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整形外科 外科
リハビリテーション科


一過性大腿骨頭萎縮症 transitory atrophy of the femoral head

 原因不明で、一過性に大腿骨頭が萎縮する病気です。股関節痛が生じます。妊娠後期の女性の多いとされていますが、中年男性にも発症します。

レントゲン撮影では病初期にははっきりした所見が出ないことも多く、進むと健側に比べて薄くなります。

MRIにて精査します。MRIでは骨頭部分に浮腫による信号の変化がでます(T1強調で低信号、T2強調で高信号)。

治療は保存的に行います。痛みが強ければ松葉杖などで免荷します。通常6-8ヶ月で自然治癒します。

鑑別診断としては、大腿骨頭壊死症が重要です。大腿骨頭への血流障害。特発性(多飲酒、ステロイド)と症候性があります。やはり初期段階ではレントゲンに所見を認めないことが多い。一過性大腿骨頭萎縮症が骨の浮腫像をとるのに対し、MRIでT1,T2強調画像でともに低信号となるのが特徴です。


 
一過性大腿骨頭萎縮症

【概要】

一過性大腿骨頭萎縮症は、原因が明確に解明されていないまま、一時的に大腿骨頭が萎縮する疾患です。症状としては股関節部の痛みが現れ、特に妊娠後期の女性に多く認められますが、中年男性でも発症するケースがあります。疾患の名称が示す通り、通常は6~8ヶ月程度で自然に回復することが特徴です。

【病態と臨床所見】

病態:
病因は不明とされていますが、急激に大腿骨頭の体積が低下することにより、周囲の骨や軟部組織に一時的な浮腫(むくみ)や炎症が誘発され、疼痛が出現します。初期段階では、骨自体の質的な変化はまだ進行しておらず、見た目上の萎縮が顕在化するまでにタイムラグが存在する場合があります。


臨床症状:
股関節痛: 痛みは主に股関節周辺に集中します。場合によっては膝や腰、臀部にも放散することがあります。

運動制限: 痛みによって歩行や日常動作に支障をきたすことがあり、特に長時間の歩行や階段昇降などで症状が悪化する傾向があり

【画像診断】

X線検査:初期段階では明確な異常が認められにくいですが、症状が進行するにつれ、健常側と比較して大腿骨頭の骨密度が低下し、輪郭が薄く見えるようになります。この所見は萎縮の進行を示唆します。

MRI検査:MRIは一過性大腿骨頭萎縮症の診断において非常に有用です。
T1強調画像: 骨頭部分における低信号領域が認められ、これは骨髄内の変化(例:組織の短縮)を示唆します。
T2強調画像: 浮腫の影響により高信号が出現します。これらの信号パターンは、骨頭の浮腫状態および一過性の萎縮を反映しています。

【治療と予後】

保存的治療:
治療の基本は保存療法です。
安静と免荷: 痛みが強い場合は、松葉杖などを利用して患側への体重負荷を減らし、安静を保つことが推奨されます。

生活指導: 長時間の歩行や階段の昇降、重い荷物の持ち運びなど、股関節に負担がかかる動作は一時的に控えることが望まれます。
自然回復:
一過性大腿骨頭萎縮症は、ほとんどの場合、6〜8ヶ月で自然治癒するとされています。この経過を踏まえ、無理な手術的介入は避け、経過観察を行う方針がとられます。

【鑑別診断】

一過性大腿骨頭萎縮症の診断にあたっては、大腿骨頭壊死症との鑑別が極めて重要です。

大腿骨頭壊死症との相違点:
原因: 大腿骨頭壊死症は、血流障害(特発性の場合は多飲酒やステロイド使用、または症候性の場合も含む)によって引き起こされるのに対し、一過性萎縮症は明確な血流障害の証拠がないことが多いです

画像所見:
大腿骨頭壊死症では、初期段階でもX線やMRIで異常が見られにくいものの、進行するとMRIにおいてT1およびT2強調画像の両方で低信号を示す傾向にあります。

対して一過性萎縮症では、特にT2強調画像での高信号が特徴的で、浮腫が主な要因となっている点で区別されます

【まとめ】

一過性大腿骨頭萎縮症は、原因不明ながら一時的に大腿骨頭が萎縮し、痛みや軽度の運動制限をもたらす疾患です。

診断にはX線検査とMRI検査が用いられ、特にMRIにおけるT1低信号とT2高信号が重要な手がかりとなります。

治療は保存的療法が中心で、患者の生活負担を軽減しながら経過を観察するアプローチが取られ、通常は6〜8ヶ月で自然治癒する経過をたどります。

また、同じく初期には画像所見が乏しい大腿骨頭壊死症との鑑別が治療方針の決定には不可欠です。