈、側屈、回旋のテストを行います。 <全荷重期> 冠状面動作で起坐。座位継続30分、立位、歩行、階段 *認知症患者、臥位安静が内科的病状の悪化を起こす可能性がある場合は、非荷重期間を設けない。 *遷延性骨癒合では、荷重期から開始します。 →注(池田) このスケールは入院加療を行った場合に基づいています。入院の可否は病院によって異なり、手術が多く多忙な病院では圧迫骨折で入院というケースは殆ど無く、手術が少ない病院は全例入院ということもあるようです。実際には痛みが強くて動けない、家族の支援が受けられないなど、1人で家に置いておけない場合は入院させるといったところでしょう。 *椎体骨折の骨癒合プロセス 長管骨の骨折は膜性仮骨→内軟骨仮骨→石灰化→リモデリングといった経過を辿って治癒します。一方、椎体骨折の骨癒合は、このような過程をとらず、まず海綿骨において椎弓根部周囲の血流が豊富な部分から仮骨が形成され、石灰化→骨梁の形成が起こるとされています。 次いで、骨皮質でも椎弓根部に近い骨膜から仮骨が形成され、骨形成が行われます。椎体骨折に伴う終板損傷は不安定性や痛みの原因となります。不安定性がある場合は隣接椎体との架橋が生じて椎体間を制動し、痛みなどの臨床症状が軽減します。 *一連の流れ 新鮮椎体圧迫骨折において、寝返り、寝起きで痛みが無くなれば後壁の治癒が行われたと判断して、仰臥位から半坐位にして椎体に荷重をかけるようにします。また遷延性骨癒合や偽関節例においても骨癒合を促進させるために仰臥位ではなく半坐位を徹底する方がよい。これに並行しテリパラチドなどで骨粗鬆症の治療を行います。 後壁が崩れる例では入院加療で症状に応じて仰臥位→半坐位→起座と徹底して管理します。 *入院してもただ寝かせて安静指示だけのところも多いように思います。そういった医療機関に入院加療する価値があるのかどうか難しいところです。 <椎体骨折の状態による治療法のまとめ> 1.新鮮骨折 1)椎体前壁の損傷 前壁圧潰率75%以上(潰れていない後壁を100%として)、前壁荷重変化5mm以下であれば、外来治療での保存療法を選択する。 2)前壁に加えて後壁の損傷があれば、(将来的に)骨癒合遷延の可能性があり、入院によるメカニカルファクターの管理を含む保存的な治療を選択する。 3)後壁まで及ぶ骨折であれば、手術適応を考えるべき。 2.遷延性骨癒合 入院によるメカニカルファクターの管理を含む保存治療。遅発性脊髄麻痺がある場合は、テリパラチドを併用した三ヶ月程度の荷重徹底を選択。(就寝も含めて半起座位以上とし、荷重をかけた状態を続ける。) 3.偽関節 痛みが強く、投薬にてコントロールできない例、遷延性骨癒合として治療に抵抗し骨癒合しない遅発性脊髄麻痺例は、BKPや除圧固定術を選択する。 4.陳旧性骨折 骨折自体の痛みが原因になっていることは少ない。脊柱管狭窄の部位に注意。腰部脊柱管狭窄症に骨折が直接影響している場合と、間接的にアライメントに影響を与えている場合がある。また グローバル アライメントが悪く腰痛性間欠跛行を示すものも多く、腰部脊柱管狭窄症の症状なのか、脊柱変形による症状なのか、保存的治療をする中で見極めたうえで、手術を検討する。 参考文献 :椎体骨折の痛みの評価と保存的治療 岸川陽一ら MB Orthop Vol30 No.8 2017 |
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