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整形外科 外科
リハビリテーション科

 人工膝関節置換術(TKA)後のスポーツ活動

変形性膝関節症などにより人工膝関節置換術を行った後のスポーツ活動は、原則としてlow-impact sportsが中心となります。Bradburyらの報告によると平均68歳、平均経過観察期間5年での169例208膝におけるTKA術後のスポーツ復帰について報告しており、これによると術前に週1回以上のスポーツ活動を行っていたものは49%、そのうち65%が術後スポーツ復帰した。テニスなどのhigh-impact sportへの復帰率は20%であり、low-impact sportsへの復帰率は91%ででした。

KTA術後のスポーツ可否については以下を参照。膝への負担が大きい運動は推奨されない。

<Healy WlらによるTKA術後のスポーツ復帰(2001)>

許可:ボーリング、エアロバイク、社交ダンス、ゴルフ、シャッフルボード、水泳、ウォーキング、カヌー、サイクリング、スクエアダンス、ハイキング、競歩

経験があれば許可:ローイング、アイススケート、クロスカントリースキー、ダブルステニス、乗馬、滑降スキー

見解が得られていない:フェンシング、ローラースケート、重量挙げ、野球、体操、ハンドボール、ホッケー、ロッククライミング、スカッシュ、ラケットボール、シングルテニス、ウェイトマシン

推奨しない:バスケットボール、フットボール、ジョギング、サッカー、バレーボール

インプラントの平均寿命

一般的に 15〜20年が目安とされますが、30年以上問題なく使用できる例もある一方で、高負荷な運動や肥満、設置不良などがあると、10年未満で再置換が必要になるケースもあります。
運動負荷が寿命に与える影響
運動レベル インプラントへの影響 寿命への影響
日常生活レベル(歩行・階段昇降) 摩耗は少ない 20年以上持つことが多い
低〜中強度運動(ゴルフ・水泳・サイクリング) 適度な負荷で骨質維持に有利 寿命に大きな影響なし
高強度運動(ジョギング・テニス・サッカー) 摩耗・緩み・破損リスク増加 10〜15年未満に短縮する可能性あり

寿命を左右するその他の因子

体重(肥満):体重が重いほど膝への荷重が増し、摩耗が加速
歩容や動作のクセ:衝撃吸収が不十分な歩き方は剪断力を増加させる
インプラントの種類と設置精度:設置角度のズレや不適合は局所的なストレスを増加
術後のリハビリ:筋力とバランスの回復が不十分だと、関節への負荷が偏る

実際の臨床的な見解

登山やマラソンなどの高衝撃運動を継続的に行うと、インプラントの寿命は明らかに短縮するとされます。

一方で、適切なフォームでの軽運動や筋トレは、骨質や筋力の維持に有益で、むしろ寿命を延ばす可能性もあると報告されています。

インプラントの種類と耐久性の比較

インプラント型 特徴 耐久性の傾向 備考
CR型(Cruciate Retaining) 後十字靭帯(PCL)を温存 長期成績良好(20年以上) 生理的運動に近いが、PCL機能が前提
PS型(Posterior Stabilized) PCLを切除し、Post-Cam機構で安定性を補う 摩耗リスクや破損リスクやや高め 深屈曲でPost破損の報告あり
CS型(Constrained) 前後・回旋の安定性を人工的に制御 摩耗・破損リスク高め 重度変形例に使用されることが多い
BCR型(Bi-Cruciate Retaining) ACL・PCLとも温存 生理的運動に近く、耐久性も高い可能性 適応が限られるが注目されている

※耐久性は患者の活動レベル、体重、設置精度などにも大きく依存します。

スポーツ別の推定荷重と摩耗リスク

スポーツ 推定膝関節荷重(体重比) 摩耗・破損リスク コメント
ウォーキング 約2〜3倍 推奨される基本運動
ゴルフ 約3〜4倍(スイング時) 低〜中 片脚荷重時に注意
サイクリング 約1.5〜2倍 関節への衝撃が少なく推奨される
水泳 ほぼ体重負荷なし 非常に低 最も安全な運動の一つ
テニス(ダブルス) 約5〜6倍 中〜高 急停止・方向転換に注意
ジョギング 約6〜8倍 摩耗・緩み・破損リスクが高い
サッカー 8倍以上(接触時) 非常に高い 推奨されないスポーツの代表例

補足

摩耗の主因は、衝撃荷重よりも「剪断力」や「繰り返しの屈伸・回旋動作」によるものとされます。
高衝撃スポーツを継続的に行うと、インプラント寿命が10〜15年未満に短縮する可能性があります。
一方で、適度な運動は骨質維持や筋力強化に有益であり、インプラントの安定性を高める可能性もあります。