漢方治療 |
整形外科でも漢方治療が徐々に浸透してきています。打撲、ねんざ、こむらがえり、腰痛、肩こり、膝の痛み・膝の水、肩の痛みなど手足や身体の痛みに漢方が効果的です。西洋薬が苦手な方、漢方を試してみたい方はご相談下さい。 漢方薬は、西洋薬と異なり様々な生薬の組み合わせにより効果を出すようになっており、ひとつひとつの成分は通常少なめになっています。それ故に副作用が比較的少ないとされています。 こむらがえりに使う芍薬甘草湯は速効性が高く、痛みが出てから服用しても直ちに効いてきます。風邪に使う葛根湯も比較的早く効いてきます。それ以外の漢方は少し時間が掛かります。 葛根湯は血流を良くしますので風邪によく使われますが、整形分野では、肩こりや頸部痛などに適応があります。 慢性の腰痛の場合は、牛車腎気丸など幾種類か使いますが、すぐに効果が出ないこともあり、まず一ヶ月頑張って服用してみてください。短期では効果判定が難しく、次から次に薬を変更してしまうとどれも効果が出ないままになってしまうことがあります。 2種類の漢方薬を併用する場合は、それぞれ1日2回食前に服用とします。1種類の場合は1日3回食前。 |
|
費 用 保険適応されます |
|
整形外科分野の漢方治療 代表的漢方薬とその使用方法、状況により使用量、使用日数は異なります。 原則として、症状が短期で治まる以外の慢性期のものは、まず4週間程度服用してみて効果を判定する。 |
■整形外科分野の痛み止め(Nsaidsと併用可) 28:越婢加朮湯 7.5g 7-28日 麻黄(エフェドリン)+(ドーピング検査に引っかかる→実証で元気な人向け) 18:桂枝加朮附湯7.5g 28日 麻黄なし 虚証 97:大防風湯7.5g 28日 麻黄なし 体力気力増進(麻黄がないものは効くのに時間が掛かる) ・麻黄はエフェドリン効果で心臓がドキドキしたり血圧の上昇をみることがある。越婢加朮湯1日量7.5gのうち麻黄は6g含まれているので、胃腸が丈夫な人が対象。 ・18:桂枝加朮附湯は麻黄なし。越婢加朮湯が飲めなかった人や明らかに弱々しい人向け ・97:大防風湯 麻黄なし。体力気力を増す。(人参・黄耆入っている)弱々しく長く関節痛を患っている人向け。 |
■打撲・捻挫 25:桂枝茯苓丸7.5g2週間 105:通導散7.5g2週間 89:治打撲一方7.5g2週間 25,105,89 いずれか 105:通導散:大黄3g、芒硝1.8g 下痢起こしやすい→便秘にも効く 89:大黄1g 大黄は緩下作用があるので軟便になることがある。 *治打撲一方:外傷時の腫れに効果的。橈骨遠位端骨折や足関節捻挫などの腫れを早く改善させるときに使う。高齢者は2包分2で処方し、腫脹が著しく強かったり、便秘傾向がある場合は3包分3。また腱付着部炎にも効果あり。 *治打撲一方の小児への応用:腰椎分離症、Osgood病、Sever病などの骨端症。小学生は1日一包、中学生〜高校生は1日2包。一週間の内服で効果判定する。 |
■頸椎捻挫・頚椎症 18:桂枝加朮附湯7.5g4週間 無効〜もっと良くなりたい→18+25桂枝茯苓丸7.5g4週間 18+1葛根湯(麻黄)→麻黄でむかつき→中止 しつこい痛み:葛根加朮附湯+25桂枝茯苓丸 |
■肩こり 1:葛根湯7.5g 18:桂枝加朮附湯7.5g 23:当帰芍薬散7.5g 24:加味逍遥散7.5g いずれか |
■五十肩、腱板損傷 88:二朮湯7.5g 疎経活血湯+ヨク苡仁湯(麻黄含む)各々2包分2前。 |
■急性腰痛症 急性期 53+68 疎経活血湯7.5g+芍薬甘草湯7.5g 7日まで 芍薬甘草湯は、頓服でも良い。低カリウム、血圧上昇、浮腫などの偽アルドステロン症に注意。長期連用は控える。 以降、慢性痛 53:疎経活血湯7.5g 4週間 *疎経活血湯:「筋腱性疼痛」に効果。変形性脊椎症など何らかの筋肉性疼痛を含むものに使う。使用例:治打撲一包二包+疎経活血湯二包 分2朝夕食前 |
■坐骨神経痛 107:牛車腎気丸7.5g 4週間 38:当帰四逆加呉茱萸生姜湯7.5g 53:疎経活血湯7.5g いずれから始めても良い。一ヶ月毎、使ってみてどれが効果があるかをみる方法もある。 牛車腎気丸4週間投与で効果が無ければ附子末(3023)増量。1日1.5gで開始→4週ごとに増量。(3.0g、4.5g、6.0g) 上限は6gまで、それ以上は効き目に変わりなし。副作用に注意して増量していく。高齢者より若者の方が副作用が出やすい。使いこなせない場合は、無理に増量しない。 *薬局方:附子の用法・使用量は1日0.5-1.5gとあるので注意。 38:当帰四逆加呉茱萸生姜湯 冷え、間欠性跛行 53:疎経活血湯 膝痛 |
■間欠性跛行(血管性、脊髄性 いずれも) 38:当帰四逆加呉茱萸生姜湯7.5g 4週間 38無効なら 53:疎経活血湯7.5g 107:牛車腎気丸7.5g いずれも4週間 |
■慢性腰痛 53:疎経活血湯7.5g *疎経活血湯:「筋腱性疼痛」に効果。変形性脊椎症など何らかの筋肉性疼痛を含むものに使う。使用例:治打撲一包二包+疎経活血湯二包 分2朝夕食前 53無効なら 38:当帰四逆加呉茱萸生姜湯7.5g 107:牛車腎気丸7.5g 4週間 |
■変形性膝関節症 53:疎経活血湯7.5g 防巳黄耆湯無効→併用 28越婢加朮湯(麻黄)2分の1包朝夕で追加→2包5.0g朝夕〜3包7.5g分3 (麻黄によりムカムカしやすい。胃腸の弱い人や高血圧に注意) |
■アキレス腱炎 NSAIDs+28越婢加朮湯7.5g7日間 注:越婢加朮湯(エフェドリン含有) |
■関節リウマチ 97:大防風湯10.5g RAの場合、抗リウマチ薬は必要。普通の関節痛にも使える。 |
■神経障害 107:牛車腎気丸7.5g4-8週 無効→2033附子末追加1日1g4週間毎に増量6gまで。副作用で減量1g減らす |
■こむら返り 68:芍薬甘草湯 頓服2.5g 落ち着けば107:牛車腎気丸7.5g |
■冷え症 38:当帰四逆加呉茱萸生姜湯7.5g 下肢の冷え症:23:当帰芍薬散7.5g |
■下肢のむくみ 114:ツムラ柴苓湯9.0g |
■帯状疱疹 127:麻黄附子細辛湯7.5g 除痛効果のある麻黄と附子が含まれる |
■不定愁訴的痛み 24:加味逍遥散7.5g 気長に半年、一年と投与すると効果が出てきて訴えが変わってくる。 |
*3023附子末:副作用:下痢、嘔気、ドキドキ、舌のしびれ、発汗、放屁→何かあったら止めてくださいと説明する。副作用時減量1g。 *漢方薬は、保険での上限は一日15gまでと言われている。 *メチコバールと併用、代用に107:牛車腎気丸 *ミオナール:芍薬甘草湯(寝違い、こむら返り) <除痛効果> 漢方の成分で鎮痛効果があるのは、麻黄と、附子が代表格。 *麻黄 麻黄の主成分はエフェドリン。越婢加朮湯1日量には麻黄が6g含まれる。頚部痛や肩こりなどにも用いられる葛根湯にも麻黄が含まれます。(葛根湯は風邪薬で有名ですが、整形外科でも痛み止め効果を期待して使うことがよくあります。) *附子 1日1.5gで開始→4週ごとに増量。(3.0g、4.5g、6.0g) 上限は6gまで、それ以上は効き目に変わりなし。副作用に注意して増量していく。高齢者より若者の方が副作用が出やすい。使いこなせない場合は、無理に増量しない。 *薬局方:附子の用法・使用量は1日0.5-1.5gとある。 トリカブトを熱処理して減毒したもの。 107:牛車腎気丸 97:大防風湯7.5g 127:麻黄附子細辛湯7.5g 18:桂枝加朮附湯7.5g 30:真武湯 7:八味地黄丸 どれも除痛効果があります。 冷えると痛み・しびれが悪化するケースや風呂や暖かい日は症状が緩和するケースでは、附子が有効。附子は体を温める効果がある。 *防巳も痛み止めの効果がある。膝痛に使う20:防巳黄耆湯に満足できない場合は、28:越婢加朮湯を併用。28:越婢加朮湯(麻黄)2分の1包朝夕で追加→徐々に増やす。 血圧上昇に注意 2包5.0g朝夕〜3包7.5g分3 (新見正則先生の複数の漢方書を中心に参考とした.) |
漢方と副作用 漢方薬は、西洋薬と比べて副作用が少ないとされていますが、全く副作用が無いと訳ではありません。漢方薬はさまざまな生薬が組み合わされています。この生薬の種類、量によって副作用が発現してくることがあります。 例えば、代表的な漢方薬として葛根湯を例にすると、生薬は以下の通りになっています。 ツムラ葛根湯 本品7.5g中、下記の割合の混合生薬の乾燥エキス3.75gを含有する。 日局カッコン 4.0g 日局タイソウ 3.0g 日局マオウ 3.0g 日局カンゾウ 2.0g 日局ケイヒ 2.0g 日局シャクヤク 2.0g 日局ショウキョウ 2.0g カッコン=葛根: クズ Pueraria lobata Ohwi (マメ科 Leguminosae)の周皮を除いた根を乾燥したもの タイソウ=大棗:クロウメモドキ科ナツメの果実 マオウ=麻黄:アルカロイド:(l)-ephedrine、(d)-pseudoephedrin、ephedroxane、 カンゾウ=甘草:成分はトリテルペノイド系サポニンのグリチルリチン ケイヒ=桂皮:クスノキ科トンキンニッケイやその他同属植物の樹皮を乾燥したもの シャクヤク=芍薬:ボタン科シャクヤクの根を乾燥したもの ショウキョウ=生姜:ショウガ科ショウガの根茎 このように複数の生薬が組み合わされています。 <生薬による副作用> ■麻黄にはアルカロイドの成分としてエフェドリンが含まれていますから、その作用として心臓や血管に働き、血圧が上がったり心拍数が上昇し、どきどきしたり、汗が出たりします。 越婢加朮湯、葛根湯、麻黄附子細辛湯、小青竜湯、防風通聖散 ■桂皮 発疹、かゆみ ■甘草 偽アルドステロン症(血圧上昇、むくみ、だるさ) ■大黄 下痢 腹痛 ■附子 血圧上昇、動悸、発汗、のぼせ ■オウゴン、ケイヒ:間質性肺炎(小柴胡湯で発現率0.04%) 副作用が出ない範囲で上手く使い分けることが大切です。虚証、実証の状況によって出やすい副作用と出にくい副作用があります。 |
整形外科分野の漢方治療
*神経障害性疼痛:附子
附子はグリア細胞のアストロサイト活性化を抑制して鎮痛効果を表すことがが分かってきました。慢性期の疼痛に効果的。
*五苓散
アポクリン阻害効果で浮腫を抑制する
*足腰の衰えによるふらつき 7:八味地黄丸7.5g 合わない人 87:六味丸7.5g
*急性の筋肉痛(急性期のみ効果、寒冷により痛みがひどくなる症例に良い適応) 78:麻杏ヨク甘湯
*肩こり 1:葛根湯(含エフェドリン)もしくは桂枝加葛根湯(エフェドリンなし、東洋薬行)
頑固な肩こり:桂枝加葛根湯(東洋)+78:麻杏ヨク甘湯 併用
高血圧による肩こり:47:釣藤散7.5g
*医療機関でよく分からないめまい:17:五苓散
*飛行機が降下するときの耳の痛み:17:五苓散 着陸の30分前に2包服用
*高血圧
高齢・軽度の高血圧:7:八味地黄丸
筋肉質でストレス大、便秘、肩こり:8:大柴胡湯
動悸、イライラ、悶々:12:柴胡加竜骨牡蛎湯
*体調不調 どことなくしんどい
41:補中益気湯:仕事が忙しくバテ気味
32:人参湯:胃腸の調子が悪い
六君子湯:疲れやすく、胃腸の調子も悪い
加味帰脾湯:からだだけで無く、精神的にも参っている
*漢方の服用方法
理想的なのは8時間毎で空腹時がよい。→「起床直後、午後3時頃、就寝前」を推奨する先生もある。
食後は8割程度の効き目(飲み忘れて服用しないよりは食後でも服用した方が良い)