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RICEとPiece&Loveの関係性

急性外傷における急性期の対応には、RICE(安静、アイシング、圧迫、挙上)が有名ですが、最近、過度のアイシングは治癒を遅らせることが分かってきました。下記の論文によると、アイシングは受傷6時間までが適応とされています。痛みが強いときは12時間まで。ただし、軽症の場合は適度のアイシングはそれほど障害とならないとされています。

British Journal of Sports Medicine(2024)のレビューでは、アイシングは痛みと腫脹の抑制に有効だが、組織再生には効果がないと結論づけています。特に受傷後6時間以内の使用が推奨され、12時間以降の使用は慎重にとされています。

J-STAGE(2023)に掲載された日本の研究では、ラットモデルでの筋損傷に対するアイシングが、マクロファージの集積を遅延させ、筋再生を阻害することが示されました。これにより、長時間または遅延した冷却は再生過程に悪影響を及ぼす可能性があるとされています。


アイシングの実践的なまとめ

時間帯 推奨度 理由
0〜6時間以内 鎮痛・腫脹抑制に有効。神経伝導速度の低下による鎮痛効果あり
6〜12時間 状況により判断(痛みが強い場合など)
12時間以降 血流阻害・再生遅延のリスクあり。使用は慎重に

つまり、アイシングは「初期の炎症制御と鎮痛」に限定して使うべきで、長時間・長期間の使用は避けるべきというのが現在のコンセンサスです。


RICE から Piece & Love

外傷時の急性期の応急処置としてRICE が有名です。受傷早期の急性期に Rest Ice Compression Elevation を行うことです。

しかし近頃は、過度のアイシングや固定により組織治癒への弊害が生じると言われるようになっています。

これらの弊害を起こさないため、提唱されているのが Piece & Love という手法です。

急性期のアプローチ

Protection (受傷後数日は疼痛を悪化させるような運動は避ける)
Elevation (可能な限り心臓より高く受傷肢を挙上し続ける)
Aboid anti-inflamatories (組織治癒を妨げるような抗炎症薬の使用やアイシングを避ける)
Compression (腫脹を減らすために伸縮性のバンデージやテーピングで圧迫する)
Education (不必要な消極的治療や医学検査を避け、活動による利点を教育する)

RICE と比較してアイシングが抜けているのと、抗炎症剤の使用を控えることが異なっています

アイシングに関しては以前から局所の治ろうとする反応も抑えてしまう可能性があることが指摘されていました

とは言え、抗炎症剤に関しては腫れと痛みが強いものに対し必要最小限の消炎鎮痛剤は必要なこともあると考えています

腫れがさらにひどくなり循環障害起こす可能性を考慮した場合、消炎鎮痛剤にて腫れを抑制することも重要と思われます

したがって全く投薬しないということではなく、病状と希望によってはご説明の上、必要最小限の投薬は行う

亜急性期のアプローチ
Load (通常活動に戻るため、疼痛に合わせて負荷をふやす)
Optimism (悲観的ならず、最適に回復できる脳の状態を保つ)
Vascularisation (組織修復の為、疼痛のない心血管系運動を選択し血流をふやす)
Exercise (適切な活動的アプローチにより、可動域・筋力・固有感覚を回復させる)

RICE
~急性期の応急処置~
  注意:外傷時に行うと効果的ですが、すべての例に適合するとは限りません。腫れ、しびれや痛みが強くなる場合は最寄りの医療機関に必ずご相談下さい。

 大きな力が加わると皮膚の内側で皮下組織、腱や筋肉などの組織が損傷され、破壊された血管から出血が、また組織より漏出した物質により刺激され炎症が生じた結果、腫れたり内出血が起きたりします。

 腫れや内出血は出来るだけ少ない方が治りが良いとされています。急性期の治療(受傷直後から24~72時間)はRICE ( Rest  Ice Compression Elevationの頭文字)が有効と言われています。
これは

安静 (Rest)
冷却(Ice)
圧迫
(Compression)
挙上(Elevation)

という治療を意味します。

 受傷直後から24時間~72時間は内出血、腫脹、痛みといった状態が急性の炎症を伴って進行します。これをなるべくひどくならないようにするために、安静、冷却、圧迫、挙上を行いましょう。

 安静 (Rest)

けがをした部分の安静を意味します。動かすと腫れや内出血が悪化しますのでできるだけ動かさないようにしましょう。

 冷却(Ice) 受傷から6時間以内はに行いましょう。冷やすと腫れや痛みを抑える効果があります。こおり水やアイスノンで冷やすといでしょう。ただし、じかに冷やすと凍傷や血の巡りが悪くなる(循環傷害)などの副作用が起こりますので、乾いたタオルなどでくるんで冷やしてください。通常一回に10分から15分冷やしましょう。しびれたり痛くなる場合は冷やし過ぎです。一日5~6回をめどに冷やしてください。冷やしすぎてもいけません。
 圧迫(Compression) けがをした部分を軽く圧迫し固定します。あまり強くしめると血が流れにくくなって重大な障害となりますのであくまでも軽い圧迫とお考えください。
 挙上(Elevation) これはけがをした部分を心臓より高い位置にすることです。単に上げていてもご自身の心臓の位置(胸のあたり)より低ければ効果が少なくなります。足の場合は寝て上げるようにしましょう。手の場合は座った状態で軽く上げるか、寝ころんだ状態で胸の上に置きましょう。