表紙に戻る
池田医院へようこそ
信頼とまごころの医療
からだにやさしい医療をめざして

整形外科 外科
リハビリテーション科

ファベラ症候群(Fabella Syndrome)

膝関節の外側後方に位置する外側腓腹筋腱内の種子骨「ファベラ」が、大腿骨外側顆後面と繰り返し接触・摩擦することで痛みを引き起こす病態です。ファベラは正常変異として10〜30%程度の人に認められ、特にアジア人や正座の習慣がある人に多く、10代前半から存在が確認されることもあります。

発症はゆるやかで、膝の後外側に限局した鈍い痛みが主な症状です。膝を完全に伸ばしたときや、階段昇降、長時間の立位・歩行後に痛みが増強することがあります。診察では、膝を伸展させた際に後外側部に圧痛が誘発されることが診断の手がかりとなります。

原因としては、スポーツや日常生活における膝の使いすぎ、外側腓腹筋の過緊張や短縮、膝関節のアライメント異常などが挙げられます。また、変形性膝関節症の進行に伴って症状が出現することもあります。まれに、人工膝関節置換術後の後外側痛の原因としてファベラ症候群が報告されることもあります。

治療はまず保存的に行います。運動量の調整や、外側腓腹筋のストレッチ、温熱療法、物理療法、NSAIDsの使用などが基本となります。局所麻酔薬やステロイドの関節周囲注射が有効な場合もあります。最近では、体外衝撃波治療(ESWT)が疼痛軽減に有効であったとの報告もあり、非侵襲的な選択肢として注目されています。

保存療法で症状が改善しない場合には、ファベラの摘出術が検討されます。手術は関節鏡下または小切開で行われ、術後は可動域制限なく早期からリハビリが可能です。通常、術後2週間程度で日常生活への復帰が期待されます。