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腰痛体操ってどうしたらいいの?

 
 急に腰が痛くなると思いついたように体操を始めて余計に症状を悪化させる人がよくおられます。急性期の腰痛は体操はせずに動ける範囲での生活を行います。安静臥床は病状を長引かせますので必要最小限にし、急性期の痛みが改善してくる発症72時間以降は、痛みが強くならない範囲で体操を行うようにします。痛みが強い場合は痛くない部位から動かすようにしましょう。

 ただし腰痛の15%(特異性腰痛症)は何らかの原因がありますので、医療機関を受診して原因を明らかにする必要があります。体操教室へ通う場合は、合っていない体操で更に腰が痛くなるケースもありますので医師の指導の下に行うようにしてください。
 
 
 腰痛体操は星の数ほどあって一般の方にとってどれをやれば良いのか分からないのが現状です。実際、どの体操が最も優れているか明確なエビデンスはありません。ただ亜急性期〜慢性期の腰痛において体操は有意に日常生活動作を改善させるエビデンスはあります。ただし腰痛の原因もさまざまで画一的な一つの体操がすべての腰痛に効果がある訳ではありませんが、経験的には、1956年にオーストラリアの理学療法士であるMackenzie氏が偶然発見したマッケンジー法が世界的には主流となっています。

 この方法の基本はきわめて単純でうつぶせに寝て背中を反らすだけで腰痛を改善させるというもの。これは昔、Mackenzie氏が治療中に電話がかかってきて患者を寝てもらうようにスタッフに指示したろころ、その前の患者さんがベッドを大きく反らしていたものですから、それを知らずに次の患者さんが当時は腰痛では通常してはいけないとされていたうつむせの背屈位で待っていたところ、長年の腰痛がずいぶんと楽になったのが発見につながりました。

 当時としては誤った姿勢を取らせたことによって症状が大きく改善したのです。その後、このMackenzie法は世界的に普及しています。先日も腰痛治療の話をNHKでやってましたが、東大の先生がやはり同じように背中を背屈させる運動(立位)を薦めていました。これはMackenzie法が腹臥位で行うのを立位で行っただけでMackenzie変法の範疇に入るものだと考えます。(オリジナルはやはりMackenzie氏でしょう。)

 立位で行うと転倒の危険がありますので補助者が必要かどうか判断しなければなりません。一方で腹臥位で背中を反らすのも骨粗しょう症があり背中の変形が強くなった方には辛いこともあります。

 当院では若い方はMackenzie法のオリジナルである腹臥位での体操を、高齢の方は側臥位で背中を反らすようにしてもらっています。バランス力に問題がなければ、簡便にできる立位での背屈体操を行うように指導しています。また身体各所の柔軟度をみて通常3-4個の体操を組み合わせて行ってもらっています。腰痛は腰だけの体操だけではなく、体幹〜下肢全体のトータルバランスも重要と考えています。