信頼とまごころの医療 からだにやさしい医療をめざして
整形外科 外科 リハビリテーション

漢方治療

漢方治療について

最近では、整形外科領域においても漢方治療が少しずつ浸透してきています。打撲・捻挫・こむら返り・腰痛・肩こり・膝の痛みや水がたまる症状・肩の違和感など、手足や全身の痛みに対して、漢方薬が有効な場合があります。

西洋薬の副作用が気になる方や、漢方を試してみたい方は、ぜひ一度ご相談ください。

漢方薬は、ひとつの薬剤の中に複数の生薬が組み合わされており、それぞれの成分が少量ずつ配合されていることが特徴です。そのため、副作用が比較的少ないとされています。

たとえば、こむら返りの治療で使われる「芍薬甘草湯」は即効性が高く、痛みが出た直後に服用してもすぐに効果が現れることがあります。また、風邪の治療薬として知られる「葛根湯」も比較的早く効く薬です。なお、これ以外の漢方薬は、効果を感じるまでに時間がかかる場合があります。

葛根湯は血流を改善する作用があるため、風邪だけでなく整形外科領域でも、肩こりや首の痛みに対して用いられています。

慢性的な腰痛などの場合は、「牛車腎気丸」など複数の漢方薬を組み合わせて使うことがありますが、短期間で効果が現れないこともあります。まず1ヶ月ほど継続して服用し、体調の変化を見ながら判断することが推奨されます。短期間で薬を変更し続けてしまうと、本来の効果が得られないままになってしまうことがあります。

服用回数の目安としては、漢方薬を1種類使う場合は1日3回、2種類併用する場合はそれぞれ1日2回、いずれも食前に服用するのが基本です。

心臓への影響が少ない整形外科系漢方一覧

漢方薬名 主な適応 心疾患への配慮 備考
桂枝茯苓丸 瘀血による慢性疼痛、下肢のしびれ、月経痛 麻黄・甘草を含まず心臓への影響が少ない 血流改善、瘀血除去に優れる
当帰四逆加呉茱萸生姜湯 冷えによるしびれ・末梢循環障害 甘草・麻黄なし、冷え性タイプに安全 末梢血流改善、冷え性の女性に多用
疎経活血湯 慢性腰痛、関節痛、神経痛 麻黄・甘草なし、高齢者にも使いやすい 血行促進と鎮痛作用あり
治打撲一方 打撲・骨挫傷・術後の瘀血 甘草含有だが短期使用であれば安全 鎮痛・抗炎症作用あり
薏苡仁湯 筋肉・腱・靭帯の慢性炎症 甘草含有だが副作用リスクは比較的低い 長期使用時は電解質異常に注意
二朮湯 肩関節周囲炎、関節痛 甘草含有だが量は少なめ 湿邪除去と鎮痛に有効
桂枝加朮附湯 冷えを伴う腰痛・関節痛 麻黄・甘草なし、虚弱体質にも使いやすい 冷えと痛みの両方に対応


漢方治療の概要と活用例

項目 内容・説明
漢方治療の位置づけ 整形外科領域にも浸透。打撲・捻挫・こむら返り・腰痛・肩こり・膝痛・関節液貯留などに有効
西洋薬との違い 生薬の組合せにより構成。個々の成分は少量で、副作用は比較的少なめとされる
西洋薬が苦手な方へ 漢方への切り替え・併用が可能。希望があればいつでも相談可能
即効性のある漢方 ・芍薬甘草湯(こむら返り)
・葛根湯(風邪、肩こり、頸部痛)
葛根湯の整形外科的適応 血流改善作用あり。肩こり・首の痛みに活用
慢性腰痛への対応 牛車腎気丸など複数の処方を検討。効果判定には時間が必要。まずは1ヶ月服用を継続
治療判断のポイント 短期間での薬変更は効果が出にくく、注意が必要
服用方法の基本 ・1種類のみ:1日3回(食前)
・2種類併用:各1日2回(食前)

費用 保険適応されます


整形外科分野の漢方処方

代表的漢方薬とその使用方法を示します。状況により使用量、使用日数は異なります。
原則として、症状が短期で治まる以外の慢性期のものは、まず4週間程度服用してみて効果を判定します。

痛み止め(NSAIDsと併用可)
28:越婢加朮湯 7.5g 7〜28日 麻黄(エフェドリン)+(ドーピング検査に引っかかる→実証で元気な人向け)
18:桂枝加朮附湯 7.5g 28日 麻黄なし 虚証
97:大防風湯 7.5g 28日 麻黄なし 体力気力増進(麻黄がないものは効くのに時間が掛かる)
麻黄はエフェドリン効果で心臓がドキドキしたり血圧の上昇をみることがある。越婢加朮湯1日量7.5gのうち麻黄は6g含まれているので、胃腸が丈夫な人が対象。
18:桂枝加朮附湯は麻黄なし。越婢加朮湯が飲めなかった人や明らかに弱々しい人向け
97:大防風湯 麻黄なし。体力気力を増す。(人参・黄耆入っている)弱々しく長く関節痛を患っている人向け。
打撲・捻挫
25:桂枝茯苓丸 7.5g 2週間
105:通導散 7.5g 2週間
89:治打撲一方 7.5g 2週間

25、105、89 いずれか

105:通導散:大黄3g、芒硝1.8g 下痢起こしやすい→便秘にも効く
89:大黄1g。大黄は緩下作用があるので軟便になることがある。
治打撲一方:外傷時の腫れに効果的。橈骨遠位端骨折や足関節捻挫などの腫れを早く改善させるときに使う。高齢者は2包分2で処方し、腫脹が著しく強かったり、便秘傾向がある場合は3包分3。また腱付着部炎にも効果あり。
治打撲一方の小児への応用:腰椎分離症、Osgood病、Sever病などの骨端症。小学生は1日1包、中学生〜高校生は1日2包。1週間の内服で効果判定する。
頸椎捻挫・頚椎症
18:桂枝加朮附湯 7.5g 4週間
無効〜もっと良くなりたい→18+25桂枝茯苓丸 7.5g 4週間
18+1葛根湯(麻黄)→麻黄でむかつき→中止
しつこい痛み:葛根加朮附湯+25桂枝茯苓丸
肩こり
1:葛根湯 7.5g
18:桂枝加朮附湯 7.5g
23:当帰芍薬散 7.5g
24:加味逍遥散 7.5g

いずれか

五十肩・腱板損傷
88:二朮湯 7.5g
疎経活血湯+ヨク苡仁湯(麻黄含む)各々2包分2食前。
急性腰痛症

急性期

53:疎経活血湯 7.5g + 68:芍薬甘草湯 7.5g 7日まで
芍薬甘草湯は頓服でも良い。低カリウム、血圧上昇、浮腫などの偽アルドステロン症に注意。長期連用は控える。

慢性期

53:疎経活血湯 7.5g 4週間
疎経活血湯:「筋腱性疼痛」に効果。変形性脊椎症など何らかの筋肉性疼痛を含むものに使う。使用例:治打撲一方2包+疎経活血湯2包 分2朝夕食前
坐骨神経痛
107:牛車腎気丸 7.5g 4週間
38:当帰四逆加呉茱萸生姜湯 7.5g
53:疎経活血湯 7.5g

いずれから始めても良い。1ヶ月毎、使ってみてどれが効果があるかをみる方法もある。

牛車腎気丸4週間投与で効果が無ければ附子末(3023)増量。1日1.5gで開始→4週ごとに増量(3.0g、4.5g、6.0g)。上限は6gまで。副作用に注意して増量。高齢者より若者の方が副作用が出やすい。使いこなせない場合は無理に増量しない。
*薬局方:附子の用法・使用量は1日0.5〜1.5gとあるので注意。
38:当帰四逆加呉茱萸生姜湯 冷え、間欠性跛行
53:疎経活血湯 膝痛
間欠性跛行(血管性・脊髄性いずれも)
38:当帰四逆加呉茱萸生姜湯 7.5g 4週間
38無効なら→53:疎経活血湯 7.5g/107:牛車腎気丸 7.5g いずれも4週間
慢性腰痛
53:疎経活血湯 7.5g
疎経活血湯:「筋腱性疼痛」に効果。変形性脊椎症など何らかの筋肉性疼痛を含むものに使う。使用例:治打撲一方2包+疎経活血湯2包 分2朝夕食前
53無効なら→38:当帰四逆加呉茱萸生姜湯 7.5g/107:牛車腎気丸 7.5g 4週間
変形性膝関節症
53:疎経活血湯 7.5g
防巳黄耆湯無効→併用 28越婢加朮湯(麻黄)1/2包朝夕で追加→2包5.0g朝夕〜3包7.5g分3(麻黄によりムカムカしやすい。胃腸の弱い人や高血圧に注意)
アキレス腱炎
NSAIDs+28:越婢加朮湯 7.5g 7日間
越婢加朮湯(エフェドリン含有)
関節リウマチ
97:大防風湯 10.5g
RAの場合、抗リウマチ薬は必要。普通の関節痛にも使える。
神経障害
107:牛車腎気丸 7.5g 4〜8週
無効→附子末(2033)追加 1日1g、4週間毎に増量6gまで。副作用で減量1g減らす
こむら返り
68:芍薬甘草湯 頓服 2.5g
落ち着けば107:牛車腎気丸 7.5g
冷え症
38:当帰四逆加呉茱萸生姜湯 7.5g
23:当帰芍薬散 7.5g(下肢の冷え症)
下肢のむくみ
114:柴苓湯 9.0g
帯状疱疹
127:麻黄附子細辛湯 7.5g
除痛効果のある麻黄と附子が含まれる
不定愁訴的痛み
24:加味逍遥散 7.5g
気長に半年、1年と投与すると効果が出てきて訴えが変わってくる。

*附子末(3023)副作用:下痢、嘔気、ドキドキ、舌のしびれ、発汗、放屁→何かあったら止めてくださいと説明する。副作用時減量1g。

*漢方薬は、保険での上限は1日15gまでと言われている。

*メチコバールと併用、代用に107:牛車腎気丸

*ミオナール:芍薬甘草湯(寝違い、こむら返り)


除痛効果のある生薬

漢方の成分で鎮痛効果があるのは、麻黄附子が代表格です。

麻黄

麻黄の主成分はエフェドリン。越婢加朮湯1日量には麻黄が6g含まれる。頚部痛や肩こりなどにも用いられる葛根湯にも麻黄が含まれます。(葛根湯は風邪薬で有名ですが、整形外科でも痛み止め効果を期待して使うことがよくあります。)

附子

1日1.5gで開始→4週ごとに増量(3.0g、4.5g、6.0g)。上限は6gまで、それ以上は効き目に変わりなし。副作用に注意して増量。高齢者より若者の方が副作用が出やすい。使いこなせない場合は無理に増量しない。

*薬局方:附子の用法・使用量は1日0.5〜1.5gとある。

トリカブトを熱処理して減毒したもの。以下の漢方薬に含まれ、どれも除痛効果があります。

冷えると痛み・しびれが悪化するケースや風呂や暖かい日は症状が緩和するケースでは、附子が有効。附子は体を温める効果がある。

防巳

防巳も痛み止めの効果がある。膝痛に使う20:防巳黄耆湯に満足できない場合は、28:越婢加朮湯を併用。越婢加朮湯(麻黄)1/2包朝夕で追加→徐々に増やす。血圧上昇に注意 2包5.0g朝夕〜3包7.5g分3

(新見正則先生の複数の漢方書を中心に参考とした.)


漢方と副作用

漢方薬は、西洋薬と比べて副作用が少ないとされていますが、全く副作用が無いわけではありません。漢方薬はさまざまな生薬が組み合わされています。この生薬の種類、量によって副作用が発現してくることがあります。

例えば、代表的な漢方薬として葛根湯を例にすると、生薬は以下の通りになっています。

ツムラ葛根湯
本品7.5g中、下記の割合の混合生薬の乾燥エキス3.75gを含有する。

日局カッコン4.0gクズの周皮を除いた根を乾燥したもの
日局タイソウ3.0gクロウメモドキ科ナツメの果実
日局マオウ3.0gアルカロイド:ephedrine、pseudoephedrine
日局カンゾウ2.0gトリテルペノイド系サポニンのグリチルリチン
日局ケイヒ2.0gクスノキ科トンキンニッケイの樹皮
日局シャクヤク2.0gボタン科シャクヤクの根
日局ショウキョウ2.0gショウガ科ショウガの根茎

このように複数の生薬が組み合わされています。

生薬による副作用

麻黄 エフェドリンの作用で心臓や血管に働き、血圧上昇・心拍数上昇・動悸・発汗を起こすことがある。
含有薬:越婢加朮湯、葛根湯、麻黄附子細辛湯、小青竜湯、防風通聖散
桂皮 発疹、かゆみ
甘草 偽アルドステロン症(血圧上昇、むくみ、だるさ)
大黄 下痢、腹痛
附子 血圧上昇、動悸、発汗、のぼせ
オウゴン・ケイヒ 間質性肺炎(小柴胡湯で発現率0.04%)

副作用が出ない範囲で上手く使い分けることが大切です。虚証、実証の状況によって出やすい副作用と出にくい副作用があります。

新患Web予約初めての方はこちら