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整形外科 外科
リハビリテーション科

肩関節脱臼・反復性肩関節脱臼・習慣性肩関節脱臼 dislocation of shoulder、recurrent dislocation of shoulder joint、habitual dislocation of shoulder joint

肩関節脱臼は初めて肩関節を脱臼したときのことをいいます。反復性は脱臼をしてから何度も繰り返すことをいいいます。習慣性は外傷等の既往がなく脱臼を繰り返す場合をいいます。

肩関節脱臼

初回肩関節脱臼は内旋位または外旋位で固定します。2回目以降は痛みが取れるまで三角巾固定で経過を見ます。

何度も脱臼する場合は日常生活、運動への支障の状況を見ながら手術することがあります。手術は内視鏡を使ったもので、壊れた関節唇の修復術が通常行われます。スポーツ復帰は術後、投球などの大きな負荷がかかる側では平均10ヶ月、負荷のかからない方では約6ヶ月かかります。競技によって若干異なります。

一般的はBankart手術後、外固定3週間、術後6ヶ月までをメディカルリハビリテーション期、その後はアスレティックリハビリテーション期とします。

術後長期にリハビリが必要ですし学年やシーズンを考慮します。

初回脱臼の固定法ですが、従来の内旋位固定では再脱臼率が高く(20歳以下だと50-60%が再脱臼すると言われています。)、再脱臼率が半分ぐらいまで改善する外旋位固定を薦める施設もあります。

当院でも外旋位固定(3週間))をお勧めしていますが、内旋位固定に比べて手が外に向くので日常生活が不自由であることを説明したうえで、希望も聞き合わせた上で選択しています。
 
子供の肩関節脱臼

初回脱臼の後、再脱臼する状態を反復性肩関節脱臼といいます。40歳以上の初回脱臼が反復性となるのが10%に対し、10歳代は80~90%(文献により再脱臼率は異なりますがおよそ50~80%)と言われています。いずれにせよかなりの高率で再脱臼することになります。

成長期の初回脱臼は保存的治療で脱臼整復後、3週間の固定、その後、損傷した靱帯の強度が修復する3-4ヶ月は運動制限を行います。再脱臼(反復性肩関節脱臼)の根治をめざすのであれば手術療法を選択します。手術は鏡視下bankart修復術に加えて状に応じて腱板疎部の補強を追加します。
 
腋窩神経麻痺

脱臼時に腋窩神経麻痺が生じることがあります。症状は三角筋の麻痺並びに上腕外側のしびれ感です。(C5,C6支配)
程度と回復の目安
 レベル1:MMT3→2-3週間で回復可能
 レベル2:自動運動で45度、肩甲骨の代償で60度可能→6-8週
 レベル3:外転不可能→12-24週を回復の目処とする 拘縮させないことが重要。
反復性肩関節脱臼とは

反復性肩関節脱臼(recurrent shoulder dislocation)は、外傷などを契機に肩関節が不安定となり、特定の動作や姿勢で繰り返し脱臼・亜脱臼を起こす状態です。肩関節は可動域が広く、構造的に不安定なため、特に若年層のスポーツ外傷後に発症しやすいです。

習慣性肩関節脱臼とは

習慣性肩関節脱臼(habitual shoulder dislocation)は、肩関節が意識的または無意識的に繰り返し脱臼する状態で、特に外傷を契機とせずに発症する点が特徴です。関節構造に明らかな損傷がないにもかかわらず、脱臼が「癖」のように定着しているケースが多く見られます。


項目 習慣性肩関節脱臼 反復性肩関節脱臼
定義 意識的・無意識的に肩関節が容易に脱臼する状態 外傷などを契機に、肩関節が繰り返し脱臼する状態
発症のきっかけ 非外傷性が多く、精神的要因や癖が関与することも 初回は外傷性(転倒・スポーツ外傷など)が多い
脱臼の頻度・様式 自発的・随意的に脱臼することが多い 特定の動作や姿勢で再脱臼することが多い
好発年齢・背景 若年者(特に思春期)に多く、行動特性が関与 若年〜中年のスポーツ選手に多い
関節構造の異常 関節構造は正常なことが多い 関節唇損傷(Bankart損傷)や骨欠損が存在することが多い
検査所見 画像上は明らかな損傷がないことが多い MRIやCTで構造的損傷が確認されることが多い
患者の自覚・訴え 「肩が外れる感覚が癖になっている」など 「動かすと外れる」「痛みがある」など
治療方針 心理的アプローチや運動療法が中心 手術(関節唇修復術など)+運動療法が検討される
⚠️ 注意点・課題 不適切な対応で癖が強化される可能性あり 放置すると関節不安定性が進行する可能性あり

動揺肩とは?

「動揺肩(shoulder instability without dislocation)」は、脱臼には至らないものの、肩関節が不安定で「抜けそう」「力が入らない」「違和感がある」といった症状を呈する状態です。特に成長期のスポーツ活動(野球・バレーボールなど)で肩関節を酷使することで、筋力のアンバランスや靭帯の弛緩が生じ、安定性が低下します。

治療の中心は運動療法

• 肩甲帯の安定化筋(前鋸筋・僧帽筋・棘下筋など)の強化
• 姿勢・フォームの改善(猫背・肩甲骨の位置など)
• スポーツ活動の調整(投球数制限など)


肩関節不安定性の分類

項目

習慣性肩関節脱臼

反復性肩関節脱臼

動揺肩(肩関節不安定症)

定義

意識的・無意識的に脱臼を繰り返す癖のような状態

外傷を契機に繰り返し脱臼する状態

脱臼には至らないが、肩関節が不安定でぐらつく状態

発症のきっかけ

非外傷性が多く、精神的・行動的要因が関与

外傷(転倒・スポーツ外傷など)が契機

成長期の過使用、筋力不均衡、靭帯の弛緩など

病態の特徴

随意的・無痛性の脱臼が多い

特定動作で再脱臼、痛みを伴うことが多い

脱臼はしないが、動作時に不安定感や違和感がある

関節構造の異常

構造は正常なことが多い

関節唇損傷・骨欠損などの器質的損傷あり

関節構造は正常だが、支持組織の緩みや筋力低下あり

画像所見

明らかな損傷なし

MRI・CTで損傷確認可能

画像では異常が見られないことが多い

好発年齢

思春期〜青年期

若年〜中年(スポーツ選手に多い)

小児〜青年期(特に運動習慣がある人)

患者の訴え

「肩が外れるのが癖」「痛みはない」など

「動かすと外れる」「痛い」など

「肩がぐらつく」「力が入りにくい」など

主な治療

心理的支援+運動療法

手術(関節唇修復など)+運動療法

運動療法(安定化筋の強化・姿勢指導)

注意点

不適切な対応で癖が強化される可能性あり

放置で関節変形や機能障害のリスクあり

成長期に放置すると慢性化しやすい