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整形外科 外科
リハビリテーション科

膝靱帯損傷に対する保存療法 適応と限界


 1.ACL(前十字靱帯)損傷に対する装具療法
 適応:40歳以上で不安定性が少なくレクレーショナルレベルまでの運動負荷の症例
 適応外:10歳代は保存療法の適応外。ハイアスリート。

 保存療法手法:前方制動ストラップ付き装具、一週間後までは、可動域を10-90度、以後拡大。部分荷重は3週より開始、全荷重は5週間後。

 2.PCL(後十字靭帯)損傷
 適応:原則として単独損傷は装具とリハビリテーションによる保存治療を行います。部分断裂が多く、経時的に靱帯の連続性が再獲得されやすい。

 3.PLC(膝後外側支持機構)損傷

 PLC(膝後外側支持機構)は、膝外側側副靱帯、膝窩腓骨靱帯、膝窩筋によって構成され、直達外力による膝関節内反または過伸展で外旋力が加わって損傷されます。単独損傷はまれで、膝前十字靱帯や後十字靱帯との合併損傷が多くみられます。

 診断:急性期は膝外側関節裂隙に圧痛があり、広範な腫脹と皮下血腫を認めることが多い。PLS損傷では内反動揺性と回旋動揺性のいずれかあるいは両方が見られることが多い。

 治療:急性期のものは可及的速やかに一次修復術を行います。陳旧性は手術法が確立していない。

 4.MCL(内側側副靭帯)損傷

 GradeI,IIは保存治療。GradeIIIは手術療法と保存療法に優位な差を認めない。(ただし60%に外反不安定性が残る)
 保存療法の適応外:脛骨側が損傷した場合は受傷早期の手術療法を考慮する。保存療法による回復に限界あり。

 5.LCL(外側側副靱帯)損傷
  単独損傷はまれで、複合靱帯損傷であることが多い。膝外側後方に痛みと腫れ。内反ストレスで動揺。MRIで複合靱帯損傷の有無をチェック。
 
膝靱帯損傷に対する保存療法 適応と限界 2

膝単独靱帯損傷 治療方針 
 ACL損傷  手術は受傷およそ2-3週間後に行う。
 MCL損傷  急性期は早期リハビリ+保存療法
 PCL損傷  後方落ち込みが健側比10mm以下は保存療法。10mm以上は、後外側構成体(PLC)の損傷を疑い、可及的速やかに後外側構成体の修復を行う。同時にPCL再建術も考慮。
 PSL損傷  可及的速やかに一次修復を行う


 膝複合靱帯損傷

 治療の基本:PCLとMCLは高い治癒能力あり、ACLとPSLはそれほどではない。

 
膝複合靱帯損傷 
ACL・MCL損傷  最も多い組み合わせ。急性期はMCL損傷治療を優先。複合靱帯損傷であっても単独損傷と同様の治療方針で臨む。 
・GradeI,IIのMCL損傷は装具を装着し早期からリハビリ。GradeIIIはギプス固定を2-3週間し、その後、装具に移行し、可動域訓練。関節可動域が十分改善されてから、前方動揺性を評価して再建術を判断。(可動域制限がある場合はACL再建術後に関節拘縮を起こす原因となる)
ACL・PSL損傷  急性期のPSL損傷は可及的早期に修復術が必要。受傷後、約2週間以内にPSL修復とACL再建術を同時に行うことが推奨。
PCL・MCL損傷   いずれも治癒力が高い靱帯なので、保存的に治癒する可能性が高い。急性期はMCLの治療を優先。治療方針はMCL単独損傷に準じて行う。関節可動域が十分回復した後に、後方動揺性の評価、PCL再建を検討。
PCL・PLS損傷  PSL損傷は可及的早期に修復術を行う。脛骨付着部裂離骨折を起こしているPCL損傷は骨接合術を同時に行う。PCL実質部断裂は、PLS修復と同時または、後方動揺性を評価した後に行うか決める。
 ACL・PCL・MCL/PLS損傷  3つ以上の靱帯がGradeIII損傷。整復位保持はPCLに依存。PCLの再建を優先。ACLと同時にはしない。(同時は関節拘縮を起こし易い)PCL再建後、3ヶ月以上経ってから前方動揺性を確認して手術を判断。PSL損傷を合併している場合は、必ず同時にPSL修復術を行う。外反動揺性が残存した場合はMCL再建術も考慮する。