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腰痛をきたす他科疾患

腰痛をきたす他科疾患

 腰痛の原因はさまざまで、整形外科以外の病気が隠れていることも珍しくありません。とりわけ命に関わる病気を見逃さないよう、いつも気をつけています。

お腹から背中側、脊椎にかけての病気は、どれも腰痛として現れる可能性があります。なかでも緊急性が高いのが大動脈解離です。すぐに治療しないと命に関わることがあるため、疑った時点で高次の病院へ紹介するようにしています。

 大動脈解離は、引き裂かれるような激しい痛みが突然起こり、時間とともに痛む場所が移動していくのが特徴です。腹部大動脈瘤の破裂が差し迫っている場合も同様で、拍動する腫れに気づいたときは急を要します。

 悪性リンパ腫や白血病、多発性骨髄腫といった血液の病気が、骨や骨髄に及んで腰痛を起こすこともあります。骨折しやすくなっていたり、血液のカルシウムが高くなっていたりすることもあり、夜も安静にしていても痛みが続くようなら、いつもの腰痛とは違うと考えて血液検査をします。パーキンソン病の方も、実は6〜7割ほどが腰痛を訴えられます。夜中から明け方にかけての筋肉のこわばりや、前かがみの姿勢からくる腰まわりの緊張が背景にあることが多いです。

 熱がなくても、じっと続く夜間痛や安静時痛があるときは、化膿性の脊椎炎や椎間板炎も頭に浮かべます。糖尿病があったり、透析を受けていたりする方はとくにリスクが高く、血液検査やMRIで確認していきます。

泌尿器疾患

 尿路結石は、血尿がなくても否定できません。じっとしていられないほどの腰から背中への痛みが突然起こるのが特徴で、確定にはCTを用います。多くは自然に石が排出されますが、高熱や悪寒があれば腎盂腎炎を併発していないか注意します。腎盂腎炎そのものも、腰痛に悪寒・高熱・患側の叩打痛を伴い、抗生剤による治療が必要です。心房細動や心臓の病気をお持ちの方が急に強い腰痛や側腹部痛を訴えたときは、腎梗塞という可能性も考えます。

 女性では、子宮内膜症や卵巣のう腫、子宮筋腫などが腰痛の背景にあることがあります。子宮の位置がうしろに傾いているだけでは痛みは出ませんが、卵巣まわりの炎症で癒着が起こると痛みにつながります。下腹部痛や発熱、おりものの増加を伴う場合は、骨盤内の炎症性疾患も考え、感染症の既往についても伺うようにしています。

 胃や十二指腸の潰瘍、急性・慢性の膵炎(お腹の奥から背中へ帯状に痛みが広がるのが特徴です)といった消化器の病気も腰痛の原因になります。消化器のがんが脊椎に転移した場合だけでなく、後腹膜という場所へ広がった場合にも腰痛が出ることがあります。

 皮膚では、帯状疱疹の痛みが皮疹より先に出ることがあり、この段階では診断に迷うこともあります。また、うつ病や不安を抱えている方の腰痛では、痛む場所や強さが一定せず、検査をしても異常が見当たらないことがあります。もちろん、器質的な病気をきちんと除外したうえでの判断になります。

分類代表疾患
血管系大動脈解離、腹部大動脈瘤破裂
血液疾患悪性リンパ腫、白血病、多発性骨髄腫
感染症化膿性脊椎炎・椎間板炎
泌尿器尿路結石、腎盂腎炎、腎梗塞
婦人科子宮内膜症、卵巣のう腫、骨盤内炎症性疾患
消化器胃十二指腸潰瘍、急性・慢性膵炎
神経・皮膚・心因性パーキンソン病、帯状疱疹、心因性腰痛

 

エビデンス:化膿性脊椎炎の診断の難しさ

化膿性脊椎炎はおよそ半数で発熱を欠き、腰痛が一般的な症状であるがゆえに診断が遅れやすい疾患であるとまとめられています。(Mylona E ら. Semin Arthritis Rheum. 2009)[1]

エビデンス:パーキンソン病における腰痛の頻度

パーキンソン病患者を対象とした横断研究では、約6割が慢性腰痛を有していたと報告されています。(Silveira Barezani AL ら. Clin Neurol Neurosurg. 2020)[2]

エビデンス出典(全2件)を見る
  1. Mylona E, Samarkos M, Kakalou E, Fanourgiakis P, Skoutelis A. Pyogenic vertebral osteomyelitis: a systematic review of clinical characteristics. Semin Arthritis Rheum. 2009;39(1):10-17. PMID: 18550153.
  2. Silveira Barezani AL, de Figueiredo Feital AMB, Gonçalves BM, Christo PP, Scalzo PL. Low back pain in Parkinson's disease: A cross-sectional study of its prevalence, and implications on functional capacity and quality of life. Clin Neurol Neurosurg. 2020;194:105787. PMID: 32244035.