骨腫瘍に似る他科疾患
レントゲンで骨に穴が開いたような影や、輪郭のぼやけた病変が見つかると、多くの方が「腫瘍」という言葉に不安を覚えます。実際、原発性の骨腫瘍のこともありますが、それ以外の病気が骨に似た影を作っていることも少なくありません。
もっとも頻度が高いのは、他の臓器から骨へ転移してきたがんです。肺や乳房、前立腺、腎臓、甲状腺のがんが骨に転移しやすく、脊椎や骨盤、太ももの付け根あたりによく現れます。夜になると痛む、じっとしていても痛みが引かないといった訴えで見つかることもあり、これまでにがんの既往がないか、丁寧に聞くようにしています。
高齢の方では、多発性骨髄腫という血液のがんも考えます。腰痛や、ちょっとしたことで骨が折れてしまうことがきっかけで見つかることが多く、レントゲンでは骨に丸く穴が開いたような像が特徴的です。血液検査での異常も手がかりになります。
このほか、脂質の代謝異常で骨に黄色腫ができることや、副甲状腺の機能が高まって骨が溶けたような像(ブラウン腫瘍)を呈することもあります。こちらは血液や副甲状腺の状態を整えることで、時間はかかりますが画像所見も落ち着いてきます。肺の病気に伴って手足の先が腫れて痛む肥大性骨関節症、白血病による骨の病変も、骨のレントゲンだけでは腫瘍と紛らわしいことがあり注意しています。
お子さんでは、感染とは違う自己炎症性の病気(慢性再発性多発性骨髄炎)が骨に複数の透けた影を作ることもあります。熱などの感染症状がはっきりしないことが多く、悪性腫瘍や感染をひとつずつ除外しながら診断していく病気です。
| 疾患 | 手がかり |
|---|---|
| 転移性骨腫瘍 | 肺・乳房・前立腺・腎臓・甲状腺が原発巣。夜間痛、安静時痛 |
| 多発性骨髄腫 | 高齢者、腰痛や病的骨折、打ち抜き像 |
| 骨黄色腫 | 脂質代謝異常、境界明瞭な透過像 |
| Brown腫瘍 | 副甲状腺機能亢進症、骨融解像 |
| 肥大性骨関節症 | ばち指、長管骨の骨膜新生。原発性肺癌が多い |
| 白血病 | 発熱・貧血・出血傾向、多発性骨髄病変 |
| CRMO(小児) | 感染徴候に乏しい多発性骨透亮像 |
参考文献:Orthopedics 整形外科外来における他科疾患を見逃さないコツ 3.2017
エビデンス:多発性骨髄腫の初発症状
新規診断された多発性骨髄腫1027例の検討では、骨痛が最も頻度の高い初発症状(58%)であり、レントゲンでの打ち抜き像などの骨病変が高頻度に認められました。(Kyle RA ら. Mayo Clin Proc. 2003)[1]。
エビデンス:小児CRMOの診断
慢性再発性多発性骨髄炎は診断の遅れが生じやすい非感染性の自己炎症性骨疾患であり、悪性腫瘍や感染症を除外したうえでの診断が重要であるとまとめられています。(Krout JC ら. Orthopedics. 2023)[2]。
エビデンス出典(全2件)を見る
- Kyle RA, Gertz MA, Witzig TE, Lust JA, Lacy MQ, Dispenzieri A, et al. Review of 1027 patients with newly diagnosed multiple myeloma. Mayo Clin Proc. 2003;78(1):21-33. PMID: 12528874.
- Krout JC, Rees AB, Goldin AN, Moran CP, Graham TB, Lawrenz JM, et al. Chronic Recurrent Multifocal Osteomyelitis: A Review of the Noninfectious Inflammatory Bone Disease and Lessons for More Timely Diagnosis. Orthopedics. 2023;46(3):e149-e155. PMID: 35876774.